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コラム

経営に役立つ原価管理

-第1回 経営環境の変化に対応する経営羅針盤としての役割-

2018年4月

はじめに

会社の決算確定目的の従来型原価計算から、激しく変化するビジネス環境を強かに勝ち抜くための戦略情報として原価管理の役割が見直される時代を迎えています。
本コラムは「これからの原価管理をどう“儲かる経営”に生かすか」を提起する経営羅針盤としての活用方法を、読者各位に分かりやすく、ご提示したいと考えています。

これから期待される原価管理のテーマを5回に分けて、実践的な施策をご提案して参ります。

経営環境の変化に対応する経営羅針盤としての役割

原価管理は、プロセス製造業や組立製造業を取り巻く環境変化に対応して原価要素別に原価/キャッシュフローの変動額を計算し、企業価値に与える正負の影響を経営に示す役割を果たします。この機能を具体的に紹介します。

プロセス製造業/組立製造業の事業環境は、今日まで急速に変化してきましたし、グローバルの政治・経済/技術環境から今後も変化し続けることが常態となるでしょう。為替変動や金利、自由貿易/関税協定などマクロ経済環境の変動、原材料価格変動リスク、物流コストの高騰等の経済面、生産要素技術やロボット、IoT/AI等テクノロジー面の著しい進化など、経営を取り巻く環境変数は目まぐるしく動き、製品原価/収益力にプラス・マイナスのインパクトを与えることになります。

例えば、原材料Aが数%値上がりした場合に、どの製品の利益/キャッシュフローがどの位の影響を受けるかを的確に把握できれば、販売価格や原材料調達方法の見直しなど迅速な対策を打つことが出来ます(図表1-1)。
複数の環境要素の変化や予兆による製品利益/キャッシュフローの変動を同時に予測し、経営者が最適な対策を迅速に意思決定できるようにすることが、これからの原価管理の大きな役割の1つです。
原価管理は、従来の様な経理への結果報告ではなく、これからは変化の予兆に対して事前に経営の打ち手を導くための経営羅針盤として機能させるべきです。

(図)変動要因による原価シミュレーション【図表1-1】変動要因による原価シミュレーション

生産環境変化に対する 製品利益/キャッシュフローシミュレーションの活用

生産環境の変化の例を以下に示します。

【1】 製品別の生産マップの新規決定や変更についての採択可否の意思決定支援

変更した場合の拠点の生産原価/生産キャッシュフロー優位や、為替変動による購買/販売価格への影響を評価する必要があります。

【2】 購買先選択の意思決定

購入通貨の販売地通貨との為替変動に対する購買先の有利不利の比較、TPP等の特恵関税効果による購買原価変動の有利不利、サプライチェーン環境変化による納品リードタイムの短縮を通じた在庫キャッシュフロー増加効果などが購買戦略の意思決定に大きく影響します。

【3】 原材料価格高騰は製造業経営の死命課題

通常、製造業では原材料は製造原価の60%前後、売上高の50%前後の構成比を占めます。業種によっては“原材料がクシャミをすると企業は肺炎を起こす!”と言われるほどです。
従って、原材料の価格変動は、図表1-2の様に統計解析やAIを駆使して注意深く早期にその要因を把握し、可能なリスクヘッジを行い、リスクヘッジに対応するリスク回避効果をシミュレーションする必要があります。

【図表1-2】材料価格変動要因解析(図)材料価格変動要因解析

【4】 設備投資の意思決定

以下の4点について定量的に迅速に測定できることが原価管理機能に求められます。

  1. 案件ごとの投資回収キャッシュフローの大小
  2. 投資対キャッシュフロー回収収益率の優位性
  3. 回収期間の長短を診た安全性評価
  4. 収益率の対資本コストとの比較優位性

