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情シス奮闘記 中小企業編

第12回テーマ 「IoT」(前編)

2018年2月

中小企業でIoTの導入・活用するにはどうすればいいの?

大企業を中心に活用事例が広がるIoT(モノのインターネット)。だが、この物語の舞台、アミダ社のような中小企業にはまだまだ浸透しているとは言い難い。中小企業ではどういう状況であれば、IoTが活用できるのか。実際に導入した場合の効果としてどのようなことが期待されるのか。同社の情報システム部門を一人で担う中村和人は検討を始めた。

半数の企業がIoTを活用してデータを収集

「IoT」(モノのインターネット)。情シスの中村和人が最近すごく気になっているキーワードだ。なぜなら製造業こそIoTを取り入れることで生産の効率化が図れるし、業務スピードが向上すると聞いたからだ。

いったいどのぐらいの企業がIoTを導入しているのだろう。中村は総務省のホームページを調べてみた。そこにはこんなことが書いてあった。

同省が2016年に行った調査によると、IoTを使って「データの収集・蓄積に取り組んでいる企業は51.5%であるのに対し、ビジネスモデルの転換による付加価値の拡大を実現している企業は13.4%となっており、現在は収集・蓄積の段階でとどまっている企業が多数であることが示唆される」
(出典:総務省「平成28年版 情報通信白書のポイント」

これらの数字をどう理解すればいいのだろうか。

「2016年で半数の企業というのなら、2017年はもっと導入企業が増えているはず。一朝一夕に成果が上がるものではないが、うちもすぐに取り組みを始めないと遅れを取ってしまうな」と、中村は思った。

プロセス改善のためのIoT。機械1台ごとの動作回数などをデータ化する

「うちは部品製造業だよね。この業種の場合、IoTの導入はどんな利点があると思う?」

と中村は、いつものように加藤彩に問いかけてみた。加藤との対話は、自分の頭の中のモヤモヤを整理するときとても役に立つし、ときには中村が思いもよらないようなヒントをもらえることもある。

「IoTっていろんな定義があると思いますけど、総務省のページには、『企業におけるIoTの導入には、企業がユーザーとして、自社内においてIoTの導入を進める場合と、企業がサプライヤーとして提供する財・サービスに対してIoTの導入を進める場合が存在する。以降では前者を<プロセスにおけるIoTの導入>、後者を<プロダクトにおけるIoTの導入>と定義した上で説明を行う』って書いてますね。ということは、アミダ社の場合はプロセスのIoTということでいいのかしら」

「そうだね。IoTを使ってモノの流れをデジタル化して把握することで、設計・生産などの工程をより可視化することができる。それによって生産効率の改善や品質向上が図れる、ということだと思うんだ」

「うちの金属加工機がそれぞれいま何を削っているのか、それをリアルタイムで把握することができれば、結果的に、ムダを省くことができるようになるわ」

「もちろん、現場の技術者は機械の動きを常に監視しているから、だいたいのことはわかるけれど、それをデータ化して誰にも見える化しようということなんだ。例えば機械の動作回数や移動距離などをセンサーで計測して、それをサーバやクラウドに送り、その状態をPCやスマホで確認することもできる」

「IoTを使えば、生産装置を遠隔からメンテナンスすることができるようになるんですか」

「たぶん、そうだね。動作が規定回数以上に達したら、メンテナンスに入るという使い方もできるし、監視カメラで異常を発見したら警報を発するというようなことは可能だろうね」

「これまでウチの工場はそういう機械の計測をどうやってやっていたんですか」

「稼働回数なんかは、Excelのシートに作業者が手で入力して管理してたみたい。これがけっこう面倒な作業で、一定期間の稼働状況を見るために出力する表も数百枚にと半端な数じゃなかったんだ。紙に出力していくらためてもビッグデータにならないから、結局データの持ち腐れということもあったらしい」

