イノベーションや商品力強化の必要性は、多くの企業で認識されているでしょう。しかし、いざ実行となると、「新規事業開発は積極的に行いたいが、天才的なひらめきをもつ従業員もいないし、なかなか行動に移せない」というのが現実の姿ではないでしょうか。
日常業務の合間に時間を確保することや、アイディアを事業化する決断が難しいなど、実現には様々な壁が立ちはだかっています。
しかし、心配することはありません。「普通の会社」が天才や偶然に頼らずに、新しいビジネスを企画し事業化する「コツ」があるのです。
イノベーション・商品力強化はアイディアを出すことから始まります。しかし「大変すばらしい、革新的」と言われるレベルのものを最初から出そうとすればするほど、アイディアは浮かびにくくなるものです。
まずは質より量に力点を置き、思い浮かぶことを次々と言葉にしていきます。たくさんのアイディアが出てくれば、その中から取捨選択したり組み合わせたりして事業の種を見い出すことができるはずです。
発想を豊かにするためには漫然と考えているのではなく、顧客の声を聞いたり、技術動向を調べたりといった情報収集が欠かせません。同時に、社内でアイディア募集をしたり、自由に意見を出せる機会を設けるなど場づくりも進めていきます。
顧客アンケートの集計・分析やコンタクトセンターに寄せられた顧客の声の分析においては、「ビジネスインテリジェンス(BI)」「テキストマイニング」などのITツールが役立ちます。また、集めたアイディアを共有し有効活用するには「ナレッジマネジメント」システムが有効です。
集まったアイディアを取捨選択し、事業につながるコンセプト化へと進めていきます。
この際に、皆が協力しながら進めるスタイルを取りましょう。知恵を集めコラボレーションによって発想を深化させれば、よりよい結果を導けるはずです。部門や空間、時間を超えて意見を交わせる機会を用意します。
アイディアを形にする過程では、各種技法も用いるとよいでしょう(下図参照)。例えばオズボーン氏が開発した「チェックリスト9か条」は、ある事象を「縮小:より小さくできるか、短くできるか、軽くできるか等」「再配列:成分、部品、パターン、位置などを変えられないか等」といった9つの観点から見直す技法で、発想を広げる後押しをします。
議論の機会を増やしコラボレーションを活発にするには、営業所など遠隔地にいる従業員とも気軽にコミュニケーションが取れるようにしたいものです。Web会議・テレビ会議システムを用いて企画部門の担当者が離れた場所にある工場の製造担当者と密にミーティングを行い、商品企画に役立てている会社もあります。
新事業のコンセプトが固まってきたら、いち早く市場へ試験投入し、市場で試すことが何よりの判断材料になります。
イノベーション・商品力強化の推進にあたっては適宜評価を行っていきますが、プロセスの段階により評価ポイントは「出来る化」「勝てる化」「儲かる化」の3つに分かれます。
アイディアをたくさん集める段階では、事業の市場性、実現可能性など「出来る化」に集中して評価します。第二ステップのコンセプト化に移ったら、「出来る化」に加え、差異化が可能かニーズが明確かなど「勝てる化」を重視します。市場に試験投入する段階にきたら、いよいよ収益性やリスクを検討する「儲かる化」の確認です。事業は生き物ですので、収益性については継続的にチェックし、事業継続・撤退、複数の事業がある場合は投資の優先順位付けや最適配分を行います。
事業の評価を素早く行うためにはプロセスマネジメントが必要となります。数値化して判断する部分、特に事業採算に関わる部分では、管理会計の機能をもったERPやBIツールなどのITが活躍します。
イノベーションを実現できる会社への取り組みには、仕組みづくりに加え、もう一つ欠かせない要素があります。それは、「組織文化」や「風土」です。「イノベーティブな組織文化や風土」はどのように作ればよいでしょうか。
企業において人を動かす原動力になるのは理念・ビジョンです。一人ひとりが活発であっても進む方向がバラバラではまとまった力にならず、互いに打ち消しあう事態にもなりかねません。経営者が企業理念・ビジョンを明確にし、組織のあるべき姿を折に触れ語り続けていくことが、イノベーションの土台になるのです。
これらの点に留意して、イノベーション・商品力強化を推進する際、各段階でITが活躍します。下図のように大きく3つの分野があります。
新事業の創造は従業員の「知」をいかに形にするかが勝負です。知識や知恵を集め共有し活用・実践できる形にする「ナレッジマネジメント」のシステムは、特に利用したいものです。
ナレッジマネジメントの仕組みは新事業の創出のみならず、生産方式の改革、新しい販売手法の開発など、日常業務の改革やイノベーションにも役立ちます。ナレッジマネジメントを通じて社内の様々な領域にイノベーションの芽を作り出すことができるでしょう。
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