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コラム

生産スケジューラの戦略的活用法[前編]

-あるべき姿と企業が陥り易い誤解や失敗の罠-

これから2回に渡って、目指すべき「生産スケジューラの戦略的活用法」についてご紹介いたします。前編は、生産スケジューラ導入のあるべき姿と企業が陥り易い誤解や失敗の罠について述べたいと思います。

1.厳しい環境変化と高まる「IT」への期待

製造業が置かれる環境は、以前にもまして厳しい環境に置かれていることは言うまでもありません。経済のグローバル化や社会環境の変化に追随し、製造業が収益を出し続ける為には、新技術や商品開発力の強化と共に、変化対応と収益確保への経営努力が求められています。ひと昔前であれば、大量生産と品質・歩留まり向上により原価を下げることができました。しかし現在は、多品種、小ロット、短納期といった市場や得意先から要求される厳しい諸条件の中で、製品と工程が細かくどんどん変わるという課題を解決しなければ収益も出ませんし、企業としての繁栄も望めません。

そこで、そういった背景の中、ITによるこれらの課題解決方法の一つとして「生産スケジューラ」への期待とスポットがあたっているわけです。

2.生産スケジューラ導入のあるべき姿

生産計画業務への生産スケジューラ導入というテーマは、業務改善課題として以前より施策によく上りますが、いざ導入検討となると下記のように不安とリスクが先行し実行に至らないケースがほとんどです。

  • 本当に自社で生産スケジューラが活用できるのか?
  • どこからどのように導入すれば良いのか?
  • 期待できる効果は?

IT投資の成否が経営に直結する現在、プロジェクトの失敗は絶対に許されません。先人が陥った同じ轍を踏まぬ様、過去事例を研究分析し、自社の事業形態に合致した、現在から将来にわたって儲け続ける具体的なイメージを描き、実行できなければなりません。

3.陥り易い誤解や失敗の罠とは?

1.単なる工場の再現では改善に繋がらない!

生産スケジューラの導入を任された担当者は、「実際の工場をパソコン上に忠実に再現する」を目指そうとします。よく見る光景として、現在生産されている全ての工程、あらゆる機械・設備を登録し、ストップウォッチを持って加工時間を計測し始めます。そもそも、これが失敗の始まりです。現在の工場を忠実に再現して何をするつもりでしょうか? 「生産スケジューラ」というITツールで事務所のパソコンから遠隔制御しようと思っているのでしょうか? 工場の忠実なる再現だけでは業務の改善には繋がらないのです。

2.詳細な計画=正確な時間管理(納期も遵守)という錯覚!

生産計画の重要なテーマに、納期遵守があります。納期遵守率の向上を目指すときに、「手作業では、計画できなかった各工程の詳細なスケジューリングを立案する」という施策がよくでます。しかし、この「詳細なスケジューリング」を工程別・設備別・作業者毎にすればするほど、納期に遅れます。全く逆効果です。
生産計画の「見える化」とは、「計画の達人」の頭の中にある“暗黙知”を「見える化」することで、実際の工場を忠実に再現することでも、マスタを完璧に整備し“秒単位”の詳細なスケジューリングをすることでもありません。

その分り易い例として、新幹線「のぞみ」と「こだま」どちらが早いかという?問いがあります。東京から大阪に出張する場合、「のぞみ」と「こだま」どちらに乗りますか?大方は、「のぞみ」と答えるはずです。目的地が「大阪」の時に、「小田原」「熱海」ましてや「掛川」の発着時刻など、どうでもよいからです。

ところが、事が「出張」ではなく、「生産計画」になると、なぜか「こだま」に乗りたがります。“小田原工程”何時何分、“熱海工程”何時何分・・・途中駅(工程)まで詳細に計画して、「この計画通りに運行してください!」と指示します。現場は忠実に計画を守ろうと、用も無いのに途中駅で停車して、その「発車時刻」前には絶対に出発しません。いざ「発車時刻」に出発しようとすると、今度は“駆け込み乗車”があり遅れることもしばしばです。
よって、「こだま」は、時刻通りに大阪に到着するのが精一杯で(それ以外は到着遅れ)、間違っても「のぞみ」より早く到着することはありません。

「詳細な計画=正確な時間管理(納期も遵守)」という“言葉”のイメージによる錯覚でしょうが、「木を見て森を見ず」という諺があることも忘れずに。

4.戦略的活用へのポイントとは

「それって、TOCの話じゃないか」と気が付かれたかもしれませんが、“正調”TOCではなく、“戦略的”TOC活用法をここではご紹介します。

TOC(制約条件の理論)とは、小説「ザ・ゴール」でも知られる経営手法で、 イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した考え方です。企業をシステムとして捉え、その活動を制約するボトルネックに着目し、そこを重点的に改善することでシステム全体のスループットを最大化させるという理論です。そして、この改善を未来永劫継続し続けるやり方が「継続的改善5ステップ」です。

そのTOCの「継続的改善5ステップ」とは下記の5つです。

  • ステップ1
    • 制約条件を見つける
  • ステップ2
    • 制約資源を徹底的に活用する
  • ステップ3
    • 制約条件以外を制約条件に従属させる
  • ステップ4
    • 制約条件の能力を向上させる
  • ステップ5
    • 惰性に注意しながら、ステップ1から繰り返す

さて、“正調”TOCにて、この5ステップを実践で適合させようとすると、ほとんどの工場で、最初の「ステップ1:制約条件を見つける」で、つまずくことになります。よくある事象は、「多品種変量生産のため、どの工程が制約条件なのか特定できない」とか、「需要変動に伴い生産品目が変わり、ネック工程もその都度動いてしまう」等です。
しかし、ここで“戦略的”に考え直してみましょう。「制約条件を見つけることが目的ではない!」「真の制約条件か否かなど、どうでもよい事だ!」「制約条件なんか、“戦略的”に決めてしまえ!」・・・です。

そうです、その工場をよく知る“計画の達人”に「どこが制約条件として相応しいですか?」と、問い合わせして、返ってきた工程(設備・機械)を制約条件にすればよい訳です。“計画の達人”と称される方々は、自然にTOCの5ステップが頭の中で廻っています。そこが暗黙知で、それを「見える化」すればよいのです。

5.生産スケジューラの役割

ステップ1が決まれば、下記のステップ2と3は生産スケジューラで高速に処理することができます。

  • ステップ2
    • 制約資源を徹底的に活用する
  • ステップ3
    • 制約条件以外を制約条件に従属させる

このスケジューリングロジックを、DBR(ドラム・バッファ・ロープ)アルゴリズムと言います。

次回は、DBRアルゴリズムとは如何なるものか、また、成功に導く生産スケジューラ導入のポイントは何かについてご説明したいと思います。

執筆

NECネクサソリューションズ

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