厚生労働省が「医療等分野における番号制度」の具体的な制度設計を公表!
公表までの経緯(振り返り)
医療等分野における番号制度(第1回)
2016年3月

執筆者:公認情報セキュリティ監査人
    プライバシーマーク主任審査員
    審査員研修主任講師
    小川 敏治(おがわ としはる)氏

公表までの経緯(振り返り)

厚生労働省は、「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」(以下、当該研究会)の報告書(以下、当該報告書)を2015年12月10日に公表しました。議論された内容や論点を整理し、具体的な制度設計を明らかにするなど、非常に興味深い内容になっています。
当コラムでは、当該報告書の主だった内容について、以下の4回シリーズでお届けします。

  • 第1回目 公表までの経緯(振り返り)
  • 第2回目 医療保険のオンライン資格確認の仕組み
  • 第3回目 医療等分野の情報連携に用いる識別子(ID)の体系
  • 第4回目 医療等分野の識別子(ID)の普及に向けた取組

第1回目は、序論として、当該報告書が公表されるまでの経緯について、お話しします。まず経緯を振り返ることによって、当該報告書の内容をより理解しやすくなるからです。

当該報告書の位置付け

当該報告書は、厚生労働省「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書(2012年9月18日)」の「医療等分野でやりとりされる情報は、機微性が高い情報を含むので、所得情報などと安易に紐づけされない安全かつ効率的な仕組みが必要である。マイナンバーとは異なる医療等分野でのみ使える番号(医療等ID(仮称))や安全で分散的な情報連携の基盤を設ける必要がある。」に基づいて、2014年5月30日に第1回目を開催し、計10回の研究会を経て、医療等分野(健康・医療・介護分野)の情報連携に用いる識別子(ID)の具体的な制度設計等について、検討結果をとりまとめたものです。

当該研究会以外の動き

当該研究会の検討過程で、「中間まとめ」(2014年12月10日)を公表すると共に、この「中間まとめ」を受けて、マイナンバー利用範囲の見直しや医療保険者の保険料徴収等の事務の共同委託等内容を含む、番号法等の改正案と国民健康保険法等の改正案を2015年通常国会に提出し成立しました。
また、以下の事項を明記した「日本再興戦略改訂2015」を2015年6月30日に閣議決定しました。

  1. 公的個人認証や個人番号カードなどマイナンバー制度のインフラを活用して、医療等分野における番号制度を導入することとし、これを基盤として、医療等分野の情報連携を強力に推進する。具体的にはまず、2017年7月以降早期に医療保険のオンライン資格確認システムを整備し、医療機関の窓口において個人番号カードを健康保険証として活用することを可能とし、医療等分野の情報連携の共通基盤を構築する。
  2. 地域の医療情報連携や研究開発の促進、医療の質の向上に向け、医療等分野における番号の具体的制度設計や、固有の番号が付された個人情報取扱いルールについて検討を行い、2015年末までに一定の結論を得て、2018年度からオンライン資格確認の基盤も活用して医療等分野における番号の段階的運用を開始し、2020年までに本格運用を目指す。

一方、日本医師会は、「医療分野等ID導入に関する検討委員会」の「中間とりまとめ」を2015年7月15日に公表しました。注目すべき点は以下の2点です。

  1. 医療等IDの考え方として、「一人に対して目的別に複数のIDを付与できる仕組み」、「目的別のID間で情報を突合できる仕組み」、「本人が情報にアクセス可能な仕組み」、「医療等IDに関しての法整備」について、それぞれ検討すべきとしている。
  2. 医療等IDの記載・格納媒体について「現行の保険証に医療等IDを記載・格納する方法」と、「マイナンバーカードの公的個人認証機能を活用したオンライン保険資格確認の方法」を併記すると共に、移行期における医療機関窓口での混乱を最小限に抑えるための措置や、国民に対する啓発が必要であることにも言及している。

因みに、日本医師会「医療分野等ID導入に関する検討委員会」の委員長は、東京大学大学院医学系研究科特任准教授 山本隆一氏であり、厚生労働省の当該研究会の座長代理もされています。

まとめ

厚生労働省は既に公表した「中間まとめ」までの検討の成果に加えて、中間まとめ後の法整備(番号法等や国民健康保険法等の改正)や閣議決定(日本再興戦略改訂2015)及び日本医師会が公表した「中間とりまとめ」等を踏まえ、検討の結果をとりまとめたものが当該報告書なのです。

以上、当該報告書が公表されるまでの経緯について、大まかな流れをお話ししました。
次回は、当該報告書に基づいて、医療機関に関係が深い「医療保険のオンライン資格確認の仕組み」についてお話ししますので、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

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