経営に役立つコラム

「マイナンバー制度」指南書 ~中堅企業が本当にすべきこと~

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第4回
「マイナンバー制度」ビジネスチャンス
への可能性は?

野村総合研究所 未来創発センター制度戦略研究室長
梅屋 真一郎

マイナンバー制度は、制度開始時は社会保障、税、災害対策という行政領域でのみ利用が認められている。このため、民間企業が勝手に独自分野で利用することはできない。今後、利用領域の拡大は進むと期待されるが、まずは公益性の高い分野が中心となり、例えばマーケティング的な観点での利用は相当先になると考えられる。

それでは、中堅企業はマイナンバー制度にどの様に取り組むべきと考えられるだろうか。

まず、取り組むべきこととしては、「マイナンバー制度そのものへの対応に関しては制度対応と割り切り、コストとリスクを最小限に抑えることだけに注力すべき」であろう。

マイナンバー制度対応に伴い、各民間企業それぞれに制度対応の事務作業が発生する。しかも、これらの事務を行う際には、高いレベルの安全管理措置が必要となる。しかしながら、マイナンバー対応は企業の本来の業務との関連性が低く、例えば対応したからといって本業の売り上げが伸びる訳では必ずしもない。さらに安全管理措置への対応のための機器の整備なども必要になる。

その様なことを鑑みれば、例えば安全管理措置や事務処理作業の対応をシステムベンダーやアウトソーシング会社などの外部事業者に委託することも一つの手段であるといえる。

対象となる業務は、関連システムの運用から事務処理、さらには書類やデータの保管まで多岐に渡る。これらの業務を自社で全て対応することは、特に中堅企業にとっては負担が大きいと思われる。外部を活用することで「時間と安心を買う」ことも選択肢の一つとして検討すべきである。ただし、当然外部リソースの利用に際してはコストも発生する。自社対応と外部活用に関して、コストやリスクを比較した上で、検討すべきことは言うまでもないだろう。

一方、「個人番号カードの活用」に関しては中堅企業にとっても非常に大きなビジネスチャンスにつながる可能性があるので、どの様に活用すべきか積極的に考えるべきであろう。個人番号カードはマイナンバー制度開始に伴い発行されるICカードである。従来の住基カードと同様にカード取得には自治体の窓口で申請が必要であるが、現在健康保険証との統合が検討されているなど利便性向上も見込まれる。仮に健康保険証との統合が実現した場合は、制度開始後、数年以内にほとんどの国民が個人番号カードを保有することになると期待される。

既に述べたように、個人番号カードはICカードであり、ICカード領域の民間での利活用への開放も行われると期待される。これにより、原則全国民が持つICカードを利活用した新たなビジネス提案が可能となる。このことは、ICT分野に限らずマーケティングなど様々な分野でのビジネスチャンスが生まれる可能性があることを示している。

個人番号カードのメリット

(画像をクリックすると拡大表示します)

最初で述べたように、マイナンバー制度そのものはまずは行政分野が中心であり、直接的には民間企業による事業機会は必ずしも多くない。まずは制度対応をしっかりと行い、今後の展開をにらみながら事業機会を捉えていくことは全ての企業に等しく可能な機会である。

是非新たな創意工夫をお考えいただきたい。

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野村総合研究所 未来創発センター制度戦略研究室長
梅屋 真一郎(うめや・しんいちろう)

東京大学卒業後、野村総合研究所入社。システムサイエンス部配属の後、NRIアメリカ(ニューヨーク)、野村ローゼンバーグ(サンフランシスコ)出向。帰国後、金融関連本部にて活動。番号制度に関しては、企業実務の観点からの影響度分析などに従事し、関係省庁や関連団体などとの共同検討を実施。新戦略推進専門調査会マイナンバー等分科会構成員。

(監修:日経BPコンサルティング)