ITILとは、1989年に英国政府が情報システムの運用や管理などのITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めて体系化したものです。
ITILのフレームワークは、「サービスマネジメント導入計画立案」、「アプリケーション管理」、「事業の展望」、「ICTインフラストラクチャ管理」、「セキュリティ管理」、「サービスマネジメント」で構成されており、ビジネスと技術をつなぐものとして位置づけられています。
このITILフレームワークの中心となっているサービスマネジメントは、「サービスサポート」と「サービスデリバリ」という2つの領域に分類されます。
| サービスサポート |
サービスデスク |
|---|---|
| サービスデリバリ |
サービスレベル管理 |
「サービス」というと、アウトソーシング会社のようにビジネスとしてシステム運用サービスや業務サービスを提供することと考えがちですが、ITILでは情報システム部門が社内向けに行っているITにかかわる業務も「ITサービス」として捉えて、それぞれのプロセスの考え方や基本的なルールをまとめています。
情報システムが拡大し、複雑化している今日では、情報システムがビジネスに与える影響は確実に大きくなっています。トラブルが発生したときにどう対処するかが定義されていなかったために、問題解決に非常に時間がかってしまい、ビジネスを止めてしまうケースもあります。
また、何度も同じ問題が発生しているにもかかわらず過去の経験を活かせない、迅速に対応できないというケースもあるかもしれません。
ITILの概念を導入することで、トラブル発生時の対応手順を明確化したり、日々のITサービス業務を標準化することができるので、特定の人に依存した状態から脱却し、組織的な対応が可能になります。また、標準化ができれば業務改善活動にもつながります。
また、2008年4月以降に開始される事業年度より適用される、金融商品取引法への対応に向けた、内部統制強化のためにもITILの概念を導入する企業が増えています。
ITILの概念の導入時にはあまり意識していなかったことで、導入後に、あるいは導入途中にITILの効果を実感したという声もよく聞きます。
これまでも業務改善活動は行ってきました。しかし、そのレベルは各業務システムや担当分野、人によってバラバラでした。
ITILの概念の導入により活動内容を共通の基準で相互に比較・評価できるようになり、全体として活動レベルが向上しました。
IT業界でよく使われる言葉は、その定義があいまいな場合が多く、同じ言葉を使っていても実は別のことを言っているということも少なくありません。
ITILの概念の導入により、言葉の定義が明確になり、誤解が少なくなりました。また、「共通語」ができたことで業務の可視化や状況説明が容易になり、ITサービスの利用者や社内各部門の理解が得やすくなりました。
ITILでは、ITサービスマネジメントの具体的な方法は示していません。それぞれの企業規模、組織体制、スキルレベルなどに合わせてその事業目標や課題解決に向けて導入すればよいのです。「こうしなければならない」という正解はありません。
まずは、ITサービス業務のどの範囲をどこまでITILのプロセスに対応させるかを決めることから始めます。一度にすべての業務にITILの概念を導入する必要はありません。
ITILに関する情報収集とスキル教育・啓蒙を行い、ITサービスマネジメントに関する知識を広く浸透させます。ITILの考え方やなぜITILの概念を導入するのかということと「共通語」を全員が理解することが重要です。これは意識改革の段階といえるでしょう。
達成目標を定めます。「安心して利用できるサービス品質の確保」や「品質改善によるコストダウン」といったスローガンなどを掲げ、ベクトルを合わせるとよいでしょう。
構造改革には組織や体制の壁を越えた協力体制と強力な推進力が必要です。そのため、ITILの概念を導入するにあたっては、プロジェクト体制を採るとよいでしょう。
例えば、方針や方向性を決める「マネジメントチーム」、新たなプロセスを設計・構築する「プロセス構築チーム」、設計・構築を支援し新しいプロセスを定着化させる「教育チーム」の3チームから成るプロジェクトです。
プロセス設計・構築は以下の手順で行います。
一度プロセスが完成したからといって、それで終わりというわけではありません。顧客ニーズの変化に合わせた事業目標やIT技術なども常に変化していきます。また企業の組織変更などもあるかもしれません。現在実施しているITサービスマネジメントプロセスが最適かどうかを定期的に見極めるアセスメントとプロセスの見直しが大切です。
継続的改善活動を円滑に実行するためには、組織や体制も含めて考えていく必要があります。
継続的改善活動を行うには、ステップ1に戻り、同じ手順を繰り返しながら、さらに適用範囲を広げ、よりよいサービスへと改善していくことが重要です。
ITILはITサービスマネジメントのベストプラクティスにすぎず、ITILのプロセスを導入しても第三者による評価・認定はありません。本来は、自発的な改善活動に他ならないのです。しかし、ISO/IEC20000を取得することでその継続的改善活動を評価し、第三者に対して証明する方法もあります。
ビジネスは急速に変化しています。ビジネスが変われば業務が変わり、業務が変わればITサービスも変わります。ITサービスが変わるということは、そのプロセスも変更せざるを得なくなるでしょう。
また、ITIL自身も進化しており、欧米ではすでにITIL V3がリリースされています。日本語化は来年になる見込みですが、ITIL V3ではサービス・ライフサイクルに合わせた形でSIとオペレーションに対する記述が強化されていますので、一層の成果が期待できます。
このように、ITサービスマネジメントは、今後もより高度化しながら広く浸透していくと考えられています。
ITILの概念を導入し、そのプロセスを継続的に改善していくためには、時間やスキルだけでなく、強力な推進力も必要となります。
容易に、そして迅速にITILの概念を導入する方法として、すでにITILの概念を導入しているアウトソーシング会社に委託するということも、検討してみてはいかがでしょうか。