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[第2回]全社方針の決定
2009年12月7日
前回のコラム「経営戦略の再考につながるパンデミック用BCPの策定」では、次の説明をしました。
普段、ある業務を担当している従業員が特段の準備もなく他の業務についた場合、それを問題なく遂行できるということは考えにくいことです。
停止対象事業の従業員で継続対象事業を遂行するには、事前の準備・・・つまりBCPの策定が必要ということ、ご理解いただけたと思います。
![[図] BCPに基づいた事業継続の実現](images/cons_column06_03-2.gif)
では、パンデミック用BCPはどのような手順で策定すればいいのでしょうか。
私は下記の4ステップで策定すべきではないかと考えます。
![[図] BCP策定の4ステップ](images/cons_column06_05-1.gif)
第2ステップ~第4ステップは並列で取り組むことが可能です。
しかし、実際にはリソースネック等があり、並列で取り組むのは難しいかと思いますので、ここでは順序をつけて説明します。
本コラムでは、第1ステップ「全社方針の決定」について説明します。
BCP主管部門の役割はBCPの作成・維持です。
組織内にこの役割を担う部門があれば特に新しく設置する必要はありません。
ただし、BCPの作成には実作業に加え、社内外の各組織との調整が多発することが予想されるので、リソースに不足がないか考慮する必要があります。
新しく設置する場合に気をつけたいのは、BCPの作成に必要な能力を有する、適切なメンバーを配置するということです。
BCPの作成担当者は、組織が手がけている各事業と、それを遂行している各事業所の特徴について把握している必要があります。
理解が足りない部分については、社内外の各組織の協力を仰ぐことになりますので、調整が必要な組織を洗い出し、その組織の窓口との調整を円滑に進められるような知識やコネクションを持っていることが望ましいです。
また、各種の調査結果や想定した事柄を基に判断を下し、それについて経営者に説明することも求められます。
BCP主管部門が組織としてこれらのことが遂行可能になるよう、適切なメンバーを配置する必要があります。
各事業所の立地条件や、行っている業務の特性から感染リスクを設定します。
ここで設定した事業所ごとのリスク値は、第3ステップ「感染防止策立案」の参考情報とします。
組織として最低限の感染防止策は実施すべきですが、どの程度のレベルまで対策を打つかの判断は悩ましいところではないでしょうか。
リスク値の設定により、各組織内での「ものさし」ができ、過剰な対策や不十分な対策に陥ることを防げます。
各項目のリスク値の設定が終わったら、事業所のリスク値を算出します。
事業所のリスク値の算出は、BCP主管部門内で定性的に行っても良いですし、各項目とそれぞれの記入内容に重みをつけ、その値を加算して算出するといった方法をとっても良いです。
前述のとおり、ここで算出したリスク値は感染防止策の立案時に事業所間で感染防止策の強弱をつける場合の判断基準となります。
ただし、組織として従業員の感染リスクに関する方針が定まっている場合はそれに準ずるのが望ましいので、その場合リスク値は厳密に算出しなくても良いと思います。
組織における各事業の重要度を分析し、継続対象と停止対象の事業を選定します。
前述の通り、パンデミック発生時には40%の従業員が出社できなくなります。出社可能な従業員が60%としかいないという状況の中で、組織への影響を最小限に抑えるためには、事業レベルの分析を通して、継続対象事業を選定する必要があります。
各項目への重要度の設定が完了したらその結果を勘案し、事業ごとの重要度を算出します。
リスク値と同じく、重要度の算出についても、BCP主管部門内で定性的に行っても良いですし、各項目とそれぞれの記入内容に重みをつけ、その値を加算して算出するといった方法をとっても良いです。
ここで算出した重要度を基に、継続対象事業かどうかを判断します。
社会的影響が大きい事業や、顧客に社会機能の維持にかかわる事業者がいる事業については特に慎重に検討することが望ましいです。
繰り返しになりますが、パンデミック時には従業員の40%が欠勤することが想定されていますので、60%の従業員で遂行可能なように担当従業員数を考慮しながら、継続対象事業を選定します。
継続対象事業として選定した事業が、どのような構造で運営されているのかを分析し、継続対象事業の継続に最低限必要な業務を特定します。
事業の多くは、直接担当する部門以外に、間接部門や組織外のリソースによる支援によって運営されています。
継続対象事業を確実に継続するためには事業構造の分析を行い、必要なリソースに対し適切な対策を採る必要があります。
また、必要に応じ、継続対象事業を構成する業務をビジュアル化することで、重要な業務を直感的に捉えることができます。
![[図] 事業構造図の例](images/cons_column06_05-2.gif)
上記項目の整理が終わったら、業務内容と許容停止時間を勘案し、継続対象業務を選定します。
パンデミックの期間は2ヶ月間と推定されておりますので、許容停止時間が2ヶ月以下の業務は継続対象業務とするのが望ましいといえます。
ここで選定した継続対象業務について、業務継続策を立案します。業務継続策の立案については、第4ステップ「業務継続策の立案」で行います。
また、継続対象事業・業務については経営者の確認を取ることが望ましいです。
今回はパンデミック用BCP策定の流れと、その第1ステップである「全社方針の決定」について説明しました。
このステップでの大事なポイントが2つあります。
ひとつは「BCP主管部門の設置」です。
BCPの策定においても、策定後の維持・管理においても、主管部門があるかないかによって取り組みの進捗と品質が全く変わってきます。
パンデミック用に限らず、BCPの策定は「想定」の連続ですので、責任と権限を持って取り組めるかどうかが大きなポイントとなります。
もうひとつは、言うまでもなく「経営者の参画」です。
経営者が主体的に、危機意識を持って行動し、BCP主管部門の設置をはじめとした経営資源の割り当てと強いリーダーシップが、組織の事業継続力を高めるための第一歩です。
NECネクサソリューションズ
コンサルタント 吉田 一紀
[ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、情報セキュリティアドミニストレータ]