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NECネクサソリューションズのコンサルティングサービス

今日からはじめるパンデミック用BCPの策定

[第2回]全社方針の決定

2009年12月7日

前回コラムの振り返り

60%のリソースで事業を継続するにはBCPが必須

前回のコラム「経営戦略の再考につながるパンデミック用BCPの策定」では、次の説明をしました。

  1. パンデミック発生時には40%の従業員が出社できなくなる
    →休止する業務を決めておくことがBCPの重要な役割となる
  2. 休止する業務を決め、60%の従業員で遂行できる継続対象事業を選定しただけでは不十分
    →60%の従業員で継続対象事業を遂行するには、停止対象事業の従業員で継続対象事業を遂行する必要がある

普段、ある業務を担当している従業員が特段の準備もなく他の業務についた場合、それを問題なく遂行できるということは考えにくいことです。
停止対象事業の従業員で継続対象事業を遂行するには、事前の準備・・・つまりBCPの策定が必要ということ、ご理解いただけたと思います。

60%の従業員で事業を継続するために必要なこと

[図] BCPに基づいた事業継続の実現

パンデミック用BCP策定の流れ

では、パンデミック用BCPはどのような手順で策定すればいいのでしょうか。
私は下記の4ステップで策定すべきではないかと考えます。

[図] BCP策定の4ステップ

第2ステップ~第4ステップは並列で取り組むことが可能です。
しかし、実際にはリソースネック等があり、並列で取り組むのは難しいかと思いますので、ここでは順序をつけて説明します。

パンデミック用BCP策定の4つのステップ

第1ステップ
「全社方針の決定」
  • 事業継続を主管する部門を設置し、その役割を定義する
  • リスク分析を実施し、事業所ごとの脆弱性を把握する
  • 事業レベル分析を実施し、継続対象事業を選定する
第2ステップ
「事業継続体制の構築」
  • パンデミック時の意思決定者、リスクコミュニケーション体制・方法を決定する
  • 感染基準、自宅待機基準、発動基準などを決定する
  • 決定事項を文書化する
第3ステップ
「感染防止策の立案」
  • 組織レベル・個人レベルの感染防止策を立案する
  • 決定事項を文書化する
第4ステップ
「業務継続策の立案」
  • 業務レベル分析を実施し、継続対象業務を特定する
  • 継続対象業務の目標操業度、必要リソースを把握し、業務継続策を立案する
  • 決定事項を文書化する

本コラムでは、第1ステップ「全社方針の決定」について説明します。

BCP主管部門の設置

BCP主管部門の役割はBCPの作成・維持です。
組織内にこの役割を担う部門があれば特に新しく設置する必要はありません。
ただし、BCPの作成には実作業に加え、社内外の各組織との調整が多発することが予想されるので、リソースに不足がないか考慮する必要があります。

新しく設置する場合に気をつけたいのは、BCPの作成に必要な能力を有する、適切なメンバーを配置するということです。
BCPの作成担当者は、組織が手がけている各事業と、それを遂行している各事業所の特徴について把握している必要があります。
理解が足りない部分については、社内外の各組織の協力を仰ぐことになりますので、調整が必要な組織を洗い出し、その組織の窓口との調整を円滑に進められるような知識やコネクションを持っていることが望ましいです。

また、各種の調査結果や想定した事柄を基に判断を下し、それについて経営者に説明することも求められます。
BCP主管部門が組織としてこれらのことが遂行可能になるよう、適切なメンバーを配置する必要があります。

リスク分析

リスク値の設定

各事業所の立地条件や、行っている業務の特性から感染リスクを設定します。
ここで設定した事業所ごとのリスク値は、第3ステップ「感染防止策立案」の参考情報とします。

組織として最低限の感染防止策は実施すべきですが、どの程度のレベルまで対策を打つかの判断は悩ましいところではないでしょうか。
リスク値の設定により、各組織内での「ものさし」ができ、過剰な対策や不十分な対策に陥ることを防げます。

考慮すべき項目の例

所在地
人が多く、人口密度の高い場所ほど、感染リスクは高くなります。
例として、都心部と郊外などの2項目程度に分類することが考えられます。
[例]都心部:東京・名古屋・大阪・福岡・仙台・札幌・各都市の中心部、郊外:都心部以外
主な通勤手段
電車・バスなどの公共交通手段を利用して通勤する場合、感染リスクが高まります。
各事業所において一般的な通勤手段をリスク値設定の対象とします。
他人と近接する業務
各事業所に勤務する従業員が業務の都合上、他人(顧客・他の従業員)と2メートル以内に近づく可能性が多くある場合、感染リスクが高くなります。
各事業所におけるこのような業務の割合・頻度を勘案し、リスク値を設定します。
多数の者を集める業務
前述の「他人と近接する業務」と同じく、顧客・他の従業員など多数の者を1箇所に集めることにより、感染リスクが高くなります。
各事業所におけるこのような業務の割合・頻度を勘案し、リスク値を設定します。

リスク値の算出

各項目のリスク値の設定が終わったら、事業所のリスク値を算出します。
事業所のリスク値の算出は、BCP主管部門内で定性的に行っても良いですし、各項目とそれぞれの記入内容に重みをつけ、その値を加算して算出するといった方法をとっても良いです。

前述のとおり、ここで算出したリスク値は感染防止策の立案時に事業所間で感染防止策の強弱をつける場合の判断基準となります。
ただし、組織として従業員の感染リスクに関する方針が定まっている場合はそれに準ずるのが望ましいので、その場合リスク値は厳密に算出しなくても良いと思います。

