コミュニケーションの状態を見える化してとらえる
~協働する関係づくり

自治体職員のための組織風土改革《実践》講座 [第4回]
2014年4月

執筆者:株式会社スコラ・コンサルト 行政経営デザインラボ
    プロセスデザイナー/行政経営デザイナー
    元吉 由紀子(もとよし ゆきこ)氏

職員のあり方(4回目)

1月から3月には年度の締めくくりとして、Check(評価)からAction(改善)を生み出すために、(1)自分自身が志を持って仕事に臨むこと、(2)改善を可能とする能力向上を図ること、(3)客観的に自己評価する力を養っておくこと、について述べてきました。

今回は新年度がスタートしたので、仕事を進めていくうえで欠かせないパートナーとの関係づくりについて考えてみたいと思います。

仕事で関わる多様なパートナーの存在

役所では3~4年に一度部署を異動することが慣例になっています。ただし、人事異動の際に仕事内容だけを引き継いでいたとしたら、十分ではありません。その仕事に関わる人たちとの関係をいかに引き継ぐか、ということが課題になってきます。なぜなら、昨今の行政業務では、経費の削減、民力の活用などの観点から、立場・肩書の異なる多様な人と協働して担うことが増えてきたからです。

協働する相手は、役所の外だけでなく職場内においても、派遣職員や契約職員、定年後の再雇用職員など、勤務形態が異なる“同僚”が増えています。また、役所内では、自部署以外にいろんな部署と連携しながら仕事を進めることが増えてきました。

例えば、高齢化対策では、医療・福祉・防災・文化・教育など、複数の政策・部署で関わる必要がでてきます。そして、役所外でもサービスの対象者と関わるだけではなく、各種団体やNPO・企業や学校・近隣の自治体・関連する上位機関・委託業者など協働する相手は様々です。

これらパートナーとの関係づくりは、“ソーシャルキャピタル(社会関係資本)”と言われるように、仕事を進めていく重要な基礎を成すものです。この関係の良し悪しが仕事のアウトプットの質と速さを左右します。
そこで、業務を引き継いだときには、これらの関係にも目を向けて、担当者が替わることにより生じる関係性のデメリットを少なくし、より早く関係を再構築していくために努力する必要があるのです。

ついては、担当する仕事を通じてどんな人と関わりがあるのかをリストアップ(棚卸)し、さらにその関わりが見えるように“コラボレーションマップ”を描いてみましょう。いかに多くの人と関わりながら仕事をしているのか、つながりが見えてくると思います。

自分と関わるパートナーをマップに描いてみる

担当する業務によってパートナーは異なってきます。関わるパートナーが、同じ役所の職員だけなのか、一般の地域住民か、業界団体やNPOなどに所属する人か、マップに描くと、全体像が見えてきます。担当者によって人数が多い場合と、主に関わる人がほぼ限られている場合があります。
もし一箇所に集中している場合には、マップの中の該当箇所を線で囲んでおくと、特徴が顕わになってきます。

また、関わる人が何らかの組織や団体に所属しており、役割を担った立場や地位にある人の場合には、単純に一人として見るのではなく、その人が担っている役割に応じて関わる範囲がさらに広がる可能性がありますので、キーパーソンの印を付しておくとよいでしょう。

このマップは、今後の関係づくりに向けた方策を考えるもとになるものです。ここから関係性の質をとらえる視点を加えて見ていくことが大切です。

コミュニケーションの質をとらえる

人は機械ではありませんので、すべての人に一律、平等に関わりを持つことは不可能です。特に、人と人の関係性は、自分からの働きかけだけで成り立つものではなく、相手がどのように受けとめたのか、相手の反応を見て、理解する必要があります。

それには、相互に交わしているコミュニケーションの状態を以下の6つの段階に指標化して質をとらえてみると関係性がとらえやすくなります。

コミュニケーションの質

レベル1 知っている お互いの存在を知り、あいさつを交わす
レベル2 話をする 日常的な会話や情報交換をする
レベル3 理解する 相手の思いや考え、課題や悩みを理解している
レベル4 相談する 立場・肩書を越えて困っていることを相談し合う
レベル5 協力する 損得を越え、将来に向けて一緒に解決行動をとる
レベル6 新しい価値を創造する 未知の課題に対して知恵を出し合い、新しいやり方や価値を生み出す

相互の関係性は、仕事内容や進捗度合いによって異なってきます。すべてのパートナーに対して、いつも最高位のコミュニケーションレベルが求められているわけではありません。

いざというときのために居場所を知っておくだけでよい相手、日頃会議の席で顔を合わせて情報交換していればよい相手、一緒に苦労をともにする中で、きちんと腹を割って本音で話をする必要がある相手など、パートナーごとにどんな関係を築いておくとよいのかを見定めておくことが大事です。

これまでの担当者がどんな状態にあったのか、今の自分がどの状態にあるのか、今後どんなレベルに高めていく必要があるのか、質の違いをとらえながら具体的に方策を組み立てていくことになります。

特に地域の難題に向き合い、関わるパートナーの数が増え、求められるコミュニケーションレベルが高い場合には、1年間の労働時間には限りがありますので、関係を深めるための方策にどれぐらいの時間と労力をかければよいのかを見込んでおくことが重要です。そして、定期的に、関係性の変化を見ていくとよいでしょう。

スコラ・コンサルトでは、これらコミュニケーションレベルを協働するチーム全体で観るためのツールに進展させた「ワークコラボレーション・レビュー」を、Webで無料提供しています。協働するパートナーとともに関係性の状態を定量でとらえ、課題解決の進み具合とチームワークの状態を定期的に経過観察していけば、事業・業務プロセスの検証に役立てていただくことができるでしょう。

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