働き方改革

働き方改革(話題のビジネストレンド)

オフィス改革推進の取り組み

働き方改革の一環としてテレワーク定着の時代に即したオフィス改革を実行

テレワーク定着を契機に分散したオフィスを集約

NECネクサソリューションズでは2018年より「働き方検討タスクフォース」、2019年4月より「働き方改革委員会」を立ち上げ、リモート化や勤務制度、業務プロセスの見直しといった働き方改革に取り組んできました。その取り組みの中で社員の反響がとくに大きかったものがオフィス改革です。なかでも東京・三田の本社でのオフィス改革にはかなりのコストと労力を投じています。

本社は、地上26階建賃貸オフィスビルに入居しており、低層階(4階・5階・8階・10階)、中層階(12階・16階・18階)、高層階(19階・22階)に分散。各階層を超えて移動する際はエレベーターの乗り換えが必要で時間がかかるデメリットがありました。このように複雑なフロア構成になった理由は、2001年の創業時に複数のNECグループ企業が統合して設立された経緯にあります。以降も組織改革が進むたびに、その時点で空いていたフロアに入居せざるを得ず、分散フロアをなかなか集約できないジレンマがありました。そこに起きたのが新型コロナウイルスの感染拡大です。

「100人いれば100席必要」という時代は終わった


執行役員
津田 明宏

「当社には以前からフロア変更の青写真がありました」と語るのは、執行役員の津田明宏です。「しかし、感染拡大が改革を加速させた要因であることは間違いありません。生産性や働きやすさなどエンゲージメントの向上が目的だったフロア変更に、社員の安全確保という要素が加わり、一気に改革が進みました」

2020年の緊急事態宣言中の社員出社率は約30~40%。以降もテレワークが推進され、50~60%程度の出社率が続いています。「それならば以前の7割の席を用意すれば充足できるはず、と私たちは考えました。そこでとくに出社率の低い営業部門と営業支援部門をフリーアドレス化し、フロア面積を圧縮することで別々の階層だった部門を同じフロアに集約する計画を立案しました」と、以前より働き方改革に取り組んできた人事総務本部長の藤田典広は説明します。

フロア集約の直接的なきっかけとなったのは、2020年7月にビルの低層階フロアに空き室が出るという情報を入手したことでした。そこで、以前から業務内容が近いにも関わらずフロアが分かれていた営業支援部門を低層階に集約化。これにより中層階の大部分を解約することができました。さらに営業部門をフリーアドレス化することで、フロア面積を約3割削減。分散していた営業部門を低層階に集めました。こうした施策により、社内導線を短縮。部門間コラボレーションが活発化し、営業部門の一体感が高まったといいます。

「賃貸オフィスの解約は6カ月前までに不動産会社に通知する必要があるため、決定にはスピードを要しました。フロアの移動には当然ながら各部門の協力が必要ですので、計画策定から意思決定、不動産会社への解約通知までおよそ2カ月という早業で実行しました」(津田)

圧縮したコストはリニューアルに再投資


人事総務本部長
藤田 典広

オフィスの引っ越しは社員にとって大変手間がかかる作業。ましてや「面積が狭くなる」と聞けば反発が予想されます。当然説得が必要ですが、その際に力を発揮したのが、「圧縮したコストをさらなる設備リニューアルに充当する」という明確な約束でした。

「“コストを圧縮したいから引っ越ししろ”など経営的な改善面を強調すると、社員は納得しないものです。それよりも圧縮した分のコストを新しい什器や照明設備などの購入に充てるオフィス環境改善策を全面的に押し出すことが、上手くいく秘訣かもしれません」(藤田)

什器や設備は目に見えて変化がわかり、社員満足度が高まりやすいもの。そこに焦点を当てることで、短期間での荷造り・引っ越し・紙資料の処分にも社員の納得感を獲得することができたといいます。

さらに、フリーアドレス化する部門には必ず個人ロッカーを用意。その上で使えるフロア面積を伝え、フロアの使い方や片付け方は部門や社員の自主性に任せています。「当社は日本型企業ですので、いきなり全社フリーアドレス化に打って出ると複雑骨折する可能性もあります(笑)。あくまでも慎重に、外出することが多い営業部門からスタートさせました」(津田)「フリーアドレス化は場を用意して、あとは社員の自主性に任せるのがポイント。紙資料を持ちたがる人もいますし、お客様の大切な情報を取り扱うSE職もいますので、配慮が必要です。会社がルールを決めようとするのは、かえってよくありません」(藤田)

また、リモート商談やリモート面談が増えるにつれ、「社内に遮音性の高い個人スペースが欲しい」という要望が社員から出るようになり、これも設営の準備に入っています。

論点となったのが、50人程度が入れる集合研修室を残すかどうか。以前から稼働率の課題がありましたが、オンライン研修が増えている時代に果たして必要なのか、議論した末に撤廃することを決定しました。

「“残してほしい”という声もありましたが、撤廃に踏み切りました。もう後戻りはできません。どうしても必要なときは外部の研修室を借りればいい、と考えています」(藤田)

オフィスは“働く場”から“コラボレーションする場”へ

オフィス改革は現在も進行しており、2020年末時点での計画では削減できるオフィス面積は564㎡。賃料が高額な土地柄を考慮すると、かなりのコスト削減につながります。

一方で、サテライトオフィスの需要が高まり、全国約100拠点を持つ大手不動産会社系シェアオフィスと契約。今後も契約企業を増やす予定です。

また、2020年7月に社内にオープンさせた協創スペース「Switch.」では、日程を合わせて出社した社員同士がミーティングをする姿も見られます。

「今はオフィスの意味と目的が変わりつつある時代です」と、津田は言葉に力を込めます。「以前はオフィスとは“働く場”でした。しかし、これからは“コラボレーションする場”“アイデアを出し合う場”“集まって意思決定する場”に変化していきます。社員は一体何のためにオフィスに出社するのか。例えば、オフィスに行けば個室がある、大型のディスプレイがある、ハイスペックなPCが使える…など、社員がオフィスに求める役割がよりクリエイティブに変わりつつあるのです。ならば、そのニーズに応じて企業は投資すればよいのではないでしょうか」

藤田もまた、これからオフィス改革に臨む企業にエールを送ります。

「オフィス改革は確かに什器や設備や工事にコストがかかります。しかし、結果として賃料が下がり、生産性や働きやすさが向上すれば、将来的には投資コストを超えたメリットがあるはずです。私たちは以前から“オフィス改革は働き方改革の中心”と考えていましたが、今もその方針にブレはありません」