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総務人事向け
「月刊総務」編集長が語る、総務から始める働き方改革(第1回)

人事施策で解決するのか? 長時間労働対策への疑問

2017年2月

人事施策で解決するのか? 長時間労働対策への疑問

アベノミクスの働き方改革が熱を帯びています。同一労働・同一賃金にも踏み込んだ議論がされており、具体的な指針も出されています。

しかし、ある経営者はこんなふうに語っていました。「生産性を上げ、支払いの原資を確保しなければ、正社員の賃金がカットされる事態にもなり得る」。そんな事態になれば本末転倒でしょう。

また、最近では大手広告代理店で悲しい事件もありました。その近隣で働いている私の知人は言います。「夜10時直後に多くのビジネスパーソンが大挙して地下鉄の駅に向かう。小脇にパソコンを抱えながら」。結局、仕事が終わらず、それを喫茶店やファミレスか、自宅で行うことになるのです。サービス残業が常態化してしまったのです。

残業を削減するため、様々な施策を導入したとしても、そもそも行うべき仕事の量が変わらなければ、仕事を行う場所が変わるだけです。世界に比べて生産性の低さが指摘される日本。働き方改革、さらには生産性の向上、その根底にある仕事の見直しに踏み込まなければ、すべての施策は形骸化してしまうだけです。まずは、仕事の見直しについて考えるべきではないでしょうか。

仕事の内容・プロセスのみならず
目的の見える化が重要

間接部門の業務改善の専門家、株式会社システム科学の石橋博史社長に取材した際、間接部門の三悪を紹介してくれました。

「見えない、測れない、改善しない」

お互いの仕事が見えないのでKPIの設定もできないですし、結果、改善目標も立てられない。

筆者が編集長を務める『月刊総務』が2012年に全国総務部門に対して行ったアンケートのデータがあります(図表参照)。現役の総務部門の担当者が、いま何に課題を感じているか、各項目について優先順位を付けてもらった結果です。

第一優先課題として挙げられた結果は、2012年以降もあまり変化は見られません。総務における本質的な課題が表れている結果と見ていいでしょう。

業務の明確化・効率化

第1位にある「業務の明確化・効率化」、これには二つの側面があります。一つは、他の部門から何をやっている部門であるか、明示したい、理解して欲しい、という課題です。他の部門から見れば、総務部がどのような業務をしているか皆目分からないでしょうし、何を目的としているかも判然としないはずです。現状では何も分からず、結果として評価も協力もしづらいということになります。

この課題は、第5位の「部門の地位向上」にもつながります。総務部がこれを改善するためには、自らが行っている業務を見える化し、その業務がどのように業績貢献につながっているかを明らかにし、そしてそれをアピールする必要があるでしょう。そうなれば、経営も現場も総務に関心を寄せるでしょうし、期待もするでしょう。関心を持たれ、期待されれば、総務としても張り合いが出てくるでしょう。待っていても知ってもらえることはありません。積極的に自らの業務のアピールすることが大切です。

総務部内部でも見える化できていない

もう一つの側面、これが今回のテーマですが、総務部内部でも、各担当がどのような業務を抱えているのかが見える化できていないことです。総務ほど属人化された部門はないでしょう。Aさんが担当している業務は、Aさんが会社を休むと誰も対応できない、ということがごく普通に、それも当たり前になっている。そして、各人が持っている業務そのものが、各人の存在意義になっている場合もあり、なかなか見える化に協力してくれないこともあるでしょう。

仕事を見える化できなければ、効率化、標準化は絶対に不可能です。アウトソーシングもできません。そのこと自体に総務部も気づいてはいるのですが、目の前の仕事に追われ、見える化がなかなか実現できないのが実際のところでしょう。そのことを課題として総務部も考えている結果が、このランキングに表れています。

これは総務部だけの問題ではありません。全社において仕事の見える化、つまりは、誰がどのような仕事を、どのように行っているかを見えるようにする必要があります。人は変化を嫌うものです。ですから、業務改善は第三者の介入がないとなかなか変わらないのです。昔からやっている方法が一番楽ですから。第三者の目を入れるには、当然、見える化していないと、不可能なのです。

