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情シス奮闘記 中小企業編

第9回テーマ 「IT資産管理」

2017年10月

ITの資産管理は全部自分でやるべきなの?

企業には、PC、プリンターなどのハードウェアから、アプリケーションなどのソフトウェアまで膨大なIT資産がある。コスト削減や情報セキュリティ対策などの観点から、今改めてIT資産管理の必要性が高まっている。しかし、アミダ社のような社員50名の小企業にとっては、資産管理の手間やコストが大きな課題になる。

これだけITの更新スピードが早いと、一人ではとても手が回らない

中村和人が所属するアミダ社総務部の棚には、固定資産台帳という分類棚のところに「IT資産台帳」という分厚いファイルが置かれている。社内で購入したPCやプリンター、サーバ、ネットワーク機器などのハードウェア製品の購入履歴、さらにWindowsやOfficeなどのソフトウェア製品のライセンス番号やアップデート記録などをまとめたものだ。

固定資産台帳は中村の入社前からあった。そこには自社所有物件である本社事務所、借用物件である駐車場や工場建屋についての登記情報、さらに工場内の加工設備、工具、事務用の什器、社用の自動車などと一緒に、PCの台数などが記載されていた。

中村が総務部に配属されるようになってから、「これからはITの時代だから、IT関連機器は別に記すように」という上司の指示で、中村がIT関連のものだけを取り出して、新たにIT資産台帳を作るようになったのだ。本来は総務部や購買部の仕事かもしれないが、アミダ社ではこの台帳管理は情シス担当の中村の仕事になっている。

台帳は中村の日々の仕事のベースになる重要な資料で、購入や廃棄案件があるたびにその都度、Excelファイルに手動で項目を追加・修整を施し、半期ごとに全体の内容を見直すようにしている。だが、最近、この仕事に中村は疲れを感じるようになってきた。

「だって、最近、PCなどの更新スピードがどんどん早くなってきているだろう。OSやアプリケーションのアップデートも頻繁だから、毎月のように何かを買っていることになる。その上、うちは会社が支給したノートPCやタブレットに限ってはモバイルワークにも使えるようにしている。いつでもどこでもIT機器が使えるようになるのは便利なんだけど、その分、それらの管理も大変になるということだよね。もちろん管理は僕の仕事だけれど、これだけに追われていては、ITを使った業務改善など本来の仕事に手が回らなくなっちゃうよ」

そんな中村の愚痴にいつものように付き合ってくれるのは、同じく総務部の加藤彩である。

「私もお手伝いしたいけれど、“IT資産”とか言われるとよくわからないし……。どうしても中村さん一人に任せがちになってしまうんですよね。ITなんだから、その管理もITを使ってちゃちゃっとできればいいんですけどねえ……」と、加藤が何気なく口にした言葉に、中村はピンと来た。

相談はしてみるものだ。「そうか、IT資産管理にこそITを使うべきなんだ。どうして今まで気づかなかったんだろう」

IT資産管理は会計処理だけでなく、情報セキュリティ対策上も重要

IT資産管理をより効率的に行うためには、まずIT資産管理とは何かを改めて考える必要がある。どういうときにIT資産管理が必要となるのか。資産管理をしていないと、どういう不都合があるのか。中村は、加藤と一緒にブレーンストーミングをしながら問題を洗い出すことにした。

「まず一般論として、なぜ企業にはIT資産管理が必要なんだと思う?」と、中村は加藤に尋ねてみた。

「事務所にPCが1台か2台のころはあえて管理する必要はなかったんでしょうけれど、今みたいに一人1台以上のPCを使うようになると、どこにどんな機器があって、その耐用年数はどうなっているかがわからないと困りますよね。PCやプリンターは立派な固定資産だから会計処理上の問題もでてきますしね。それからどのPCにどのソフトウェアがインストールされているのかも知っておきたいですよね」

「そうだよね。ウチの場合、社屋は東京の本社・工場と大阪の出張所だけだから、それほど困らないけれど、事業所が複数地域にある会社の場合、それぞれのIT資産を管理するのは大変だね。いちいち現地に赴いてPCやデバイスを確認するなんて、考えるだけでもぞっとするよ」

「大きな企業だと部署決済でPCを導入したりするから、企業全体での把握がおろそかになることもありそうですね」

「それから社員が社用のノートPCを外に持ち出すこともあるから、その管理も重要。モバイルワークは業務改善につながるけど、反面、セキュリティ上のリスクにもつながる。IT資産管理のことが最近改めて話題に上るのは、資産を管理していないと、情報漏えいが起きたときに問題が複雑になるからなんだろうね」

「ほんと、管理すべき対象がどんどん広がっていく感じですよね」

「そうなんだ。実際のところ、ウチのように1人で情シスをみている企業では人手が足らず、資産管理ができていないケースが多いと思う。これをそのまま放置するわけにはいかない。どうにかしないとなあ」

「IT資産管理がきちんとできていると、会社にとってどういう良いことがあるのか、それもちょっと挙げてみようよ」と中村。「えーと」と考えながら、加藤はいくつかのメリットを挙げてくれた

