

DXについてどのように推進していくのか、悩まれているお客様の声を多くお聞きます。
その解決策の一つとして、経済産業省が策定した「デジタルガバナンス・コード」を活用することをお勧めしています。
また、DX準備の整った企業が認定されることで金融や人材育成面での優遇が受けられる「DX認定制度」があります。
なぜこれらの活用がお勧めなのか、またどのようなDX推進へのメリットがあるのか。これらの内容についてこの後考えてみたいと思います。
住中 真史(すみなか まさし)
NECネクサソリューションズ株式会社
コンサルティング統括部
エクゼクティブコンサルタント
(兼)ガバナンス・テクノロジーグループ部長
製造装置業の業種営業、ERPの企画・販売促進を経て、2004年よりコンサルティング業務に従事。
データ活用(BI/AI)を中心として、業種や業態を問わないIT中計、システム企画、業務改善のコンサルテーションを担当。
ITコーディネータ/米国PMI認定PMP/JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1
一般社団法人 日本TOC推進協議会 理事

1.DX推進の指針、デジタルガバナンス・コードについて
「デジタルガバナンス・コード」は、企業のDX推進を支援するために、デジタル技術による社会変革を考慮したビジョンとDX戦略を経営者がどう策定すべきかをまとめたものです。
2020年11月に初版(1.0)が公表され、2024年の9月に第三版(3.0)に改訂されています。
DXに求められる3つの視点として下記が挙げられています。
- 1経営ビジョンとDX戦略の連動:
経営ビジョンに基づいたDX戦略を検討、DX戦略が経営ビジョンの実現を支えるように策定・実行する。
- 2As is - To be ギャップの定量把握・見直し:
経営ビジョン実現を阻害するデジタル面の課題を特定し、現状(As Is)と目指すべき姿(To be)とのギャップを定量的に把握し、解決策を検討・実施する。そして、状況をモニタリングしDX戦略を継続的に見直す。
- 3企業文化への定着:
企業文化がDX戦略の実行を通じて形成されるものであると認識し、望ましい企業文化を明確にすること
さらに、DXに求められる5つの柱として下記が挙げられ、具体的な取り組みが示されています。
- 1経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
- 2DX戦略の策定
- 3DX戦略の推進
- 3-1.組織づくり
- 3-2.デジタル人材の育成・確保
- 3-3.ITシステム・サイバーセキュリティ
- 4成果指標の設定・DX戦略の見直し
- 5ステークホルダーとの対話
経営者はDX戦略を中長期的な視点で捉え、自ら推進することが求められます。
特に、2.0から3.0の改訂では、データの活用やサイバーセキュリティ、人材育成の重要性が強調されています。これらはDX推進においてますます重要となっています。
「デジタルガバナンス・コード3.0」の詳細については経済産業省のウェブサイトから確認できます(注1)
2.DX認定制度の概要とそのメリット
「デジタルガバナンス・コード」に基づくDX推進の先に、「DX認定制度」の取得もお勧めしています。
「DX認定制度」は「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度です。
"DX推進の準備が整っている"というのがポイントで、すでにDXが実施されていることを評価するのではなく、今後DXに取り組む準備が出来ている事を評価する制度です。
制度の対象は法人だけではなく、公益法人等も対象となります。
2025年4月時点で1,400社以上の事業者が認定されています。大企業だけではなく、中小企業の認定事業者も増えてきている状況です。
ちなみに弊社もDX認定を受けています。
認定のステップは認定申請書を提出し、経済産業省に認定してもらう仕組みです。
「DX認定制度」の申請方法などについての詳細は経済産業省のウェブサイトを確認ください。(注2)
DX認定取得のメリットは下記の3点です(注3)
- 1DXに積極的に取り組んでいることをステークホルダーにアピールできる
「自社がDX取り組んでいる企業」として認定事業者一覧に公表されるとともに、PRとしてログマークの使用も可能となります。
採用活動時や取引先企業に対して取り組みをアピールすることができます。
- 2金融・人材育成等の施策において、優遇や助成等の要件として活用できる
資金調達時の金利の優遇や、人材育成費用の助成を受けることができます。
- 3DX銘柄及びDXセレクションへの応募が可能
「DX銘柄」とは、東京証券取引所に上場している企業のうち、DX推進に向け優れた取り組みを実践している企業を選出する制度です。
経済産業省のウェブサイトには詳細と選定企業の取組事例も公開されています(注4)
「DXセレクション」は中堅・中小企業等のモデルケースとなるような優良事例を選定する制度です。
経済産業省のウェブサイトには詳細と選定企業の取組事例も公開されています(注5)
これらに選定されることで、DX推進企業としてのアピールが強まり、ステークホルダーからの評価が向上し、社内のDX推進意識の醸成が期待できます。
3.自社と同業他社のDX推進の比較
「DX認定制度」を最大限有効活用するために、自社と同業他社の取り組みを比較することをお勧めします。これにより、自社の課題や新たな取り組みのヒントを得ることができます。
実はDX認定に必要な申請書はすべて公開されています。
DX推進ポータルから所在地や従業員数、業種を絞り込んで、DX認定企業の確認と申請書のダウンロードが可能です。(注6)
申請書内にはDXへの取り組み、達成目標や、その詳細をインターネットに公開しているURLが記載されています。
自社と類似の企業があれば、その取り組みが非常に参考になるのではないでしょうか。
また、上記の「DX銘柄」や「DXセレクション」に選ばれた企業の取り組みも大いに参考になります。
4.まとめ
DXの推進については、様々な考え方やアプローチ方法があります。
その中で「デジタルガバナンス・コード」「DX認定制度」は経済産業省が策定しているため非常に網羅性が高く、目指している所も高いアプローチ方法となっています。
ただ、お話を伺っている中堅企業の皆様の中には、これらの取り組みの前提となっている情報のデジタル化や、情報を活用するための整理・蓄積が不十分だったり、セキュリティ面で課題を抱える企業も多くいらっしゃいます。
このような企業の皆様はしっかりした土台・基礎を固め、その上でDXを推進していかないと、進捗のスピードが落ちてしまったり、最悪、頓挫してしまう事も考えられます。
地に足の着いた中長期的なDX推進計画をしっかり策定・実行し、成果をモニタリングしながら課題があればDX推進計画を見直していくことが、DX成功への道のりではないでしょうか。
- 注1:「デジタルガバナンス・コード3.0」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
- 注2:「DX認定制度のご案内」(独立行政法人情報処理推進機構)
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-nintei/about.html
- 注3:「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
- 注4:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx_meigara.html
- 注5:「DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection.html
- 注6:「DX認定制度 認定事業者の検索」(DX推進ポータル)
https://disclosure.dx-portal.ipa.go.jp/p/dxcp/search
2025年5月