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特集

健康経営が企業力をアップさせる

2018年5月

健康経営が企業力をアップさせる

経済産業省は2018年2月21日、「健康経営優良法人2018」を発表。大企業だけでなく、中小規模法人部門においても700を超える法人が認定された。働き方改革に注目が集まる中、社員の健康維持・増進に積極的に関与する「健康経営」を展開する企業が増えてきている。健康経営とはどういうものであり、なぜ今求められているのか、企業は具体的に何をすべきなのかについてまとめた。

企業力を高めるために必須の戦略

経済産業省は、健康経営に取り組む優良な法人を“見える化”することを目的として「健康経営優良法人認定制度」を実施している。このほど同制度の運営主体である日本健康会議が「健康経営優良法人2018」を発表。大規模法人部門で541法人、中小規模法人部門で776法人が認定された。

今、企業にとって「健康経営」というキーワードが重要性を増してきている。なぜ今、健康経営が必要とされているのだろうか。

そもそも健康経営とは、従業員の健康維持・増進を個人の意思に任せず、企業側が積極的に健康施策や福利厚生施策を手がけ、労働生産性と企業業績・価値の向上につなげることだ。

少子高齢化による労働人口の減少を背景に、企業は従業員1人当たりの労働生産性を高めることが戦略上必須のものとなっている。また、従業員の心身の健康問題がビジネス上の損失に直接つながるケースも増えており、こうした現状が企業を動かしている。従業員が健康になれば、それぞれが持つ能力や活力を最大限発揮できることになり、個人のパフォーマンスが上がって、ひいては企業にとってもメリットになるという考え方が主流になっているのだ。

一方で、国民医療費や介護保険給付が拡大する現在、従業員の健康に配慮することで、企業が負担する疾病手当等の費用削減を実現することもテーマの一つとなっている。病気による長期休暇取得の減少を期待できる点も重要だ。つまり健康経営は、生産性や業績の向上をはじめとするポジティブなメリットに加えて、経営上の不安要素を回避するリスクマネジメントの側面も持っている。

さらには、健康経営に積極的だという評価が広まれば、優秀な人材の確保にもつなげられるだろう。実際、経済産業省の調査(「健康経営銘柄2018」及び「健康経営優良法人(大規模法人)2018」に向けて)によれば、昨今の就活生は就職先の選定にあたって重視する要素として「福利厚生が充実している」(44.2%)、「従業員の健康や働き方に配慮している」(43.8%)を挙げている。反対に、健康に配慮しない企業は“ブラック企業”ととらえられ、人材を集められないだけでなく、離職率増加につながってしまう危険性も指摘される。

健康経営への理解と浸透が進展

このような現状に即して、経済産業省と東京証券取引所が健康経営に戦略的に取り組む企業を選定する「健康経営銘柄」の公表を2015年度に開始した。日本政策投資銀行もDBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付けを実施し、融資制度に加えている。健康経営への取り組みが企業価値に直結する時代になったということがわかるだろう。

健康経営の考え方自体は1990年代にアメリカで広がったもので、従来、日本企業は後れを取っていたが、これらの制度によって健康経営に対する理解も進んでいる。「健康経営銘柄」は東証上場企業を対象にしたものだが、冒頭で紹介した経済産業省の「健康経営優良法人」には中小規模の組織を対象とした部門があり、中堅中小企業にとっても目指すべき指標となり得る。

健康経営の推進にあたって、企業は従業員の健康状態を把握し、健康づくりを促進する必要がある。健康指導を積極的に実施することで、重篤な疾病や生活習慣病を予防できるほか、健康上の問題を早期に発見できれば、事態が深刻化する前に改善に向けた効果的な対策を打つことができる。ストレス社会といわれる現在、身体だけでなくメンタルヘルスも重要な要素となっている。

企業は健康に対する正しい情報を把握し、施策に的確に落とし込んでいくことが大切になる。他の戦略と同様に戦略上の基本方針を定め、目標を設定してPDCAサイクルを回すことも重要になるだろう。そのためにも、健康経営には経営者が積極的に関与することが求められる。

各企業・組織における健康施策

各企業・組織は、健康経営に向けて実際にどのような取り組みを行っているのだろうか。

すでに大企業では、特定健診や特定保健指導の実施、ストレスチェック対応、ワークライフバランス改善など様々な取り組みを実施している企業が増えている。

経団連が発表している調査(「健康経営」への取り組み状況)を参考にすると、規模が大きな企業では次のような施策を行っている企業が目立つ。

  • 体力増進に向けたウォーキングイベントや体力測定の実施、従業員への歩数計配布
  • 社員食堂での健康メニュー提供、健康的な食事摂取指導
  • 身体やメンタル面の疾病予防と早期発見のための健診・面談、及びその結果に応じた個別指導
  • 禁煙キャンペーン
  • 人間ドック受検料金補助

ユニークなところでは、東京の大手IT企業が実施する健康マイレージ制度がある。同社では、健康に良いとされる行動習慣に取り組んだ成果や健康診断の結果を月単位でポイント化。ポイントの年間合計を基準にインセンティブを支給している。

中堅中小企業でも健康経営の取り組みは始まっている。京都のあるメーカーでは、トップが率先して健康推進を宣言。安全衛生委員会と産業医、健康相談室、総務・人事が連携することで、身体両面の健康増進に力を入れている。精神保健福祉士を配置してメンタルヘルスの相談を受けるほか、健診の有所見者に対する再検査・精密検査受診奨励や産業医面接、始業前のラジオ体操、ウォーキングイベントなどを実施。管理栄養士による栄養教室も開いている。

企業だけでなく自治体の取り組みも参考になる。神奈川県のある都市では、健康経営に取り組む事業所をPDCAサイクルの状況から評価。「横浜健康経営認証事業所」として認証している。認証企業は横浜市の中小企業融資制度で金利優遇を受けられるほか、保健士、栄養士、産業カウンセラーなどの訪問相談を利用できる、健康測定機器の貸し出しを利用できるといったメリットを享受できる。

中堅中小企業向け制度活用と働き方改革も考慮

大企業に比べて、中堅中小企業は健康経営が進んでいないという指摘もある。

中堅中小企業にとっては健康経営に投資する金額の面がやはり不安になるだろうが、従業員50人未満の企業の健康経営活動を支援する「産業保健関係助成金」や「ストレスチェック助成金」といった制度もあるので、ぜひ活用したいところだ。

このほか、健康経営を中堅中小企業に普及させる目的で創設された「健康経営アドバイザー制度」があり、専門家が健康経営に取り組もうと考える中堅中小企業に対して情報提供や実践支援を行っている。こうした制度を有効に活用することも考えたい。

いうまでもなく、働き方改革による労働時間削減や柔軟な働き方の実現も健康経営においては重要なテーマとなる。中堅中小企業が健康経営を進めるにあたり、ここまで紹介した様々な事例や制度を参考にするほか、働き方改革の実践にも併せて取り組むことが必須といえるだろう。

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