業務プロセスを見直してみませんか?ITを活用して中堅企業の生産性を向上する

業務プロセスを見直してみませんか?

このコラムでは、中堅企業における生産性向上のための
業務改善の進め方と業務プロセスの見直しについて述べたいと思います。

冨澤 雅彦(とみざわ まさひこ)
NECネクサソリューションズ株式会社
コンサルティング統括部

民需系システムエンジニアおよびプロジェクトマネージャを経て、2002年よりコンサルティング業務に従事。
業種や業態を問わないIT戦略系のコンサルテーションを担当。
主な担当サービス:IT中計、ITシステム企画、BPM企画、業務改革、ビジネスプロセスモデリング等
著書:PMPハンドブック(オーム社、共著)
NEC DX認定コンサルタント/情報処理システム監査技術者

冨澤 雅彦(とみざわ まさひこ)

生産性とは何でしょうか

事業における「生産性」とは、ヒト(時間)・モノ・カネ・情報などの経営資源の投入量と、それによって得られる付加価値※註1の産出量との比率を指します。
生産性の向上が、事業の成長や発展には不可欠です。より少ない経営資源で多くの付加価値を生み出すことができる(生産性が高い)企業は、他社に比べて競争力が強く、収益性が高いといえます。

生産性向上のポイント

企業の生産性向上のためには大きく3つのポイントがあげられます。

  • 1
    目的の明確化と共有
  • 2
    業務プロセスの改善
  • 3
    データに基づく評価(PDCAサイクル)

また、生産性向上を進めていくと、従業員のスキル向上・人的リソースの再配置・評価制度の見直しなどが、必然的に発生します。

1.目的の明確化と共有

生産性向上の目的をはっきりさせる

企業や団体では、すべての活動において経営目標や事業目標の達成に寄与することが求められるのは明らかです。したがって生産性向上という活動も「何のために」という目的をはっきりさせる必要があります。そうでないと生産性向上の結果を正しく判定することが困難になりますし、手段が目的化してしまいます。

【目的の例】

  • 製品1個当たりの所要作業時間を少なくするために、(工場の)生産性を向上させる
  • 問い合わせに関する回答時間を短くするために、(お客様センターの)生産性を向上させる
  • 残業時間短縮のために、(営業事務処理の)生産性を向上させる

これらの目的は、関係者に共有され、上位の経営目標や事業目標と整合していることが求められます。

上記の目的の例をもう一度見てみましょう。すべての目的の背後には解決すべき問題点があります。

  • 製品1個当たりの所要作業時間が長い
  • 問い合わせに関する回答時間に時間がかかる

経験上、生産性向上など業務改善全般の目的は、現状の問題点から導かれることが多いと思われます。

2.業務プロセスの改善

業務の流れを可視化し問題点の解決策を検討する

問題が発生している状況を把握し関係者の共通認識とするためには、問題が発生している業務プロセス(業務の流れ)を可視化することが有効です。
現状の業務プロセスを可視化したものをAs-Isモデル(As-Isビジネスプロセスモデル)と呼びます。(as-is:あるがまま、の意)As-Isモデルを描くことで、

  • 問題が発生している部署や業務(役割)
  • 問い合わせに関する回答時間を短くするために、(お客様センターの)生産性を向上させる
  • 生産性向上のためには、繰り返しや手戻り、滞留が発生している業務

などの検討が効率的になり、問題の原因究明に役立ちます。

問題の原因が明らかになれば、その原因をつぶすための施策を検討することで、問題の発生そのものを少なくすることが期待できます。これが問題点の解決策となります。
後述するデータに基づく評価のために、この段階で2つの目標値を決定しておくことがポイントです。

  • KPI※註2:問題点が解決されたことを判断するための定量的な尺度:
  • KGI※註3:生産性が向上したことを判断するための定量的な尺度:

また、生産性向上などの業務改革においてAs-Isモデルを描く場合の注意点として、問題点に関係する業務のみを可視化することが挙げられます。すべての業務を可視化することは、業務手順書を作成することに等しく、業務改革プロジェクトの効率を落としてしまいます。

As-Isモデルの例

As-Isモデルの例

改善された業務プロセスを可視化したものをTo-Beモデル(To-Beビジネスプロセスモデル)と呼びます。(to-be:こうあるべき、の意)
To-Beモデルを描くことで、問題点が解決された姿を関係者全員の共通認識とすることが容易となり、生産性向上(業務改善)のゴールに向かっての活動の力となります。
なお本コラムでのビジネスプロセスモデルはBPMN※註4で記述しています。

To-Beモデルの例

To-Beモデルの例

3.データに基づく評価

生産性向上を実現する

ここまでで「何のために、何を、何に変える、そしてどうなる」という戦略がまとまりました。
あとは、施策を実行するための実行計画とシステム要求(ITシステムに求められる機能)を検討し、生産性向上のための施策を実行します。

戦略と戦術の構造

実行していくなかで必要となるのがデータに基づく評価です。施策検討の際に定めた目標(KGI、KPI)を定期的に集計し、施策の進捗や新たな問題点を客観的なデータに基づき評価する仕組みが必要です。
評価結果を参考にさらなる改善策の検討を行い、PDCAサイクルを継続的に実施していくことが生産性向上の目指す姿です。

またITシステム基盤としてBPMS※註5を採用すると、BPMNで描かれたビジネスプロセスモデルを利用して、業務プロセスの自動化やワークフロー化、モニタリングを行う仕組みを効率的に実現することが可能となります。

  • ※註1
    付加価値:売上高、生産数、製品品質、顧客満足、従業員満足など
  • ※註2
    KPI(Key Performance Indicator):施策の進行状況を測定するための具体的な尺度
  • ※註3
    KGI(Key Goal Indicator):目標が達成されたと判断するための具体的な尺度
  • ※註4
    BPMN(Business Process Model and Notation):国際標準(ISO19510)となっている業務フローの表記法
  • ※註5
    BPMS(Business Process Management System):業務プロセスの実行・管理を支援する情報システムで、PDCAサイクルの全てのフェーズをサポートするもの。
    製品の例:IM-BPM(NTTデータイントラマート)、Camunda BPM、 等

2025年1月