「ICT×地域のブランド戦略」を考える
~弘前市(青森県)を歩きながら~

「ぷらぷら☆旅をしながら情報化について考える」 ~ICT×国づくり×人づくり~ [第6回]
2015年3月

執筆者:NPO法人 HINT 理事長、ai株式会社 代表取締役
総務省地域情報化アドバイザー/総務省地域力創造アドバイザー
 井上 あい子(いのうえ あいこ)氏

An apple a day keeps the doctor away.

諺にある、「一日一個のりんごで医者いらず」をご存知でしょうか。
4月中旬になると、桜の花が咲き誇り、桜吹雪が舞う頃から、リンゴの花が咲き始めます。津軽富士とも呼ばれる岩木山を眺めることができる、美しい広大な、りんご畑からは、甘酸っぱい、りんごの香りが漂います。

そんな、りんごの日本一の生産地である、弘前市は、青森県西部の津軽(つがる)地方にあります。
弘前市には、青森ICTまちづくりコンソーシアム準備委員会が主催した、『まち・ひとづくりシンポジウム(情報化推進による地方創生と観光戦略)』のパネリストの一人に、地域情報化アドバイザーとして、登壇をさせて頂きました。

青森県には、2度目の訪問でしたが、飛行高度が下がる辺りからの景色と、空港に降り立った時に感じた雰囲気は、スイス(Swiss)に似ているな・・・
私のインスピレーションが正しく作動していましたら、スイスの持つイメージやブランド力を観察し、比較検証されることを地域づくりのプロデューサーにお薦めしたいと思います。

そして、よそ者が垣間みた、弘前市のたくさんある魅力をギューッと凝縮して、あえて一言で表現すると、【潤(うるおい)】があるということです。
当たり前の日常に、そこに暮らす世代を超えた人々が、ご先祖さんから受け継いだ【潤】と、自然の【潤】を受けた地によって、これからも、【人】を育て、【人】が育つために必要な【潤】を生み出す土壌となることと期待します。

弘前市では、毎月5日は、りんごを食べる日

地域のブランド戦略についても、自治体が抱えるテーマです。
地域のブランド力を高めるということは、その地域名に対して、信頼や信用がつくことです。信頼や信用という箔がついた地域にもたらされる【潤】は、計り知れないものがあるからです。

同じ生産工程を経て、同じ商品が生み出されたとしても、【人】は、ブランド力のある地域の商品に魅力を感じ、その商品を選びます。同じ商品に、「Made in Japan(日本製)」と「Foreign make(外国製)」と表記があった時、日本製を選ぶ消費者が多いかと思います。更に、製造・生産・加工の地域名によって選ぶ方もいます。同じような商品でも、厳密には、生産地や作り手等が異なるために、安全性や成分、味が異なるケースがあるからですが、地域名そのものが、ブランド力となり得ます。

全国には、1,718もの市町村が存在しますので、ほとんどの市町村は、世に知られていないと思います。
全国でも、有名な市町村は、誰もがわかりやすく、強い個性と独自性をもち、必ず魅力のある【人】がいて、魅力のある場所やモノがあり、よそ者も、【潤】を得られる地域なのです。

戦略には、徹底的な基礎データの収集と分析

先ほどご紹介したシンポジウムで、私が、パネリストとして発言をさせて頂いた一説です。

「あらゆるデータ(デジタル化)が整っていますか?」
「情報は、人の体で表すと血液や組織液のようなもので、体内のどのようなところにも必要とされています。同じことを組織や事業に置き換えますと、情報を必要としない組織や事業は成り立ちません。人が集まり、ICT を利活用した情報発信力の強化を図ることは、あらゆる分野において活性化に繋がります。」

戦略には、徹底的なニーズ調査や基礎データの集積が必要です。そして、そのデータから、よそ者や若者の視点を入れて、客観的に分析をすることが大切です。議論をする場では、美辞麗句を並べた社交辞令よりも、時には、よそ者の厳しい意見を聞き入れてみることも、戦略のひとつです。

