平成30年度(2018年)診療報酬改定!入院基本料全般について
平成30年度診療報酬改定(第2回)
2018年4月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

1. 平成30年度診療報酬改定入院基本料全般について

2月7日に平成30年度診療報酬改定答申書が出され具体的な改定内容も明らかになりました。この答申書をもとに最終的な決定がなされ、コラムが出るころには平成30年度診療報酬改定が施行されているころだと思われます。

今回の診療報酬改定では昨年12月に提示された「平成30年度診療報酬改定の基本方針」にあった一文「人口構造や疾病構造の変化に伴い、入院医療ニーズも多様化する中、地域において必要な入院医療が効果的・効率的に提供されるよう、医療機能や患者の状態に応じた評価を行い、医療機能の文化・強化、連携を推進(平成30年度診療報酬改定の基本方針より一部抜粋)」という方針がまさに入院基本料再編の基になった考えだったと改めて思います。とくに「人口構造や疾病構造の変化、医療ニーズの多様化、効果的・効率的な医療、適正な評価」これがキーワードとなり今回の入院基本料細分化といった再編になったと筆者は感じています。

さて、そのような情報にいち早く反応した病院は2月7日に出された答申書を基に病院機能や地域性などを考慮した対応が検討され、すでに方針を決めるために動き出している病院も少なくないと思われます。

前回は急性期一般入院料について書かせていただきました。今回はその他の入院基本料も含めた全体像の確認をしたいと思います。

2. 細分化された入院基本料

前項でも触れていますが、今回の入院医療費再編に関しては診療報酬改定の基本方針より、入院料の段階的な細分化というのが特徴となりました。細分化するにあたっては基本方針やこれまで様々なデータが検討されました。その中でも以下キーワードがポイントとなっています。

  1. 地域包括ケアシステムの推進をにらんだ連携
  2. 救急患者の状態に応じた病床への受け入れに関する事項
  3. 重症度・看護必要度、リハビリ等の診療実績

1と2に関して考えると、急性期~長期療養病棟の患者受入れにおいて「ポストアキュート・サブアキュート」といった患者の適正な病院への受入れ推進、治療後の適正な医療・介護等への誘導、連携推進を目的としています。

3に関しては全国の病院データ(急性期~長期療養病棟)を基にそれぞれ入院料を算定している病棟実績を確認した際、実績値にばらつきがあるということが確認されました。今回の改定では実績のより高い病院を評価して報酬面で評価をするという観点から入院患者の重傷者割合や診療実績を考慮して、実績要件の数字として検討され細分化の一要素となりました。

平成30年度診療報酬改定では今までの入院料の設定要素となっていた職員等の体制、重傷者患者割合、サービス提供内容に加えて診療実績という要素を取り込んだ大きな再編となっています。

本コラムの末尾に、今回再編となった5つの入院基本料の表を掲載しますので、参考にご覧ください。

3. 2025年問題へ向けて

今回の改定で2025年に向けたステップアップとして、各病院でどのような医療提供がされているかというハード面の要素だけではなく、実際にその医療提供でどのような患者を受入れ治療しているか。患者へどのような治療効果や改善がもたされているか、という実績を要素に加えた機能分化はさらに推進するのではないかと考えます。

またそれに合わせて患者に携わるスタッフ間の連携や、施設間の情報連携といったところも今後重要な評価要素となると考えます。

今回の改定では実績の高い病棟がそれぞれの入院基本料のより高い算定を受けることができる、といった再編に関しては個人的に評価できるものではないかと思います。

2025年問題に向けては、「いびつな構造」となっている病院機能配置を適正配置にするための「再編・改定」がより推進されると考えます。また今回の改定で出された実績部分の評価を、現場実情評価へさらに近づける評価系へと検討していくと考えます。

4. 最後に

診療報酬改定は2年に1回訪れる病院にとってはビックイベントです。今回の改定では実績部分を考慮した大きな改定となりました。

中小病院経営は厳しい状況と言われています。また地域の医療提供場所として中小病院が今後の地域医療には重要な位置を持つと考えます。診療報酬改定も大切ですが常日頃から以下に注力して、確実に実行することで地域医療は良い方向へ向くと考えます。

  1. 地域の医療提供状況、疾患動向などに注視すること
  2. 病院の医療提供状況、医療資源状況
  3. 病院の方向性
  4. 病院機能に合わせた適正な職員配置
  5. 病院機能や地域医療に適正な人材確保

内容的にあたり前と思う方も多くいらっしゃると思いますが、これら1~5要件を総合的に判断し確実に実行することが難しく重要だと考えます。

また今回の診療報酬改定で算定要件をクリアしている病院においては、入院患者の動向に注視すること、今後継続的に算定条件をクリアするための「データ確認・検証」など多くの情報を総合的になおかつ継続的に判断する必要が出てくると思われます。

今回は平成30年度診療報酬改定の入院基本料という広義なお話をさせていただきました。次回はそれぞれの入院基本料についてのお話をさせていただきたいと考えております。

このコラムで何か少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

5つの入院基本料の再編・統合イメージ
(出典:2018年2月7日 中央社会保険医療協議会総-1参考資料)

1.急性期一般病棟入院基本料 急性期一般病棟入院基本料 2.一般病棟入院基本料 一般病棟入院基本料 3.回復期リハビリテーション病院入院料 回復期リハビリテーション病院入院料
4.地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料 5.療養病棟入院基本料 療養病棟入院基本料

(画像をクリックすると拡大表示します)

上へ戻る