【5】生産パフォーマンス改善効果の意思決定問題

  1. 調達リードタイム短縮で材料在庫削減が期待されますが、購買コストと材料在庫増減キャッシュフローのトレードオフ関係があるので、中期レンジでのキャッシュフロー優位を検証する機能が必要です。
  2. 生産リードタイム短縮で仕掛品/製品在庫削減が期待されますが、製造原価と仕掛品/製品在庫増減キャッシュフローのトレードオフ関係があるので、中期レンジでのキャッシュフロー優位を検証する機能が必要です。

【6】歩留改善投資の意思決定問題

原価低減期待と設備投資によるキャッシュフローアウトのトレードオフを評価しなければなりません。投資意思決定では中期レンジでのキャッシュフロー優位を検証する必要があります。

【7】既存製品の終売や設計変更・構成品変更の意思決定問題

製品原価の削減効果と機能的競争力向上に伴う設備投資のキャッシュフローアウトのトレードオフを評価しなければなりません。投資意思決定では中期レンジでのキャッシュフロー比較優位を検証する必要があります。また購入済みの材料や機械装置の廃棄や除却のキャッシュフローアウトとのトレードオフも勘案の上、中期レンジでのキャッシュフロー優位を検証する必要があります。

【8】評価指標

【1】から【7】までの環境変化は複合して発生しますので、トレードオフの計算は並行して行い、優位性は総合して計算する必要があります。

事業環境変化と製品利益
キャッシュフローシミュレーション

経営環境の変化に対応する経営羅針盤としての原価管理の役割とは、【1】から【8】のような機能を経営に提供することを言います。

図表2は、事業環境変化と製品利益/キャッシュフローシミュレーションの計算アウトプットを例示しています。

<図表2>

事業環境変化と製品利益/キャッシュフローシミュレーション(数値は設例)

計算プロセスは利益創造効果を評価するPL計算ブロックと資産回転率改善キャッシュフロー効果を評価するBS計算ブロックで構成されます。それぞれの計算結果は営業キャッシュフロー絶対値の効果とROA(資産対利益率)による率の効果で総合評価する体系になっています。

【1】PL計算ブロック(数値は例示です)

  1. トップラインは、自社売上高1,900ではなく顧客購入高2,100(売上高1,900+顧客負担関税額等200)で評価します。
    このブロックで評価される指標でトップラインは顧客購入高です。顧客購入高は自社売上高に顧客負担の輸入関税等が加算されます。いくら自社の売上高1,900が競争優位性を持っても、顧客の輸入関税負担200で最終購入高2,100が決まりますので、製品競争力は顧客購入高2,100で評価されます。今後SCM戦略上、通過するFTA(自由貿易協定圏)の選択で関税負担額が変化するので自社の売上高だけを可視化するPLは役に立たなくなります。
  2. 製造原価1,460は、変動原価1,060と固定原価400に分解する。
    工場利益は、自社売上高1,900-変動原価1,060で工場責任の限界利益840を表示します。
  3. 粗利益は税引換算で表示する。
    利益もキャッシュフローの一部です。従って税金が徴収された後のキャッシュに残る利益は、税引換算264で計算する必要があります。

【2】計算ブロックによるキャッシュフロー算出(数値は例示です)

  1. BS計算ブロックのキャッシュフロー測定要素は、製品在庫/製品棚卸回転日数/材料在庫/材料棚卸回転日数です。
  2. 棚卸回転日数でキャッシュフロー改善性を評価します。例えば材料在庫原価が30で年間材料費が760であれば、棚卸回転日数は(30÷760)×365日≒14日となります。これは購入した材料が工場で消費されるまで、14日も倉庫でじっと眠っている日数を意味します。

【3】総合評価は、キャッシュフロー改善額とROA(率)

キャッシュフロー改善額は、この表の様に税引換算粗利益174+材料在庫減少額50+製品在庫減少額30=254で計算されます。利益が出なくても、在庫減少でキャッシュフローは稼げるわけです。逆に利益があっても在庫が増加するとキャッシュフローがマイナスになることもあるわけです。

おわりに

次回は原価構造の可視化による、的確な製品利益とキャッシュフローの把握について具体例を用いて解説します。

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