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特集

介護離職はなぜ起こる? 介護と仕事を両立させるポイント

2018年4月

介護離職はなぜ起こる? 介護と仕事を両立させるポイント

介護を理由として社員が会社を辞める「介護離職」が問題となっている。団塊世代の高齢化により、親の介護に直面する団塊ジュニア世代のビジネスパーソンは今後確実に増えていく。中堅中小企業は常に労働力不足に悩んでいるため、貴重な人材の介護離職は避けたいだろう。では、介護離職の現状はどのようなものか、また、どうすれば防ぐことができるのか。総務人事が取り組むべき課題とあわせて説明する。

中堅中小企業が直面する介護離職

少子高齢化の進展が著しい日本。“高齢化”していく世代の中には、当然ながらいま現役として働く世代の親たちも含まれている。その親の介護に追われ、仕事と両立できずに会社を辞める「介護離職」の問題が経営者を悩ませている。

いま働き盛りといわれる40代のビジネスパーソンの親たちは、70代に差し掛かった、いわゆる“団塊世代”だ。まさに超高齢化時代の人口ピラミッドにおける多数派で、介護を受ける人たちは今後間違いなく増えてくる。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」では、2017年度末の介護保険の要支援・要介護認定者数は632万人となっており、これは2000年度末の約2.5倍の数字だ。

介護を受ける団塊世代が増えると、必然的に、介護に悩まされるその子どもたち=団塊ジュニア世代の数も確実に増えていく。親に限らず、40代、50代ともなれば、不幸な事故や病気が原因で配偶者の介護をしなければならないケースもあるだろう。

総務省が発表した2012年の「就業構造基本調査」によると、雇用者で介護をしている人は239万9000人に上る。そのうち、男性は102万7000人、女性は137万2000人で、割合としては女性のほうが多い。全雇用者に占める割合で見ても女性が5.5%、男性は3.3%となっている。

これは、親の介護を行っている世代で「夫の親の面倒を見るのは嫁の役目だ」という価値観がまだ根強いことを表しているだろう。しかし現在は価値観が変わり、夫が介護者となる、あるいは夫と妻で応分の負担を持つケースが増えている。さらには親と同居する独身男性も多くなっていることから、親を介護する男性の割合はますます増加していくと思われる。

さて、この約240万人の中で、介護のために離職した人はどれくらいいるのだろうか。同調査によると、2011年10月から2012年9月の1年間に介護・看護のため会社を辞めた人は、約10万人にも達する。厚生労働省の委託調査をもとにした別の報告書によれば、40~50代の就労者の4割が5年以内に介護に直面する可能性があるとされている。

この年代は経験が豊富で、中間管理職が多く、知識やスキル、ノウハウも身につけているため、介護離職によって会社は大きな戦力ダウンとなる可能性がある。とりわけ人材不足が顕著な中堅中小企業にとっては、その社員本人の損失にとどまらず、残る社員たちのモチベーションが下がってしまう場合もあるため、深刻に捉えなければならない課題だ。

なぜ介護離職に至ってしまうのか

親の介護をしなければならないビジネスパーソンが増えること自体は当然の流れとしても、では、はたして中堅中小企業は介護離職を防ぐためのケアを十分に行っているといえるだろうか。

まず、なぜ介護離職に至ってしまうのかを考えたい。最も決定的な理由は、仕事と介護の両立ができないことだ。

介護と仕事の両立支援は国も推進しているが、とりわけ40~50代は前述のように会社の屋台骨として働く人材が多いため、業務における責任が大きく、他の人材で代替しにくいという事情がある。ただでさえ代替が難しいところへ、勤務時間が長い、出社時間の融通が利かない、帰りたいときに帰れない、こなすべき仕事が多いといった状況が重なっている。

仕事と両立しながらでは十分な介護ができないのはもちろん、ケアマネージャーなどとの連絡・打ち合わせ、介護施設のリサーチなども思うように行えず、行き詰まってしまう。親の介護と自分の仕事を秤にかければ、やはり親を放っておくわけにはいかないので、結果的に仕事のほうをやめざるを得なくなる……、こういったケースが一般的だ。精神的・身体的に疲労が蓄積し、介護を原因とする「うつ」を発症してしまうケースや、最悪の場合は介護する側・される側の共倒れという不幸な事態に陥るケースも見られる。

会社の側に介護離職問題への危機感が薄いことも、介護離職増加に影響していると考えられる。会社としては、親や配偶者の介護という事態はどの社員にも起き得ること、介護者となる可能性の高い世代が会社の柱となって働いていること、さらには少子高齢化で優秀な人材の確保が難しく、働き盛り世代に離職されると会社の大きな損害につながりかねないことを十分に認識しておくべきだろう。

介護離職を防ぐために企業がなすべきこととは

実際に介護離職を防ぐため、企業はどのような対策を実施していくべきだろうか。国内で行われている事例をいくつか見ていこう。

ある商社では、国の介護休業制度とは別の独自の取り組みとして、介護向けの有給休暇制度や短時間勤務制度を導入している。こうした独自制度を導入する企業はいま増えている。介護休暇・休業の日数は企業により異なるが、あるIT企業では、家族1人につき通算1年まで認めている。介護はいつまで続くかわからない、終わりが見えないという性質があるため、長期間の休暇・休業を取れると社員にとっても安心だろう。この会社では、有給休暇を積み立てて介護のために使うことも認めている。介護をする社員がフレックスタイムを活用して始業・終業時間を柔軟に変えられる制度を導入している企業もある。

最近では、ダイバーシティ(多様性)の考え方が浸透してきている。ダイバーシティというと女性活躍推進にばかり目が向きがちだが、要は多様な働き方を尊重していくことなので、介護と仕事を両立する働き方もダイバーシティに含まれる。その視点から社員の介護両立支援に真摯に取り組む企業も増えてきた。ある自動車メーカーではダイバーシティの理解促進を全社的に進めるとともに、介護支援制度を活用する社員をサポートする取り組みを推進している。

総務人事は、介護に悩む社員のフォローを率先して行うべき立場にあるといえる。該当する社員の個別フォローだけでなく、社員が介護をしながら働けるようサポートする両立支援制度が自社に用意されているか点検し、なければ早急に整備すべきだ。また、ダイバーシティの観点を重視し、介護の実情に合わせた在宅勤務やテレワーク、あるいは始業・終業時間を柔軟に変更できる制度の導入が有効な方法となるだろう。

ある建設業者では、介護と育児の経験を持つ総務課長が率先して在宅勤務の制度設計を行っている。全事業所の従業員を在宅勤務の対象とし、申請は事前に総務課長が口頭で受け付け。機密保持などの観点からテレワークに適した住居環境かどうかを確認し、不十分な場合は改善のアドバイスも行う。各従業員がテレワークを行えるようにきめ細かく指導・サポートしている点が特徴だ。

せっかく良い制度があり、社員がその制度を利用したいと考えても、周囲の理解が進んでいないために使いづらいといったケースはよく聞く。介護休暇・休業や時短・フレックス勤務を利用しやすい環境を構築することも総務人事の重要な仕事だ。そのために、ダイバーシティや働き方改革といった、より大きな視点から会社全体の理解を深めることも重要になる。

「誰もが介護者になる可能性がある」ことを前提に、介護の現状や制度・保険などの周知を図ることを目的としたセミナー・勉強会の開催、社内冊子・メールマガジンなどの発行といった対策も検討しつつ、介護と仕事を両立できるような在宅勤務やテレワークなどの環境の整備、介護制度に対して力を入れていくべきだろう。

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