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特集 情シス事情を知る

迫る「2025年の崖」
―あらためて確認したいその意味と対策とは? わかりやすく解説!

2023年3月

経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」を通じて、多くの企業を震撼させた「2025年の崖」が迫っている。残された時間は2年もない。中堅中小企業を取り巻く環境は当時より厳しさを増しており、対策は不可欠だ。経済産業省が発表した「DX推進指標」をもとに、あらためてDX推進について説明する。

「2025年の崖」とは

企業は長年にわたって様々なITシステムを導入し、業務の効率化を進めてきた。しかし、これらのITシステムは部門や業務ごとの個別最適で構築されたものが少なくない。結果として、全社横断的なデータ活用ができない、過剰なカスタマイズで複雑化・ブラックボックス化しているといった弊害を発生させている。

例えばコロナ禍で緊急事態宣言が発出された当時、テレワークが要請されたにもかかわらず、「書類にハンコを押すためだけに出社しなければならない」といった声があちこちの企業から聞かれた。これも個別最適で構築され、ブラックボックス化してしまったシステムの弊害の1つだ。システム間で直接連携できない部分に常に人が介在し、アナログの手段によってつながなければならない。この例からも言えるようにレガシー化したシステムは環境変化への対応力が非常に弱く、無駄な作業やコストが発生してしまう。

経済産業省が、「この課題を克服できない場合、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」とするDXレポートを発表し、いわゆる「2025年の崖」の警鐘を鳴らしたのは2018年9月のことだ。

それから早くも4年半が過ぎ、2025年はもう目の前に迫っている。あなたの職場のDXはどれくらい進んだだろうか。

一般社団法人日本能率協会(JMA)が2022年11月に発表した「日本企業の経営課題2022 調査結果速報」によれば、DXへの取り組みを始めている企業は、大企業では80%を超えるほか、中堅企業でも58.3%と半数を超えている。中小企業ではまだ36.1%にとどまっているものの、「検討を進めている」「これから検討する」という回答も合わせれば76.1%となり、確実に関心は高まっているようだ。

  • 大企業:従業員数3,000人以上
    中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
    中小企業:従業員数300人未満
    (出典:日本能率協会、「日本企業の経営課題2022」 調査結果速報)

実際ここ数年の企業を取り巻く環境変化を振り返ると、コロナ禍による需要の低迷やサプライチェーンの寸断、ウクライナ問題に端を発したエネルギー不足や急激な円安など、誰も予測していなかった事態が次々に起こっている。

そうした中で企業が今後も生き残り、持続的な成長を遂げていくためには、自社のサービスやビジネスそのものを新たな環境に即応させていく必要がある。それは必ずしも大企業だけの課題だけではなく、中堅中小企業にも言えることだ。

事業そのものの在り方やビジネスモデル、顧客との関係性、従業員の働き方などを、デジタルテクノロジーを駆使して再構築し、これまで以上の価値を創出することで、企業は競争力を高めることができる。これがすなわちDXであり、その必要性は今まで以上に高まっている。「2025年の崖」はますます切迫度を増しているのである。

DX推進指標からDXをどう進めるか読み解く

DXを推進していく上でまずやるべきことは、自社が今どの地点にいるのか現在地を把握することだ。ここで参考になるのが、経済産業省が発表した「DX推進指標」である。

「DX推進のための経営の在り方、仕組みに関する指標」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」の大きく2つの指標群で構成されており、経営者が自ら、または経営者が事業部門、IT部門などの責任者が議論をしながら全35問に回答するだけで、自社のDX推進レベルを自己診断できる内容となっている。

肝心なのはその先だ。自社の現在地を把握したとして、実際にDXはどう推進していくのかが問われることになる。

経済産業省は「『DX推進指標』とそのガイダンス」を公開し、アクションの具体化に向けた基本的な考え方を示している。2019年7月に公開されたものだが、その内容は今も十分に役立つものであり、2025年の崖が差し迫っている今、ぜひ再認識してほしい内容となっている。特に重要な7項目の概要を下記に紹介する。

1.ビジョンの共有

DXの取り組みは、ともすれば「AIを使って何かやれ」といった号令の下、Howから入ってしまうことが少なくない。こうした状況に陥らないため、顧客視点でどのような価値を生み出すのか、まずビジョンを明確にし、社内外で共有することが重要である。例えばマーケットがデジタル中心に変化した10年後を想定し、そうした中で自社が提供できる価値を明確化し、共有してみよう。

2.危機感の共有

DXではビジネスモデルや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化そのものの変革が求められるが、現場の抵抗はつきものである。この課題を乗り越えるためには、変革しないことでもたらされる危機を、リアリティを持って経営層や現場に腹落ちさせることが重要だ。自社がターゲットとするマーケット、所属しているサプライチェーンやバリューチェーンが、デジタル化によりどのように変化していくか、あるいはディスラプターの台頭によってどのように破壊される可能性があるのか、客観的に調査・分析した結果を示すことも有用である。