「そうか、ビッグデータかあ。計測を機械で自動化してシステム化するだけでも、入力や計算の手間がずいぶん減りますものね」

二人にはだんだん自社におけるIoTのイメージが摑めてきたようだ。

つながる工場はこれからの中小企業の課題

「でも、これってうちの工場だけのことですよね」

ふと、加藤が呟いた。

「ん? どういうこと」

「IoTって離れたところにあるモノとモノをつなげることじゃないですか。複数の工場をつなげれば、もっと面白いことができそう」

加藤の指摘は鋭いものだった。

「そうなんだ。うちの工場も加工済みの部材を別の会社から仕入れているだろう。もし、その会社の製造工程のデータが得られれば、いつまでにどのくらい部材が納品される予定かということが、数字だけで把握できるようになるよね。在庫をムダに置いておく必要もなくなるし、うちの生産計画も立てやすくなる」

「それでこそのIoTですものね」

「ただ、他の企業のデータを共有するわけだから、このあたりはよほど信頼関係のある企業同士でないとうまくいかないね」

「でも、日本の中小企業っていまアジアの国にコスト面で押されているじゃないですか。こういうときだからこそ、中小企業同士が手を組んで、より生産を効率化しないといけないんじゃないですか」

「加藤さん、今日はほんと鋭いことを言うね。たしかにそうなんだ。うちの社長も、業界の集まりなんかで、IoTのことを勉強しているというんだけれど、企業の枠を超えたデータの共有はなかなか難しいと言ってたよ」

機器がネットワークにつながれば、セキュリティリスクも増大する

「IoTって実現すればとても素晴らしいことだけれど、データ化することでのセキュリティ面は大丈夫なんでしょうか」

加藤のさらなる疑問はもっともなことだった。

IoTでは、これまでネットワーク化されていなかった機械や装置がネットワークに接続されるようになる。メールやデータベースと同様に、企業内の情報がネットワーク上を行き来し、あるいはクラウド上に蓄積されることになるわけだから、それが漏えいするリスクはたえず考えておかなければならない。

機械の動作回数やメンテナンスデータは、一見すると無機的な数字だが、読む人が読めば、その数字からその企業の生産能力などを推量することも可能だ。ましてそういうデータがライバル企業に漏れてしまったら……。あるいは、さまざまなデバイスを介してウイルスがばらまかれてしまったら、工場の生産装置がストップという恐怖の事態も招きかねない。

「IoTのセキュリティで考えておかなくちゃならないのは、ネットにつながることをこれまで前提にしていなかったデバイスが膨大な数でネットに接続されるようになるということ。センサー1個を1つのデバイスとすれば、1つの機械だけでも何百個になるかもしれないしね。もちろん財務情報が漏えいしたら大変なことだけれど、IoTでは生産装置がネットにつながるわけで、もしそのデータが漏れて、悪意のある人が外部から自在に制御できるようになってしまうと、機械を暴走させて事故を起こすことも不可能じゃない」

「わあ、怖い。ロボットが反乱を起こすSF映画みたいですね」

「そのあたりのセキュリティのことも、もっと勉強しておかないといけないね」

「それに、コストのことも気になるわ。大手メーカーならわかるけれど、うちのようなカツカツでやっている小さな会社で、ほんとにIoTって導入できるんでしょうか。いくらお金をかけても効果がない、なんてことになると、江窪社長の機嫌がまた悪くなっちゃう」

「そうだね。うちのような規模で、実際にIoTを導入している企業を探して、もっと詳しく調べてみようよ。それを参考にうちではどうすれば導入できるのかシミュレーションしてみよう」

今回のポイント

  • 日本の企業の半数がIoTの取り組みを始めているが、成果はまだ十分とはいえない
  • 製造業にとってのIoT導入の意義は、まずはプロセス改善
  • 稼働状況やメンテナンス状況を「見える化」する
  • 企業間のデータ共有はこれからの課題
  • セキュリティリスクの事前評価、対策が重要に
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