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特集

中堅中小企業にとって痛い離職、人材を辞めさせない仕掛けとは

2017年10月

中堅中小企業にとって痛い離職、人材を辞めさせない仕掛けとは

中堅中小企業は常に人材不足という課題に直面している。採用自体がままならないうえ、せっかく育てた人材に辞められてしまうと、経営に大きなダメージが起きてしまう。では、人材が辞めないようにするために、中堅中小企業としては何をすればいいのだろうか。制度の整備や働き方改革の推進など、それぞれの企業に合った取り組み方、総務人事がなすべきことを考えていきたい。

人材不足には二つの側面がある

中堅中小企業の多くは、常に人材不足という課題に直面している。「人材不足」には二つの側面がある。一つは、文字通り必要な人材の数を採用できないこと。そしてもう一つは、会社の事業と未来を支える優秀な人材を確保できないという意味での人材不足だ。

中堅中小企業は人数が少ないだけに、大企業に比べて人材の良し悪しが事業の根幹にダイレクトに響いてくる。しかし時代は売り手市場の採用難。大手企業でさえ優秀な人材を集めるのが難しいのに、採用の絶対数が少なければ、優秀な人材を得られる確率も必然的に少なくなる。とりわけ日本の学生は大企業志向が強いため、中堅中小企業にとっては深刻な問題だ。

となれば、中堅中小企業に求められるのは、数限られた人材をいかに育てていくか、である。ところが、ここにまた一つ別の問題が生じる。せっかく育てた人材が、定年まで会社にとどまり、軸となって活躍してくれればいいのだが、実際には多くの人材が中途退社して、転職するなり、起業するなりしていく。

一人前になるのに2・3年、職人的な要素の強い業種では5年以上かかることもあるが、長い時間をかけてしっかり育て上げても、辞められてしまってはすべてが水の泡。中堅中小企業にとっては致命傷にもなり得るだろう。

「辞めさせない」ためには理由の把握が重要

厚生労働省が2016年8月に発表した「平成27年雇用動向調査結果の概況」によると、2015(平成27)年の一般労働者の離職率は11.8%となっている。8.5人に1人の割合で会社を辞めているのが実情だ。

この事態をどう見るか。現在は新卒だけでなく転職においても人材側に有利な売り手市場であり、一定数が辞めていくのは仕方ないと考える向きもあるだろう。実際にある程度の諦めをもってこの状況を捉えている経営者も多いと思われる。

しかし、中堅中小企業の多くは採用に重きを置くものの、育て上げた社員を「辞めさせない」ための努力や工夫はあまりなされていないのではないか。採用に向ける意識に比べて、離職防止にはなかなか意識を向けられないのが現実といえる。では具体的にどういう対策を行えば、社員は辞めなくなるのだろうか。

2013年版の「厚生労働白書」によれば、一企業に勤め続けたいと考える20代は2011年で50%台前半と、1999年の30%台後半から大幅に増えている。にもかかわらず、多くの若手社員が離職している現状がある。

「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2015年版「中堅中小企業白書」)を見ると、どういった点に注力すれば離職率を下げられるのか、アウトラインが見えてくる。入社3年以内に辞めた人に離職理由を尋ねた調査によれば、1位は「人間関係(上司・経営者)への不満」で、3割近くに達している。2位の「業務内容への不満」が約1割なので、その3倍と圧倒的だ。その次に「給与」「労働時間」「会社の方針」などが続く。

若手社員が退社すると「給与に不満があったのだろう」という意見がとくに経営層から聞かれるが、給与への不満が離職理由になるケースはけっして多くはなく、実際の事情はやや異なることをこの調査は裏付けている。

2位の「業務内容への不満」は、若手社員が成長の実感を得られないことも大きな理由になっていると考えられる。一方、調査に現れる数としては少ないながらも、結婚・出産といった「家庭の事情」によるものや、「親の介護」を理由とする離職もある。これらはいま注目されている働き方改革に直結するものだ。

このように見てくると、離職率を低下させるためのキーワードは「人間関係」「成長実感」「働き方改革」の3点と考えていいだろう。この3点の対策から、社員の離職率を大幅に下げることに成功した事例を見ていこう。

人間関係と成長実感で離職率を下げる

ある建設業者では、上司・先輩社員が若手社員に積極的に関わることで、独自の「家族のような」人間関係を構築し、かつ若手社員が成長を実感できるシステムを実践している。社員数20人程度の企業だが、若手社員が作成する日報に対して部門の先輩10人ほどがコメントを書き込むことで、新人が学んだことや悩んでいることを的確に把握し、成長の促進につなげている。また、先輩と若手社員との濃密な関係を醸成し、「社員一丸」となって事業に取り組める人間関係をつくり上げている。

ある製造業者では、近隣の製造業者2社と協力し、3社合同で人材育成のための研修を開催している。これは技術の習得による成長の実感だけでなく、人間関係の構築にもよい影響を及ぼし、定着率の向上に加え社員全体の若返りにも成功している。

作業マニュアルを動画にすることで効果的な社員育成を行い、かつ社員のモチベーションを引き上げる対策を導入している企業もある。北海道のある建設業者では、習得が難しい職人的な作業を、映像を使った研修によって身につけてもらう工夫をしている。若手社員は「まだまだ自分には無理」と思っていた作業ができるようになり、成長を実感するという。

働き方改革による効果的対策も

介護・看護は離職率の高い業種として知られる。慢性的な人手不足に悩む業界だが、働き方改革によって離職率低下に成功した企業がある。介護事業を行うある企業では、3割近かった離職率を下げるため業務改善に取り組んだ。育児や介護といった家庭の事情でやむなく離職する社員を減らすため、週30時間の短時間正社員制度を2年前に導入。給与や賞与などは一般正社員の4分の3になるが、福利厚生はまったく同じ条件で受けられる。また、女性にとっては、出産後の育児に専念できるか、復帰してから安心して働けるかどうかも「辞める、辞めない」を決める大きな基準になる。同社でも従来は妊娠・出産を機に離職する女性社員が多かったが、育児休業を充実させ、正社員とパートを柔軟に転換できる制度も導入することで、育児を理由とする離職者をゼロにできたという。

以上はいわばトップダウンの改革で成功した事例だが、会社の風土や業種によってはボトムアップ型の制度がマッチすることもある。介護・看護と同様に定着率が低いIT業界で、若手社員の声を積極的に拾うことにより定着率向上に成功した企業がある。あるIT系ベンチャーでは、若手社員の離職の多さに対処するため、若手が経営トップに対してアイデアを直接提言できる制度を創設。提言されたアイデアの約8割が採用されており、若手社員はモチベーションと成長を実感して離職率が減ったという。

中堅中小企業にとって貴重な人材の離職を防ぐには、まず離職者が多い根本の要因を的確に把握することが重要だ。そのうえで「人間関係」「成長実感」「働き方改革」の3点に着目し、ここに挙げた事例を参考に、社員にとって居心地のよい人間関係を構築する、社員が成長を実感できる教育システムを導入する、育児や介護などに直面した社員にとっても働きやすい環境をつくり上げる、といった対策が求められるだろう。

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