「IT機器の利用状況をひと目で確認できるので、情報漏えいやウイルス感染などの情報セキュリティ事故のリスクを減らすことができるようになるんじゃないかしら。それと、万一の事故発生時にも被害を最小限に抑えることができますよね」

「そうだね」

「OSやアプリケーションの不正使用は、コンプライアンス上も問題。常に導入しているソフトウェアを把握していえば、それを未然に防ぐことができますね」

「それからウイルスの問題でいえば、今年の上期に『WannaCry』というランサムウェアが話題になったろう。これはWindows XPを含むサポート切れのOSの脆弱性を突いて侵入してくるらしい。すぐにマイクロソフトがセキュリティパッチを提供していて、ウチもそれを全部のPCに導入したけれど、こういうことも、IT資産管理をしっかりしていればすぐに対処できることなんだ」

「それから、えーと、資産管理ができているってことは、現状ITにかかっているコストの把握ができるということじゃないかしら。コストが多くかかっている部署、機材などの洗い出しができるようになりますよね。これは、ウチの江窪社長にはぜひ聴かせてあげたいポイントですよ」

「ハハ、この点を強調したら、江窪社長、IT資産管理のための別予算をつけてくれるかな」

「そうですよ。いくらIT資産管理が重要だからといって、ただでさえ忙しい中村さんの負担をこれ以上増やすのは、私、反対です。中村さんが楽になるように、IT資産管理専用のソリューションを導入しましょうよ。その経費については私が社長にOK出させますっ」

「加藤さん、きょうはヤケに強気だねえ。いや、そこまで押してくれると、とても嬉しいよ」

IT資産管理ツールの導入。収集した情報は次のIT戦略に生かせ

というわけで、早速、中村は友人のシステムエンジニア、海田にも相談しながら、IT資産管理ソリューションとはどういうものなのかを検討することにした。

アミダ社は50人規模の小企業であり、個人使用のIT機器を含めても管理対象はせいぜい100台規模だ。今後増えるにしても200台を越えることはないだろう。従って大規模なツールやソリューションは必要ない。最小限以下のことができればいい。

  • 現在使われているハードウェアの台数やソフトウェアの数などを自動的に記録できる
  • PCなどに随時挿入されるUSBデバイスなども自動的に記録できる
  • PCに十分な更新プログラムが適用されているかどうかがわかる
  • 保守サポート期間を超えてハードウェアやソフトウェアが使われていないかなどを管理できる

絶対に外せないポイントは、「ツールを導入することで、管理にかかる手間と労力を大幅に削減することができる」ことだ。

海田は、中小規模の企業でも手軽に導入できる、IT資産管理ツールがいくつかあることを教えてくれた。

検討内容を基にIT資産管理ソリューションを取り扱っている企業のホームページを中村もチェックしてみたところ、様々な謳い文句でセールスポイントを訴求しているツールが多いことがわかった。例えば以下のような内容だ。

  • クライアントPCのハードウェア情報、ソフトウェア情報、プリンターやルーターなどのネットワーク機器情報などを24時間ごとに自動収集し、1つの台帳で管理できる。
  • 管理できるソフトウェア情報としては、Officeインストール状況、ウイルス対策ソフトウェアインストール状況、アプリケーションインストール状況、Windows 更新プログラムインストール状況などが含まれる。

「僕らが考える最小限のことはこれでできそうだな」と、中村は思った。

ただ一言、海田は念を押すのだった。

「まずは手作業での台帳管理から脱却することが重要だね。この作業を自動化、効率化することで、中村の負担は軽くなるし、何より手作業ならではのミスや記載漏れを防ぐことができるようになる。ただ、それだけで終わっていたのでは勿体ない。大事なのは、ハードウェアやソフトウェアの稼働状況をリアルタイムに管理してデータベース化することで、IT機器を有効活用する道もまた開けるということなんだ」

「例えば稼働状況を把握していれば、この部署にこんなに多くのPCは必要ないんじゃないかとか、これまでPCでやってきたことをスマートデバイスに置き換えれば、コストが大幅に削減できるんじゃないかとか、そういう気づきが生まれるだろ。管理台帳を単なる管理のためのデータベースではなく、ITプランニングなどの戦略立案のための情報として使っていく。そういう視点が大切なんだよ」

うーむ、海田の言うことはなるほどもっともだ。戦略的な“攻め”のIT資産管理———それこそが、情報システム担当の本来の仕事ではないか。その重要性を改めて認識した中村なのである。

今回のポイント

  • コスト削減や情報セキュリティ対策などの観点から、今改めてIT資産管理の必要性が高まっている。
  • 情シス担当の仕事を軽減するためにも、IT資産管理専用のソリューション導入は意味がある。
  • ツールやソリューション導入にあたっては、管理にかかる手間と労力を大幅に削減することができることを目標にすべきだ。
  • ただ管理のための管理に終わっていては勿体ない。IT資産管理情報を次のIT戦略のためのデータベースとして活用することが重要だ。
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