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中堅中小企業の情シス部門向け セキュリティ対策室 第3回

「少人数の情シス」だからこそ考えたいアウトソーシングとクラウド

2016年11月

企業の情報インフラやシステムを一人または少数で面倒を見ざるを得ない情シス担当者。「ITが本業ではなく、知識やスキルを得るための時間も取ることができない」「システム、セキュリティの課題は増加する一方だが、一人ではそのすべてに対応できない」「一人なので、システムの障害対応や障害復旧に時間がかかる」といった悩みを抱えている。

人員増員が困難な中でどんな解決策があり得るのか。アウトソーシング(外部への業務委託)や業務システムのクラウド化がその解決の糸口になるかもしれない。

失敗しないアウトソーシング

中堅中小企業では会計業務を税理士に一任している所は多い。それなら、IT業務もまた外部に委託してもいいものだが、社内の重要な情報を扱っており、その漏えいが心配だなどの理由で、業務の外出しをしていない企業も少なくない。しかし基幹情報を第三者に預けるという意味では会計もITも同じこと。情報漏えいのリスクは外部・内部を問わず常にあって、それへの対応は業務の外出しとはまた別の問題だろう。ここはひとつ発想を転換し、IT業務の外出しも選択肢の一つに入れるべきではないだろうか。

ITをアウトソーシングすることで、企業は情報システム部門の人員を増やさず、コストを抑えることができる。さらに情シス担当者は本来のIT企画などコアコンピタンスな業務に専念できるようになる。

企業のIT業務が複雑になる一方で、受託する側のサービス内容も多様化している。そうした両者の利害が合致することで、実際には、企業規模や業種を問わずITアウトソーシングは広がっている。

中小企業にとってアウトソーシングは、自社で、ヒト、モノ、システムのリソースを持つことなく、運用業務をサービスとして利用できるというのが最大のメリットだろう。さらに、外部専門家の知識を活用できる、少人数の情シスでも負担なく一元管理ができる、運用コストを削減できる──などのメリットもある。

昨今は、IT戦略立案やIT企画といった上流工程も含めてまるごとアウトソーシングする企業も少なくない。ただし、これがたんなる丸投げになってしまうと、問題がある。IT設備投資が、委託先の言うままになってしまい、結果的に無駄な投資を生むことにもなりかねないからだ。IT企画をアウトソースする場合でも、IT投資の優先課題やコストパフォーマンスを考えることができる戦略機能は社内に残しておくべきだ。

アウトソーシングにあたっては、社内のコンピュータリソースや業務システムの実態や課題を把握しておくべきことは言うまでもない。委託すべき内容がわからないままには、委託しようにもそれができないし、たとえ委託してもよい結果は生まれないからだ。

まずは一部の業務を外部委託することで、サービス事業者の実力を試し、徐々に委託の範囲を広げていくという方法がベターだろう。

クラウドによるシステム運用と一体化するアウトソーシング

一口にIT業務のアウトソーシングといっても、サービスの提供範囲はさまざまだ。サービス事業者の担当者を依頼先企業の社内に常駐させ、IT運用における細々とした業務をヘルプデスク的に引き受けるというものから、定期訪問やサーバやシステムがトラブルが発生したときだけ駆けつけるものまでさまざまなタイプがある。これを「ITコンシェルジェ」と呼ぶ事業者も多い。

その一方で、クラウドコンピューティングの普及に伴い、最近のアウトソーシングサービスはクラウドによるシステム運用と一体的に提供されるケースが増えてきた。

データセンター事業者には、各種サーバやネットワーク回線、セキュリティ対策を含むそれらの運用サポートをパッケージ化し、中堅中小企業にフィットした環境をオールインワンのクラウドサービスとして提供するところもある。

たんにデータ保存という意味でのクラウドではなく、業務アプリケーションをクラウドで提供する、いわゆる「SaaS」スタイルのサービスも目立つ。中堅中小企業でよく使われる、人事・給与・会計などのパッケージソフトも、最近はクラウドベースで動くSaaS型に移行しつつある。

さらにそこから一歩踏み込んで、OSや開発環境一式を提供する「PaaS」、仮想サーバやネットワークなどのインフラまでを提供する「IaaS」など、さまざまな利用形態が生まれている。