事業レベルの分析-継続対象事業の選定

事業の重要度の設定

組織における各事業の重要度を分析し、継続対象と停止対象の事業を選定します。
前述の通り、パンデミック発生時には40%の従業員が出社できなくなります。出社可能な従業員が60%としかいないという状況の中で、組織への影響を最小限に抑えるためには、事業レベルの分析を通して、継続対象事業を選定する必要があります。

考慮すべき項目の例

分析対象事業
組織における売上の源泉となっている事業を分析の対象とします。
直接売上に結びつかない間接業務・支援業務についてはここでは対象としません。
担当従業員数
その事業に携わる従業員数を概算で算出します。
主な顧客
その事業の主な顧客について考慮し、重要度を設定します。
顧客に社会機能の維持にかかわる事業者がいる場合は重要度を高く設定します。
収益への影響
その事業が停止した際に収益の悪化から経営に影響が出ることが予想される場合、その度合いに応じて重要度を設定します。
コンプライアンスへの影響
その事業が停止した際に、契約上のペナルティの発生が予想される場合や、取引先の経営に影響が出ることが予想される場合、その度合いに応じて重要度を設定します。
パンデミック時の
需要の変化
パンデミックが発生した場合に、その事業への需要がどう変化するかを考慮します。
パンデミック時には経済活動が制限されるため、多くの事業では需要の大幅な減少が予想されます。医療行為に関わる事業や、自宅待機時でも購入・使用可能なサービス(インターネット関連サービスなど)に関わる事業の場合、需要の増加も考えられますので、重要度を高く設定します。
社会的影響
その業務が停止した際に社会機能の維持に影響が出ることが予想される場合、その度合いに応じて重要度を設定します。

事業の重要度の算出

各項目への重要度の設定が完了したらその結果を勘案し、事業ごとの重要度を算出します。
リスク値と同じく、重要度の算出についても、BCP主管部門内で定性的に行っても良いですし、各項目とそれぞれの記入内容に重みをつけ、その値を加算して算出するといった方法をとっても良いです。

ここで算出した重要度を基に、継続対象事業かどうかを判断します。
社会的影響が大きい事業や、顧客に社会機能の維持にかかわる事業者がいる事業については特に慎重に検討することが望ましいです。

繰り返しになりますが、パンデミック時には従業員の40%が欠勤することが想定されていますので、60%の従業員で遂行可能なように担当従業員数を考慮しながら、継続対象事業を選定します。

事業レベルの分析-継続対象事業の分析

最低限必要な業務の特定

継続対象事業として選定した事業が、どのような構造で運営されているのかを分析し、継続対象事業の継続に最低限必要な業務を特定します。

事業の多くは、直接担当する部門以外に、間接部門や組織外のリソースによる支援によって運営されています。
継続対象事業を確実に継続するためには事業構造の分析を行い、必要なリソースに対し適切な対策を採る必要があります。
また、必要に応じ、継続対象事業を構成する業務をビジュアル化することで、重要な業務を直感的に捉えることができます。

事業構造図の例

[図] 事業構造図の例

考慮すべき項目の例

分析対象業務
その事業を運営するのに必要な業務を分析対象とします。
対象の粒度は、担当部門が複数の部門にまたがらない程度の粒度が望ましいです。
業務内容
その業務内容について簡潔に整理します。
担当部門
その業務を担当する部門を確認します。
必要な外部リソース
その業務を遂行するにあたり、担当部門以外のリソースが必要かどうか確認・特定します。
ここでのリソースは社内外を問いません。
許容停止時間
その業務が停止してから、継続対象事業の事業継続が不能となるまでの時間を算出します。
例えば、原材料の購買業務において、平均1ヶ月分の在庫を保有しており、1ヶ月間購買業務が停止しても継続対象事業の事業継続には影響が出ない場合、許容停止時間は1ヶ月となります。

継続対象業務の選定

上記項目の整理が終わったら、業務内容と許容停止時間を勘案し、継続対象業務を選定します。
パンデミックの期間は2ヶ月間と推定されておりますので、許容停止時間が2ヶ月以下の業務は継続対象業務とするのが望ましいといえます。

ここで選定した継続対象業務について、業務継続策を立案します。業務継続策の立案については、第4ステップ「業務継続策の立案」で行います。
また、継続対象事業・業務については経営者の確認を取ることが望ましいです。

重要ポイントは「BCP主管部門の設置」と「経営者の参画」

今回はパンデミック用BCP策定の流れと、その第1ステップである「全社方針の決定」について説明しました。
このステップでの大事なポイントが2つあります。

ひとつは「BCP主管部門の設置」です。
BCPの策定においても、策定後の維持・管理においても、主管部門があるかないかによって取り組みの進捗と品質が全く変わってきます。
パンデミック用に限らず、BCPの策定は「想定」の連続ですので、責任と権限を持って取り組めるかどうかが大きなポイントとなります。

もうひとつは、言うまでもなく「経営者の参画」です。
経営者が主体的に、危機意識を持って行動し、BCP主管部門の設置をはじめとした経営資源の割り当てと強いリーダーシップが、組織の事業継続力を高めるための第一歩です。

執筆

NECネクサソリューションズ
コンサルタント 吉田 一紀
[ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、情報セキュリティアドミニストレータ]

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