高齢者時代の担い手は高齢者
日本の超高齢化社会を救えるのはデータヘルスか? [第5回]
2017年2月

執筆者:特定非営利活動法人データ・ヘルスケア・イノベーション Japan
    代表理事
    岸本 佳子(きしもと よしこ)氏

高齢者って何歳から?

高齢者と呼ばれるようになるのは、いったい何歳からなのでしょう?

「高齢者の医療の確保に関する法律」では、65~74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と規定していることから、65歳を一つの区切りと考えている意見が多いようです。

今から30年位前に65歳と聞くと、すごくおじいさん・おばあさん、という風に感じていましたが、今の65歳はそんな風に見えない方のほうが多いですね。芸能人でいうと、どなたになるのでしょう?大杉漣さん、岡本麗さん、三浦友和さん、山下真司さんが現在65歳だそうです。皆さんお若いですね。

内閣府が、全国の60歳以上の男女6,000人に対して行った、「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」において、『自分が高齢者だと感じるか』という質問に対して、「はい」43.4%、「いいえ」51.3%となっています。年齢別でみる「はい」は、 『75~79歳』で 66.2%、 『80~84歳』で 78.7%、 『85歳以上』が 85.6%となっています。

『高齢者とは何歳以上か』という質問に対しては、『70歳以上』29.1%、『75歳以上』27.9%が高く、次いで、『80歳以上』18.4%、『65歳以上』6.4%などの順となっています。また、『年齢では判断できない』が10.4%となっています。

また、『支えられるべき高齢者とは何歳以上か』という質問に対して、『80歳以上』25.2%が最も高く、次いで、『75歳以上』23.4%、『70歳以上』18.1%、『85歳以上』5.3%、『65歳以上』4.7%などの順となっています」。

このような高齢者の意識調査や、日本人の平均寿命の延伸を考え、高齢者と位置付けられる年齢は、今後65歳から75歳となるのではないでしょうか。

「胴上げ型」から「騎馬戦型」そして「肩車型」へ

2025年団塊の世代がすべて75歳以上になる超高齢者社会になると、3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上とも言われています。1965年頃は、65歳以上の方1人に対して、20歳~64歳の方9.1人が「胴上げ型」で支えていました。しかし2005年になると、3.0人が「騎馬戦型」で支え、2015年は、2.1人で「騎馬戦型」をかろうじて保っています。さらに高齢化が進む2025年は推計によると、1.8人で支える「肩車型」になり、2050年には、1.2人の肩車で65歳1人を支える社会が到来するといわれています。

【出典「人口推計」(総務省統計局)。「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」
(出生中位・死亡中位)(社会保障・人口問題研究所)】

現在、35歳の人も30年後には65歳の高齢者となり、2050年には1.2人の肩車に乗ることになるのです。しかし、この現在働き盛りの35歳が多忙を理由に健診に行かず、気がつくと30年後にはメタボリックシンドロームが進行し、重篤な疾患を発病したとしたら、1.2人の肩車はその医療費に耐えられるのでしょうか?肩車を支える若年・壮年層の1.2人が高額な医療費で壊れてしまうでしょう。そうなれば日本の社会は、一体どうなってしまうのでしょう?日本社会も壊れてしまうでしょう。

超高齢化社会では、若年・壮年層だけが高齢者を支えるのではなく、元気な高齢者にも支えてもらう方法が一番ではないでしょうか。

四十、五十は鼻たれ小僧

出処は諸説あるようですが、渋沢栄一氏(1840年3月16日~1931年11月11日、享年91)の言葉として、「四十、五十は鼻たれ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ。」また、同時代の安田善次郎氏は(1838年11月25日~1921年9月28日、享年83)「五十、六十は鼻たれ小僧 男盛りは八、九十。」という言葉を残したようです。どちらも、明治時代に財界で活躍した方です。

明治時代の平均寿命でいうと、たぶん40~50歳代は亡くなっていてもおかしくない年齢で、現在の年齢にすると、80~90歳代にあたるでしょう。その年齢を鼻たれ小僧と言うならば、40~50歳以前はどうなるのでしょう。「二十、三十よちよち歩き」とでもいうのでしょうか?

この言葉の意味を、私なりに解釈してみると、高齢者だからと言って世間から離れた隠居生活をするのではなく、自分なりに社会とかかわりを持ちながら、天寿を全うするべきと言っているように思います。

高齢者を支える高齢者

前述の高齢者の意識調査の結果にもあるとおり、高齢者自身も高齢者が支えられる年齢は、75歳~80歳位を考えていて、若年・壮年層と一緒に高齢者を支える一員となることを考えているようです。

確かに、若い時と比べると体力は衰えていきます。目は見えにくくなり、耳も聞こえにくくなっていきます。腰も膝も悪くなるでしょう。しかしながら、高齢者の方には、今まで培ってきた、経験に伴う知恵があります。若者には体力ではかないませんが、経験に伴う知恵で若者と一緒に、高齢者を支えていく社会を作り出さないといけません。

若年・壮年層と一緒に高齢者を支える元気な高齢者を増やすこと、そのためには、疾病に罹患してから医療機関を受診するのではなく、データヘルスにおいて誰もが若年・壮年期から自らの健康状態を正確に認識し、個人の健診データ・健康情報等の健康維持にかかる、情報の利活用することで、年齢を重ねても健康でいられるよう、被保険者・保険者・企業が協働(コラボヘルス)することが、喫緊の課題となっています。

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