3.経営トップのコミットメント

ビジネスモデルや業務プロセスを変革し、企業文化を変革していくためには、経営者自身が新たな経営の仕組みを明確化し、全社で持続的なものとして定着させることが必要だ。組織を再整備すると共に、「権限の委譲」「適切な人材・人員をアサイン」「予算を十分に配分」「プロジェクトや人事の評価方法の見直し」などを進めることが、特に重要なポイントとなる。また、自社にとって優先すべき取り組みを選択することも、経営者に求められるコミットメントの一つである。

4.従業員のマインドセット、企業文化の変革

DXによって創出される価値は、必ずしも事前に想定できるとは限らないため、挑戦すること、失敗から学ぶことも重要である。また、挑戦や失敗からの学習をスピーディーに繰り返し、かつ、継続できることが必要である。したがって、「仮説設定→実行→検証→仮説修正」の繰り返しのプロセスをスピーディーに回しつつ、「優先順位→予算割り振り」のサイクルを環境変化に応じて迅速に変化させるための「プロセス」「プロジェクト管理」「評価」の仕組みを整備し、確立していくことが重要である。

5.DXの推進・サポート体制の確立

DXを推進する部門のミッションは、自らが新しい製品やサービスをアジャイルに開発するケース、全社のデジタルビジネスをサポートするケースなど企業によって様々だ。ただし、いずれの場合でも事業部門やIT部門を巻き込んでいくことが欠かせない。これを実現するため、経営トップの判断の下で各部門の役割を明確化し、必要な権限を与えると共に必要な人材・人員をアサインする。

6.人材育成および確保

DX推進を担う人材の育成・確保が全社的な経営課題となっている企業は少なくない。DX推進に必要となる人材のプロファイルを明確にし、数値目標を持たせることで、育成や社外からの獲得を効率化すると共に人材ミスマッチを防止する。これにより短期および中長期の視点に立った、具体的なアクションにつなげていく。

7.事業への落とし込み

DX推進で求められるのは経営者のリーダーシップだ。経営者自らがDXの必要性を十分に説明し、改革を実行する際の現場レベルの抵抗を抑えて説得して、変革を事業レベルに浸透させていくことが必要だ。

DXを積極的に推進している企業とは

近年、電子帳簿保存法の改正やアナログ規制の見直しなど、法改正が進んだことで、DX推進に興味を持つだけではなく、実際に進めている企業も多い。ここでは、実際に積極的なDX推進に取り組んでいる企業の事例を紹介したい。

製薬メーカー:バリューチェーンの効率化

ある製薬メーカーは、ヘルスケア産業への多様な新規参入によるディスラプション(創造的破壊)が起きる中で、自社の競争優位性を確保するためのDXを推進している。

そこでの大きなテーマが、バリューチェーンの効率化である。顧客データを統合的に解析し、得られたインサイト(洞察)に基づいたアプローチによって顧客体験を高めるソリューションを開発し、業務プロセス改革を進めている。

さらにAIを活用した治験関連文書の作成効率化、「デジタルで生産業務を変革し、生産性を高めて人財を高付加価値化する」をコンセプトとする作業計画とアサインの自動化、教育計画と資格認定の自動化、ペーパーレス化、RPAを活用した定型業務の自動化などを推進し、人材活用とオペレーションの最適化を目指している。

電気・ガスの小売会社:エネルギーを自立供給

ある電気やガスの小売会社は、エネルギー供給の脱炭素化が求められる中で、自社の事業をエネルギーソリューションに進化させるべくDXを推進している。災害時でもエネルギーを自立供給できる地域分散型システムへのシフトを目指すものだ。

この企業の取り組みで注目すべきは、「変革に挑戦しないことがリスク」とし、過去の成功体験を繰り返さず失敗を恐れず挑戦し続ける風土を成長の原動力としていることだ。そうした中でプロジェクトごとに事業を理解するビジネスサイドの人材とエンジニア、UI・UXデザイナーがタッグを組んで案件を遂行している。なお、外部エンジニアについては「どの会社」ではなく「どの個人」と組むかを重視し、プロジェクト遂行に必要な先端技術を保有するパートナーと協業している。


「2025年の崖」まで残された時間は長くない。大手企業だけでなく中堅中小企業にとっても生き延びるための対策は重要だ。その解決手段の一つがDX。自社のDX推進の現在地を把握し、DXを推進していこう。

DXへの取り組みを検討の方へ

2023年は、電子帳簿保存法への対応やOSのサポート対策など、取り組むべき「IT課題」がある中、DXへの取り組みも併せて考える絶好のタイミングです。

差し迫った「IT課題」への解決のヒントを、3つのテーマでご紹介します。

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