データヘルスって何???
日本の超高齢化社会を救えるのはデータヘルスか? [第1回]
2016年10月

執筆者:特定非営利活動法人データ・ヘルスケア・イノベーション Japan
    代表理事
    岸本 佳子(きしもと よしこ)氏

「データヘルス」って何?

各省庁からの報告書等によく「データヘルス」って単語がでてきますが、そもそも「データヘルス」って何?って思っておられる方も多いのではないでしょうか。データ=基礎資料・情報。ヘルス=健康。直訳すると、基礎資料の健康?もっとわからなくなります。

最近の報告書等は、横文字が氾濫していて非常に読みづらくなっています。とはいえ、私どものNPO法人もすべて横文字ですが・・・(俗に言う大阪人の一人ノリ・ツッコミです。)

そもそも、データヘルスとは?厚生労働省のホームページに以下のように記載されています。


近年、健診やレセプトなどの健康医療情報は、平成20年の特定健診制度の導入やレセプトの電子化にともない、その電子的管理が進んでいます。これにより、従来は困難だった電子的に保有された健康医療情報を活用した分析が可能となってきました。データヘルスとは、医療保険者がこうした分析を行った上で行う、加入者の健康状態に即したより効果的・効率的な保健事業を指します。



ではなぜいま、データヘルスが注目を浴びるのでしょう?

医療保険者は、被保険者の医療情報・特定健診情報を電子的に保有しています。そのデータを分析して、個々の医療保険者の課題を把握し、データ結果を基に独自の保健事業を展開することを目指します。その保健事業を効率的・効果的に展開をする為、策定する計画が「データヘルス計画」です。

PDCAサイクルって何???

「データヘルス計画」とは、レセプト・健診情報に基づきPDCAサイクルをもって、保健事業を展開するための計画となり、身の丈にあった計画の策定をしないといけません。

PDCAサイクルの例として、来月合コンがあるので、それまでに綺麗になりたいと思い、目標を考えます。その際自分なりにどうしたら綺麗になるのかを分析します。分析の結果、ポッチャリ体型なのでダイエットしよう!と考えます。1ヶ月10キロのダイエット目標を設定すると、成功するのに非常に困難となり、体調不良や、綺麗になるどころか逆にシワシワ、カサカサになりかねません。そこで、身の丈にあった、「2キロダイエットしイケメンをゲット」という目標を立てます。

まず、Plan(計画)をたて、「間食をやめ、職場の最寄り駅から一駅手前で降り職場まで歩く」という計画を作ります。次にその計画を、Do(実施)します。目標期間の1ヶ月の半分の2週間目に一度Check(評価)します。1ヶ月で2キロの目標をたてましたので、2週間で1キロダイエットしていたら、Plan(計画)とDo(実施)は成功となります。

しかし、0.5キロしか痩せていなかったら原因を考えます。そこで2週間の行動を思い出す、仕事でクレーム案件の対応に追われていた→クレームに対し上司から小言を言われる→ストレスによる暴飲暴食(暴飲暴食したせいで、お肌もボロボロ)。これは負のスパイラル!「2キロダイエットしイケメンをゲット」という目標が、ガラガラ根底から崩れていきます。

そこで、これではいけないと思いAct(改善)します。Plan(計画)は?と考えると無理な計画は立てていない。Do(実施)は?と思い起こすと、ストレスからの暴飲暴食が原因であると、誰にでもわかります。では、ストレスによる暴飲暴食をAct(改善)します。

ストレスについては、仕事があっても無くても関係なく、一生うまく付き合っていかないといけません。そこで、暴飲暴食ではないストレス解消法を考えた結果、対戦ゲームで対戦相手の名前を小言を言う上司の名前とし、快勝することを考えましたが、逆に負けた時はもっとストレスが溜まることを思いつき、別のストレス解消方法として、少し長めの入浴と早めの就寝をすることにしました。

運命の1ヶ月後、少し長めの入浴と早めの就寝でお肌のボロボロは改善、恐る恐る体重計に乗ると、2キロダイエットに成功しました。PDCAサイクルをもって目標達成です。もうひとつの目標のイケメンゲットはご想像にお任せします。

お気楽な話の例でしたが、PDCAサイクルをもって策定した「データヘルス計画」を、健康医療情報に則って分析し、その結果に即した保健事業を展開することをデータヘルスでは目指します。

データヘルスの役割って何???

少し古い資料になりますが、厚生労働省の平成22年度都道府県別年齢調整死亡率(※)によると、生活習慣病の代表「糖尿病」の死亡率は、男性で12位、女性で10位となっており、また人口10万人に対して、全国平均で男性6.7人、女性3.3人でした。男性のほうが女性の倍の疾患になっています。

都道府県別の死亡率をみますと、男性の低い死亡率は、滋賀(3.5人)、奈良(4.1人)広島(4.7人)、神奈川(4.8人)、岐阜(4.9人)となり、高い死亡率は、青森(9.0人)、茨木(9.0人)、山梨(8.7人)、鳥取(8.6人)、香川(8.5人)となります。西日本が低く、東日本が高い結果となっています。

女性の低い死亡率は、熊本(2.2人)、佐賀(2.2人)、大分(2.3人)、奈良(2.5人)、京都(2.6人)となっています。高い死亡率は、徳島(5.2人)、香川(4.6人)、静岡(4.4人)、山口(4.2人)、茨城(4.2人)となっており、女性も西日本(九州と近畿)が低く、高い死亡率についても、西日本(中国・四国)となり、西日本で両極端な結果となっていますし、奈良は男女とも低く、香川は男女とも高い順位にあります。

また、同じ資料の「腎不全」の高順位死亡率に、「糖尿病」での高順位の、男性の青森(12.8人)、女性では香川(6.0人)、が入っており、すべて「糖尿病」に起因するとはかぎりませんが、「糖尿病」と「腎不全」何らかの関係性を読み取ることが出来ます。

このように日本の中でも、地域の立地条件・地域の食習慣・生活習慣などが大きな要因となって、このような結果が表れています。そのデータをもって要因を分析し、地域の特色・職域性などを考慮した、医療保険者独自の保健事業を展開していくことにより、被保険者の健康寿命の延伸が期待できるのがデータヘルスであり、今注目される要因であると考えられます。そしてそれこそが、データヘルスに与えられた役割だと考えております。

(※)厚生労働省 平成22年度都道府県別にみた主な死因別男女別年齢調整死亡率(人口10万人対して)

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