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総務人事向け
生産性を高めるテレワークの推進法(第2回)

テレワーク導入に失敗しないために

2016年8月

テレワーク導入に失敗しないために

第1回目ではダイバーシティ時代に有効なテレワークについて解説しました。今回はテレワーク導入に失敗しない方法について解説します。

まず、テレワークの導入はどの程度、進んでいるのでしょうか。
総務省が2013年末に行った調査結果によると、テレワークを導入している企業の割合は9.3%でした。資本規模別の導入状況をみると、資本金50億円以上の企業では38.0%が導入済みで、3分の1以上がなんらかのテレワーク制度を導入しています。一方、資本金1億円未満の企業では、導入率は10%に届きません。

テレワークの導入率

資本金規模別のテレワークの導入率

しかし、テレワークの向き・不向きに、企業規模はあまり関係ありません。前回、紹介したように、テレワークには多数のメリットがあります。今後は、人材確保のためにも、中小企業こそテレワークの導入を進めるべきかもしれません。

ただし、他社を単純に真似て制度を導入した結果、失敗に終わるケースも少なくありません。そこで今回は、テレワーク導入に失敗しないための注意点を紹介しましょう。

自社の職務がテレワークに向いているか

一般的には、以下のような職務がテレワークを導入しやすいとされています。

  • 営業や顧客対応サポートなど外勤が主な仕事
  • 社内・社外とも対面によるコミュニケーションが少ない仕事
  • 企画・立案・調査・研究など自己完結性の高い仕事
  • 社内サーバーにアクセス可能(機密情報対策必須)であれば事務処理中心の仕事

ただし現時点では、テレワークに向き・不向きの業務について結論づけるのは尚早です。チームワークが欠かせない職務では不向きと言われますが、通信機器を利用した大型ビジョンなどによる相互コミュニケーションも可能だからです。

IT環境を最大限に活用した場合、多くの企業でテレワークの適用可能性がさらに広がるのではないでしょうか。導入する際には、企業の職務内容を分析し、ITシステムの最新動向などを調べたうえで判断することをお勧めします。

労働時間の算定をコンプライアンスの観点から検討する

テレワーク導入時に、コンプライアンスの観点から検討すべきは、労働時間の算定です。勤務場所が事業場以外に多様化するため、テレワーク職場では「事業場外労働のみなし労働時間制」を適用するケースが少なくありません。労働基準法第38条の2では、「事業場外労働のみなし労働時間制」は以下のように規定されています。

「事業場外労働のみなし労働時間制」(労働基準法第38条の2)

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

この規定を読むと、例えば在宅勤務によるテレワーク制度の労働時間は「所定労働時間労働したこととみなす」ことができそうに思えますが、みなすことができるのはあくまで「労働時間を算定し難いとき」に限られるのです。

厳密な意味でのテレワークではありませんが、事業場以外で勤務する従業員にみなし労働時間制度を適用したことで、従業員が裁判に訴え、2014年1月に最高裁判所が企業側の敗訴と判断した判例もあります。

これはある旅行代理店の企画型旅行の添乗員の外勤に対して、最高裁が「添乗員の労働時間管理は困難ではない」とみなし労働時間制の適用を否定した判例です。この結果は、各企業の外勤従業員の労働時間管理に多大な影響を及ぼすことになりました。テレワークも「事業場外労働」になりますから、今後の労働時間管理はこの判断基準を踏まえた適切な管理が求められることになるでしょう。

実は、1988年に労働省(現・厚生労働省)が「労働時間を算定しがたいとき」の行政解釈を出しています。上記の判例も以下に紹介するこの解釈を厳格にとらえて判断したことがわかります。

【行政通達(昭和63年1月1日基発第1号)】

事業場外で業務に従事する場合でも下記の場合、使用者の指揮監督が及んでいると解釈されます。労働時間の算定が可能なので、みなし労働時間制の適用はできないこととされています。

  1. 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  2. 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
  3. 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事しその後事業場に戻る場合

この行政通達に記載されている無線やポケットベルは、現在ではスマートフォンやタブレット、パソコンなどに置き換えて考えればいいでしょう。これらの機器が普及した結果、いつでも指示連絡が受けられる状況が可能になり、みなし労働期間制の適用は限定的にならざるを得ません。

コンプライアンスを順守するため、専門家の意見を聞きながら自社の個別具体的業務が本当に「労働時間を算定し難いとき」ケースに相当するのかをしっかり見極めて、労働時間管理をしていくことが大切です。

企業としてワークスタイルを変えていくには

もう1つ重要なのは、テレワーク制度を導入する際に、トップの強い意思を従業員に示すことです。「流行しているから」といった理由からテレワークを導入すると、結果的に活用されず、せっかくのメリットを生かすことはできません。

私は、当社会保険労務士事務所に「テレワークを導入したい」と相談に訪れる経営者の方には「我が社をこうしたいからテレワークを導入する」と強い意思を従業員に示した上で推進するよう、アドバイスしています。強い意思を示すことで、初めて従業員はテレワーク制度を活用する気になるのです。

前記のとおり、テレワーク制度の導入は、中小企業では遅れていますが、一方で中小企業にはトップの意思が社内に伝わりやすいというメリットがあります。トップの強い意思を示せば、大企業よりも短期間で導入を実現することが可能になるでしょう。

テレワーク導入のプロセス

以上のような注意点を踏まえ、テレワーク制度に向けては次のようなプロセスを踏んで導入するのがいいでしょう。特に2は重要なポイントです。適用を受ける従業員からの意見聴取を入念に行わないと効果はあまり見込めません。

最終回となる次回は、テレワークの効果を上げるために重要な、社員の成長を促す労務管理について紹介します。

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