仕事の見える化が必要なのは、仕事の内容、プロセスだけではありません。最も重要な見える化は、その仕事の「目的」の見える化です。仕事の再定義と言っていいかもしれません。そもそも、何のために行っているのか。その目的を明らかにするのです。場合によっては、何も疑問を持たずに、従来から存在している仕事を、ただ粛々と行っているかもしれません。時代は変化しています。今の時代、不必要な仕事があるかもしれません。

かのドラッカーが記した言葉を改めて噛みしめる必要があります。

「最も非効率な仕事は、本来やらなくても良い仕事を効率化することだ」

今一度、すべての業務の存在意義を確認しましょう。

仕事を「やめる、へらす、かえる」
改善はこの順番で考える

「業務改善の三段階」というものかあります。

  1. やめる
  2. 減らす
  3. 変える

この流れで見直す、というものです。総務の仕事で考えてみましょう。

やめる

まずは「やめる」。今まであった仕事を一度思い切ってやめてみる。やめた後で、必要性を感じたらまた復活すればいいのです。案外やめても誰も気が付かない、というケースもあるものです。やめると既得権化しているので、現場からは不平不満が必ず出てきますが、いずれ慣れてしまうものです。やめる場合は、経営者も巻き込んで、大義名分を用意して、それを高く掲げると効果を発揮する場合もあります。念のため。

減らす

次は「減らす」。どうしてもやめられないものはあります。そこで、継続はするものの、提供しているサービスは物品の量や質を落としていく、という方法です。回数、頻度、時間、種類、重さ、量、長さを検討することです。全面的にやめるのではなく、部分的にやめてみるもこの減らすという方法です。案外、ムダに多く在庫を抱えていたり、必要のないサービスまで準備しているものです。これもじわじわと質や量を落としてみていくといいでしょう。

変える

最後が「変える」という方法です。同じ目的、同じ効能が得られるのなら、中身を変えるのです。例えば、今まで店頭で購入していたものをWebから購入する、紙の稟議書を回覧していたものを電子稟議システムに置き換える、庶務業務をそっくりそのまま常駐型のアウトソーサーに委託してしまうなど、やり方そのものを変えてしまうのです。

IT化、BPO化を推進して
業務のスリム化を図る

業務改善をする上で、やめられない、減らせない業務はあるものです。やり方を変える方法として、ITを活用する、外で出来るのであれば外部委託、BPO化してしまうというものがあります。技術は日々進化しています。様々なIT製品が登場しています。

IT化とBPO化は、総務や情報システム部などのスタッフ部門が主導して行うべきでしょう。大事なのは情報収集です。それも画期的なサービスはWebサイトの検索では見つけられません。なぜなら、新たなサービスに関するキーワードが総務部門の方々の頭の中に存在しないからです。

ソニーの元総務センター長で、現在、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの代表理事を務めている小山義朗さんが現役の時、総務センター長という立場であっても、時間があれば、飛び込みの営業の方とお会いされていたそうです。時代に取り残されないように、新サービスの情報を収集するためだったと話されていました。

仕事の見直し、業務改善は各部門においてするべきことですが、IT化やBPO化までは、現場ではなかなか到達できません。そこはある意味、業務改善としての総務が主体的に取り組むべき課題のはずです。新サービス、新技術の情報をいち早く集め、現場に導入できないか、それにより現場の業務負担を軽くできないか。そのためには、積極的に営業を受けるべきだと思います。

総務や人事が導入する残業削減施策。その前に実は行うべきことが、仕事の見直し、業務果然なのです。冒頭に記したように、仕事量が変わらないまま、ノー残業デーを取り入れたとしても、自宅などで仕事をするだけです。なぜなら、仕事を終わらせないといけませんから。

形から入る傾向がある我が国のビジネススタイル。今一度、何が本質的な課題なのか見極めるセンスが必要なのではないでしょうか。

「月刊総務」編集長が語る、総務から始める働き方改革

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