また、できていないからダメとか、わからないからダメとかではなく、地域の実情を知った上で、戦略を立てた方が、建設的な解決策が見つかることと思います。

ICT×地域のブランド戦略 情報分析とイメージづくりが『鍵』

誰もが知る高級ブランドは、紙袋やロゴを見ただけで、どこのブランドかわかります。素敵な色や格好の良いロゴが使われていますが、それは店舗の看板、商品の包装紙、ホームページ等、すべてにおいて、コンセプトの統一感があります。
当然ながら、同業種で同じデザインを使っているブランドはひとつもなく、全てオリジナルです。そして、揺るぎのないイメージが兼ね備わっています。

高級ブランドに老舗が多い理由は、価格もさることながら、商品の価値以上に付加価値として、接客やアフターサービスが受け続けられるという、消費者側の安心感も付与されているからです。地域のブランド戦略を高級ブランドのコンセプトに例えて考えると、理解しやすいのではないでしょうか。

例えば、街中をりんご(apple)一色にしてみては!
 イメージカラーは、赤色#FF0000
 ロゴや使用する文字フォントの統一

  • 名刺・はがき・封筒
  • 街中の公共施設の看板を統一したロゴの使用
  • 包装紙・紙袋・ビニール袋・箸袋
  • 信号待ちの音♪「りんごの歌」
  • ポプリ・入浴剤・アロマオイル
  • 化粧品・美容パック・石鹸・ボディーローション
  • 旅館&ホテル・飲食店の看板やホームページ
  • 各種ユニホーム
  • お食事の〆の料理(デザート)
  • お土産品の数々・・・に至るまで

上記は、ICTを利活用した地域のブランド戦略の一例ですが、様々なICTの利活用が考えられたとしても、その担い手は、【人】であり、すべては【人】に委ねられています。

地域が活性化するためには、特に、事業者さんが儲けなければなりません。【潤】について、今まで以上に真剣に議論をする必要があります。
★潤★とは、しめり、もうけ、利潤、恩恵、人間味のこと。【潤】を造り出す【人】がいる地域こそが、地域のブランド戦略には必須です。総じて、地域のブランド力向上のためには、そこに暮らす住民と事業者が協力して、徹底的な情報収集と分析、イメージづくりを地域全体で作り上げることが必要となり、その地域のブランド情報をメディア等に取り上げてもらうことで、広域に伝わって行きます。

そこで、先導役(リーダー)となるのは、やはり自治体職員の皆様方だと思います。だからこそ、普段からICTを利活用していないと、イザという時には使えませんし、何より、自治体職員の皆様方は、その地域の営業スタッフです!
そのためには、今一度、基礎データとなる情報収集の徹底と分析、今スグにでもできる、皆様の身の回りで使える、ICT利活用から行って頂きたいと思います。

ICT×地域のブランド戦略を考える前に、あらゆる基礎データの収集と分析、よそ者と若者の意見を聞くことが、優先事項です。そして、やっぱり【人】。

第6回のコラムを終えますが、弘前市(青森県)に興味を持たれましたでしょうか?
地域のブランド戦略は、そこに関わる【人】が、旅をして、食べてみて、色々と体感して頂かないと・・・とっとと、仕事や用事を片付けて、とにかく外へ出掛けて行って下さい。何より、本コラムをご覧になって頂きまして、何かのHINTにして頂ければ光栄に思います。

コラムを最後までご覧になって頂きまして、誠にありがとうございました。クスッとご笑納をして頂ければ、私のミッションは完了です。

また、どこかの街をぷらぷら☆旅をしながら情報化について考えてみたいと思います。
See you next time!

旅のMEMO

弘前市の代表駅への交通

JR奥羽本線、弘南鉄道弘前線「弘前」駅

弘前市のお薦めのスポットの一部をご紹介させて頂きます。
是非とも、桜香るりんごも香る弘前市においで下さい。

お土産品

  • にんにくみそ そのままでも、軽く焼くと肴によし

津軽三味線とお酒の店

  • 「山唄」
    三味線と地酒と郷土料理が堪能できます

温泉

  • 嶽温泉・百沢温泉・湯段温泉・白馬龍神温泉・境関温泉・新岡温泉

弘前の4大祭り

  • 4月の弘前桜まつりからスタート

宜しければ、blogをご笑納下さい。

※弘前市(りんご畑と岩木山)      ※弘前市と西会津町をSkypeで繋ぐ
@青森ICTまちづくりコンソーシアム準備委員会 二階氏より提供

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