DXに求められるネットワーク基盤整備
近年では企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されており、それに伴ってIT環境を支えるインフラ設備も変化に応じた対応が求められています。では、デジタル化・クラウド化にあたって、企業のネットワーク環境は今後どのように整備していかなければならないのでしょうか。この記事では、DXに求められるネットワーク基盤が取り組むべき内容について、わかりやすく解説します。
DX時代に求められるネットワーク
ここでは、DX時代に求められるネットワークとはどのようなものなのか解説します。
DXは今求められており、企業の生き残りをかけた必要な取り組み
企業の成長や競争力強化のため、新しいデジタル技術の活用によって、新たなビジネスモデルを確立するDX(デジタル・トランスフォーメーション)を採用する企業が増えています。企業の既存システムは、事業部門ごとに度々構築されてきました。その結果、各システムを連携させたデータ活用ができない点や、過剰にカスタマイズされている点など、システムの複雑化やブラックボックス化されることで属人化してしまうという課題が挙がっています。
経済産業省は、この課題を改善できない場合、2025年以降で「最大12兆円/年」の経済損失が生じる可能性(2025年の壁)があるとしています。そこで、「DXは企業の生き残りをかけた重要な取り組みである」と注目されるようになったのです。

日本企業特有のあるべき姿
日本企業特有の、システムのブラックボックス状態を解消できない場合、以下のような状態になることが懸念されます。
- データを活用しきれなくDXを実現できない
- 維持管理費が高騰し技術的負債が増大する
- 保守運用担当者の不足でセキュリティリスクが高まる
DXを本格的に展開するためには、市場の変化に柔軟に対応可能なITシステムとすべく、レガシーシステムの刷新が必要です。
レガシーシステムから脱却しきれない日本企業
以下のグラフからもわかるように、86.5%の企業がレガシーシステムを抱えています。特に金融業においては、「すでにレガシーシステムはない」と答えた企業は0%で、DXが遅れていることが顕著でした。

レガシーとクラウドの共存をどのように行うか?
コロナ禍になったことで日本社会のデジタル化の遅れが浮き彫りとなり、特に金融業界ではデジタル化がほとんど進んでいない状況にあることがわかりました。例えば、銀行の窓口では、50歳代以上を中心としたユーザーは対面チャネルを好む傾向がいまだ多く、押印をはじめとしたデジタル化に向かない文化も多く残っています。
既存システムの維持や運用は、ITにかかるコスト全体の約70%を占めていることが現状で、デジタル化をさらに阻害している要因です。このような背景から、DXへの道はITモダナイゼーションなくしては進まないのです。モダナイゼーションとは、古くなったハードウェアやソフトウェアを、新しい製品や設計に置き換えることを指します。レガシーシステムをどのように活かして、新しいプロセスにどう組み込むのか、日本企業がDXを目指す上では、モダナイゼーションが最初に取り組むべき課題となっています。
ハイブリッドクラウドに最適なネットワーク基盤
続いて、ハイブリッドクラウドに最適なネットワーク基盤について紹介します。
ハイブリッドクラウドとは
ハイブリッドクラウドとは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスなどの複数のサービスを組み合わせたIT環境を意味します。タイプの異なるサーバーを組み合わせることで、それぞれのメリットを活かせることが特徴です。
例えば、プライベートクラウドは、セキュリティやカスタマイズ性に優れていますが、最終的なコスト負担は大きくなってしまいます。そこで、パブリッククラウドを組み合わせて利用すれば、コスト負担を軽減できるようになるのです。異なるクラウドのサービスを組み合わせ、互いの弱みをカバーし合うのがハイブリッドクラウドの特徴と言えます。

ハイブリッド対応ネットワークの特長
ハイブリッドに対応したネットワークの特長として、主に以下のことが実現できます。
IPv6対応 NEC SD-WAN活用(Clovernet)

ハイブリッド対応ネットワークにすることで、IPv6対応 NEC SD-WAN(Clovernet)が活用できます。Clovernetは、従来の通信方式であるIPv4のさまざまな課題を解消できるネットワークサービスです。
IPv4の輻輳対策
最適なネットワークを組み合わせることで、IPv4における輻輳(ふくそう)対策につながります。輻輳とは、通信の世界において、インターネット回線などでアクセスが集中することを指します。通信遅延が発生したことで回線がつながりにくくなり、通信システムがダウンするケースもあります。具体的な要因としては、高解像度の動画サービスやクラウドサービスの普及によって、大容量のデータをやりとりすることが日常化していることです。また、NTTフレッツ網内のネットワーク終端装置に、トラフィックが集中していることも挙げられます。こういった場合、IPv6と組み合わせることで、これらの問題を解決できます。IPv6とは次世代のインターネット接続方式で、IPv4で発生しやすい輻輳が緩和され、通信品質の向上を図れます。
低遅延ローカルブレイクアウト
複数拠点を持つ企業において、本社やデータセンターなどのセンター拠点と支店間を閉域網で接続し、インターネットのゲートウェイをセンターに集約するネットワーク構成が一般的です。しかし、この構成では一箇所にアクセスが集中するので、ネットワークの遅延が発生しやすい問題があります。ローカルブレイクアウトは各拠点から直接インターネットへアクセスするため、ボトルネックとなりにくく、ネットワークの遅延を低減させられるのです。
SASE(cato)の活用
ハイブリッドなネットワーク構成とすることで、SASE(cato)が活用できるようになります。SASE(cato)とは、本社や支店、海外拠点、テレワーク環境やデータセンター、またクラウドサービスなど、すべての環境から安全に接続できるクラウド型のネットワークセキュリティサービスです。
企業のDXやクラウドファーストが加速する中で、これまでのセキュリティ機器やネットワーク機器では通信遅延やサイバー攻撃などといった問題が新たに発生しています。そこで、業務の生産性や安全性の向上を目的としたSASE(cato)への移行が注目されるようになったのです。

SASE(cato)を採用することで、遠隔地へ新しい拠点を展開するコストや手間が削減されます。また、従業員がどこからでもシステムへ安全にアクセスできるようになります。
クラウド型Firewall
クラウド型Firewallとは、次世代Firewallの機能をクラウド上で提供するFWaaS(Firewall as a service)です。SASE(cato)を活用する際、どこからでもユーザーが接続できるようにするため、クラウドへのアクセスのセキュリティを保護します。
Clovernet×SASE連携によるコスト抑制
Clovernet×SASEの連携によって、コストを抑制することができます。SASEはインターネット接続における課題をほとんど解決できますが、その分コストは高いです。しかしClovernetと組み合わせることで、SASEを通さなくてよい通信を迂回させたり、高速で安価な回線を有効活用したりできるため、コストを抑えることが可能になります。

DXを始めるなら最適なネットワーク基盤を構築しよう
近年、積極的にDXを推進している企業は増えています。労働人口が減少している昨今では、新しいデジタル技術を取り入れることで業務効率化を図る企業は多いです。いつでもどこでも働ける環境を構築するためには、時代の変化に合わせたクラウドサービスやネットワークサービスを選定して利用することが求められます。つまり、従業員が快適に業務を進められる環境を整え、最適なネットワーク基盤を早期に構築することが重要です。