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コンサルタントのコラム

ITマネジメントレベルの向上

[第3回]ITマネジメントレベル向上の社内事例1 ~運用フレームワークの導入~

2010年7月(2020年10月改訂)

はじめに

前回までは、当社における「ITマネジメントのあるべき姿」について、コンサルタントがIT部門に対して提言する立場から述べてきました。
今回から少し趣向を変え、IT部門の立場からITマネジメントの機能向上にどのように取り組んだか、当社での実例をご紹介します。

今回は、「運用フレームワークの導入」による運用機能のレベルアップの紹介です。
バックヤードの仕事としか考えられていなかった運用業務を、「ITサービスの提供」という利用者の視点から見つめ直し、事業に貢献する運用業務がどうあるべきかという根本的なことから改善に取り組んだ当社の経験が参考になれば幸いです。

課題を認識する

今から4年前、”改革に着手した当初”、当社IT運用部門では以下の課題を抱えていました。

  • IT運用管理は組織的には実施されておらず、IT運用業務そのものは至って属人的なものであり、運用担当者のスキル・判断に委ねられていた。
  • 運用されているITシステムがいくつあり、どういったサービスレベルで運用されているのか、どこまで運用手順が確立されているのか等、全体像を掌握することが困難であった。
  • 運用コストの削減指示があり、要員面での削減も必須となった。
  • IT全般統制に係る外部監査人からの指摘事項をクリアするため、運用面に要求される事項が多々発生し、運用体制を含めたIT運用業務そのものの見直しが必要となった。

この状況を受け、最低限の運用要件として以下を設定しました。

【運用要件】

  • IT運用業務の網羅性が保証されていること
  • 客観的な評価指標の設定、並びにモニタリングが可能であること
  • 内部統制機構(J-SOX法対応)が有機的に折り込まれていること

改革の方針を決める

ITILを拠り所とした方針

これまで経験だけに頼ってきた運用業務を、組織的・効率的に実施できるよう、標準的なやり方で機能整理する必要があると考えました。
そこで当時、運用業務のベストプラクティスとしてスタンダードになりつつあった「ITIL(v2)」を拠り所にすることにし、以下の方針を定めました。

「ITILで定義されたサービスサポートプロセスに、当社独自要件を折り込んだ当社運用フレームワークを確立し、運用業務の抜本的な改革を図る」

この方針に沿って定めたのが、図1の運用フレームワークです。

[図][図1]運用フレームワーク(NECネクサソリューションズ版)

フレームワークのポイント

当社のフレームワークは、サービスデスク、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、構成管理の6つのプロセスで構成されています。
このフレームワーク検討のポイントは、以下の3点です。

  • システム毎ではなく全てのシステムをプロセス単位で管理すること
  • 改善の出発点となるインシデント(サービス中断や品質低下の原因となる事象の総称)の収集範囲を全方位(利用者や業務主管からの問い合わせ・要望・クレーム、障害情報、システム監視情報等)に拡大すること
  • 特に変更管理以降のプロセスと内部統制機構とを連結し、1アクションで両者の要件を同時に満たすこと

運用フレームワークを導入することにより、以下の3点の達成を最大の狙いとしました。

  • 属人性の排除

    ルール・手順を明文化し、組織としての業務遂行が可能となる

  • インシデント管理の効率化

    インシデント発生件数そのものを減らすことにより、管理コストが削減される

  • IT運用の継続的改善

    改善PDCAが定常業務に折り込まれ、計画的・継[図]続的に改善が図られる

[図2]運用フレームワークの導入イメージ

運用フレームワーク導入前に実施しておくべき重要な事項

運用フレームワークの導入は、多くの関係者の協力なしに成立しません。
予め、具体的な導入の進め方を導入シナリオとして策定し、すべての関係者からコンセンサスを得ておくことが非常に重要です。

導入シナリオの策定

[図]

メンバーとの合意形成

  • 運用フレームワークそのものの説明と、どうしてそれが必要なのかということ
  • 通常業務以外に取り組むべき業務が増えること
  • 運用実施から運用管理へ、メンバー全員をシフトしたいと考えていること
  • そのためには、各人がスキルアップを自発的に行わなければならないこと
  • 全員の成果を推進者が広告塔となって広く全社にアピールすること、又、メンバーに成果発表の場を順次用意すること
  • 実行施策より分担された実施内容は、各人の個人目標設定に反映すること

意思決定者との合意形成

「運用フレームワーク導入計画書」に基づき、本計画実施における直接上司、部門長への了解を得ました。
上記実施には以下の内容が含まれます。

  • 相応の投資が必要になること
  • 施策推進専任者を設ける必要があること
  • 成果が見えるようになるまで最低1年程度必要であること
  • コスト低減効果が現れるまでには、さらに時間がかかること