そこにはハード、ソフトの構築や運用・管理に膨大なコストをかけるのはもはや時代遅れではないか、という認識がある。SaaS、PaaS、IaaSなどと専門用語を使うと、まるで大企業専用のサービスのように聞こえるが、実際は中堅中小企業こそこうしたサービスを求めていたはず。ましてや少人数の情シス問題という悩みを抱えている企業にとっては、ハード、ソフトウェアをユーザーが用意する必要がなく、システムの運用管理にも余分なコストがかからず、利用した分だけ料金を払うという、サービス型の利用モデルは、渡りに船というべきだろう。

管理サーバのメンテナンスが不要、セキュリティ対策もクラウドで

あらためて社内システムをクラウド化するメリットを挙げれば、次のようになる。

こうした利点は実はセキュリティ対策でも有効だ。大手セキュリティソフトウェアベンダーは近年、中堅中小企業向けのクラウド型セキュリティサービスを提案するようになった。これを利用することで、ウイルス感染、スマホの管理などからIT担当者は解放されるというのがセールスポイントだ。

もし社内で本格的なセキュリティ対策を自前で構築しようとするなら、まずそのための管理サーバが必要になる。しかし、クラウド型セキュリティサービスではその手間が不要だ。さらに、ウイルス対策、挙動監視、スパイウェア対策、不正サイト接続ブロック、URLフィルタリングなどの各種対策が、複数のセキュリティ製品を導入することなく、ワンストップで提供される。

また、クラウドだからこそ、ウイルス定義ファイルなどのバージョンアップも自動的に行われる。一人の情シス担当者が、一台一台のPCにこれらのファイルをインストールして回るという負担は確実に低減される。

クラウド型セキュリティサービスには、PCだけでなく、スマホやタブレットなどの複数デバイス、さらに複数拠点のPCなど離れた環境にあるデバイスを管理することができることをメリットとして提案するサービスもある。

これらの煩雑な業務を今まで少数の担当者が、ときには夜を徹してまでやってきたことを考えれば、検討して損はないサービスといえるだろう。

社内の便利屋から、クラウド経営をリードするITプランナーへの脱皮

これまで3回にわたって少人数の情シス部門が抱える問題について解説してきた。問題解決の鍵は、けっして人員を増やすということにあるのではない。たとえ少数精鋭人材でも、組織としての取り組みがしっかりしていれば、十分対応しきれるのだ。

そのためには、すべてを自前でやりきるという頑なな考え方をあらため、できるところからアウトソーシングやクラウド活用をスタートさせることも重要だ。それによって、担当者は日常の煩雑な業務から解放され、真に求められるコアコンピタンスな戦略業務に全精力を傾けられるようになるだろう。

今後、情報システム部門に求められることは多く、これからの企業経営においてきわめて戦略的なポジションであるのは明白だ。まずはそのことについての理解を、CEOなど経営幹部に求めることが大切だ。

例えば、セキュリティ対策は直接の売り上げにつながらないと二の足を踏む経営者も多いと言われるが、そうした後ろ向きの発想ではこれからの企業経営を担うことはできない。情報漏えいやシステムダウンによる業務中断や信用失墜といったリスクが、いかに企業の存続にかかわる大問題なのか。世の中にはたくさんの不幸な事例があるわけで、これらを資料にまとめて提案するだけでも価値ある行動である。

昨今は、広告宣伝やプロモーションにWebやSNSを活用するのは当たり前になってきているが、それだけでなく、人事・給与システムもクラウドに預け、Webから操作するというように、会社経営全体がクラウド化・Web化しつつある。その流れはけっして止まることはない。

このように経営をクラウド化することで、コスト削減、さらには意志決定のスピードアップに成功した中堅中小企業の事例も増えてきた。

もちろん成功例ばかりとは限らない。クラウド化も、戦略が不在なまま実行するとコストメリットが得られないばかりか、全体の管理ができずにシステムが破綻する例もある。

あくまでも戦略ありきだ。IT担当者が“社内のコンピュータ便利屋”を卒業し、戦略立案ができるプランナーに変貌することが、まずは重要なのである。

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