10年~20年ほど前には、総務部等が音頭をとり現場の協力を得ながら半期に一度もしくは年に1回の周期で全社一斉の棚卸しを行うことで、自社が保有しているIT機器の資産情報を掌握するというスタイルがIT資産管理業務の主流であった。
このころのIT資産といえば、業務で使用するオフコンや端末、FAX等であり、管理業務としては、備品のひとつとしてカウントすることで十分対応可能な状態であった。
しかしながら、インターネットや電子メールの普及をはじめとするIT環境の変化により、社員一人一台PCが当たり前になり、管理する台数が飛躍的に増加し、また、管理対象が増加したことにより、ソフトウェアの不正利用防止や、セキュリティ対策・情報漏えい対策の管理レベルの強化が企業においては求められるようになった。
これに加え、金融商取引の施行に伴う、内部部開示制度により、IT統制が求められる中で、IT資産管理業務が更に注目されるようになったのである。
そもそも内部統制は「組織統制」「業務処理統制」「IT統制」の大きく3つに分かれる。
さらに「IT統制」を構成する要素としては「IT全般統制」と「ITアプリケーションレベル統制」がある。
IT統制実現のポイントには、「開発・運用」「アプリケーション」「ITプラットフォーム」があり、そのITプラットフォームの重要な項目として「IT資産管理」が重要なウェイトを占めている。
IT資産管理に求められるものは以下の通り。
ITプラットフォームの統一的管理と総合的なセキュリティ対策は、IT全般統制の大きな要である。
このIT統制を支えるインフラとして重要なのが、IT資産管理業務である。
認証やアクセスコントロール、ログ管理、情報漏えい防止に関する総合的管理を実現するために、必須の業務となっている。
一昔前とはまるで違う対応が求められている昨今、各企業ではどのような対応を取っているのか?
以下は日経BP ITProが行った、「企業のIT力調査:第4回」の結果である。
これによると、「ほとんど把握できていない」企業は2%未満だが、半数以上の企業では一元管理しきれていないという結果が出ている。
実際、企業の利用現場で使われているIT機器は、利用者が変更されたり、故障等で交換されたり、周辺機器の増設がなされたり等々、様々なことが日々発生している。
このIT機器に関わる変化をキャッチし、常に情報鮮度を保つのは非常な困難を極める。その理由としては4点考えられる。
情報鮮度を保つには、かなりの手間とコストがかかることが容易に想像できよう。つまり、管理レベルとコストとのバランスが難しいのである。
昨今では、ネットワークで接続されたPCを、管理ツールを使いインストールされているソフトウェア等を把握することで対応している企業も多数あるが、それだけでは十分とは言えない。
「資産の保全」という観点から見ると、「規定化されたルール・手順に則り」という部分や「PC等のIT機器の取得・廃棄」部分への対応が不充分とみなされる。
一方、全世界を覆う経済不況の影響を受け、企業においてはコスト削減が急務となっており、煩雑で管理・把握が難しいIT資産管理業務も例外では無い。
しかしながら、J-SOX対応の観点から法制レベルでの義務化というコスト特に内部工数費用の増加が予想される中で、各企業では、いかに管理レベルを高めコストを削減するかという矛盾する課題に取り組まざるを得なくなっている。
では、どのようにして管理レベルを上げコスト削減を図るのか?そのためには3つ取り組みが考えられる。
3つ全てを実行することが理想だが、先ずは一つ目の「管理業務プロセスの標準化」に着手することをお勧めする。
プロセスの標準化のために行う業務の視える化とムダの削除により内部コストの削減が期待出来る。
ほとんどの企業において、IT資産の調達・廃棄・管理業務では同様の業務を複数の人が行ったり、管理業務が特定個人に依存しておりマニュアル化されていないため、業務引継ぎが困難であったりしている。
このような状態ではムダな内部コストが発生し、情報精度の向上も望めない。
このため、現状の管理業務を可視化し、管理業務プロセスの標準化を行うことで内部のムダなコストを削減可能となる。
PCをはじめとするIT資産を適切に把握することにより、利用者の数以上のライセンス購入の防止や、不要なソフトウェア・ハードウェア保守費用の削減、さらに、休眠資産の有効活用により不必要なコスト発生を抑えることが可能となる。
プロセスの標準化を行い、適切なIT資産管理業務を実施するだけでは不充分である。
このような仕組みは導入後しばらくすると現場の運用により変化していくため業務のムダが時間と共に発生するケースが多い。
これを防ぐためには、定期的なモニタリングが必須となる。
PDCAサイクルをまわすことにより、さらなるムダの削減やより高いレベルでの管理業務が可能となる。
今後IT資産管理業務はどのように変化していくのか?コスト削減という観点で見ると、現在はIT資産管理業務の主な対象はPCであり、これまでのような急激な台数増加は考えにくい。
このため管理対象がPCに限定している限りこれ以上の大幅なコスト削減は期待出来そうに無い。
しかしながら、対象範囲を、サーバーをはじめとするオフィスにあるIT機器全般に広げることによりコスト削減効果は大きくなる。
現状管理業務を見直し、ムダを無くし、プロセスを標準化することにより削減できた効果の範囲をさらに広げることにより、より大きな効果が得られる可能性がある。
一般的に「PC-LCM」と呼ばれるデスクトップ回りだけでなく、IT全般に範囲を広げた「IT-LCM」という考え方が今後は必要になると思われる。
そのためにも、まずは現状のIT資産管理業務の視える化を管理業務プロセスの標準化から着手することをお勧めする。