運用フレームワーク導入のステップ

導入のステップでは、ITILの基本である「3つのP」
Process(プロセス、手順)
Product(プロダクト、ツール)
Person(組織、ヒトそのもの)
の視点から、実施すべき内容を具体化し、全体計画を策定しました。これを表したのが図3です。

[図][図3]運用フレームワーク導入の流れ

現状分析・課題整理フェーズ

何をどう分析すれば良いかの拠り所として、NECグループで利用しているアセスメントシートを採用し現状把握を実施しました。
これを通して明確になった課題は100件近くに上りました。
これを大きく2つに集約し、スポット的に対応すべきものとPDCAサイクルを確立して対応すべきものとに絞り込み、改善方針を決定しました。

運用プロセスの設計

まず、検討メンバーのスキルアップが重要と考え、メンバーのITIL関連資格の取得、ならびにITサービスマネジメントノウハウの習得を推進しました。
最終的に資格取得者はメンバー全体の90%を超え、ITIL用語が日常的に使われるまでになりました。

運用プロセスの設計は、サービスデスクから始まる6つの機能毎に実施し、改善方針に沿った「運用要件」「実施概要」「基本業務フロー」「ルール」が完成しました。
素案を作成しては内容レビューしてこれを見直す・・・、このステップを3ヶ月程度繰り返し実施して、やっと基本系の完成を見ることになります。

システム運用フェーズ

業務知識の習得と対象システムの処理内容の掌握が重要になります。
自分達が運用しているシステムに障害が発生した場合、どういった業務影響があり、その業務影響度は大きいのか小さいのか、サービス停止がどの程度の時間まで許容できるのか等、単に「運用する」のではなく、「サービスを提供する」という視点で、現在運用しているシステムの運用手順を「見える化」していきました。

この過程の中で、専門書等では習得できない当社独自の業務に関する講習会を計14回開催し、上記「運用手順の見える化」活動を補完するかたちで、システムと業務との関連性も「見える化」していきました。

具体的な成果

属人性の排除

各プロセス毎に実施すべき内容が明文化され、それを拠り所とした業務マニュアルが作成されました。一例としては、サービスデスクというミッションが認知され、業務マニュアルに基づくサービス提供が開始されました。
また、

  • サービスデスク設置標準手順書
  • インシデント管理台帳
  • エスカレーションリスト
  • 問い合わせ先一覧
  • サービスカタログ
  • KEDB(Known Error DataBase:既知のエラー情報や解決方法を蓄積したデータベース)

等のツールも整備されました。
サービスデスク業務マニュアルの中には、これらをどのように利用して具体的に何を実施すれば良いかが全て記載されており、新たなメンバーを迎え入れた場合も、同マニュアルにより一定水準のサービス提供が可能になっています。

インシデント管理の効率化

利用者起因のインシデントについては、「インシデントの発生を如何に最小化するか」が効率化の原点であるとの認識のもと、FAQの充実を徹底的に実施することで、目標であった「自己解決率の向上」が図れました。図4はその実例です。

時間の経過とともに、FAQ参照件数が増加し、反面、電話・メール応対件数は低減してきており、明らかに利用者の自己解決率が向上してきている状況が分かります。

[図][図4]インシデント発生件数の推移

IT運用の継続的改善

インシデント管理が充実してきたことにより、インシデント管理から問題管理に送られたものを定期的に棚卸し、反復して発生するインシデント等に対して恒久対応を行うサイクルが完成しました。
今後、恒久対応が必要な内容については、改善による期待効果を明確化した上で、有識者による実施可否を決議する場を設け、改善PDCAのサイクルを回していく予定です。

最後に ~最重要なのは人の意識~

ここまで、当社の運用フレームワークがどういったものか、どのような効果を期待して導入を進めてきたかを説明してきましたが、やはり、最終的に一番重要なのは、運用フレームワークを支える「人」の意識です。導入を進めていく中で、一番多くの時間を要し、一番苦労した点がこの部分です。
運用フレームワークの導入を推進するということは、「人」の育成であり、「人」への投資なのです。

「高い改善意識をもって、継続的に業務改善に取り組んでいける集団を形成するための方法論」として、運用フレームワークが利用されるよう、今後も更なるブラッシュアップをしていきたいと思います。

執筆

NECネクサソリューションズ
情報戦略部 滝瀬 佳生
[1986年入社以来、社内情報システム業務に従事。販売・財務・人事の領域についてシステム導入を実施。2004年よりIT全般統制対応、2006年より運用マネージャとなり当該活動に着手。現在、IT戦略企画を担当]

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