クラウドを導入するメリット7つ|種類や導入のポイントもわかりやすく解説

クラウドを導入するメリット7つ|種類や導入のポイントもわかりやすく解説

2020年代に約7割もの企業・団体が導入し、なおも市場規模を拡大させているクラウドサービス。「コスト低減」「業務効率化」「セキュリティ向上」における次世代型のソリューションとして、企業のクラウド化が一般的になりつつあります。

本記事では、そんなクラウドが持つメリット・デメリットを中心に、基礎知識や導入のポイントをまとめました。クラウド運用による業務課題の解決や、ITコストの最適化をお考えの際には、ぜひご参照ください。

目次

クラウドを導入するメリット7つ

まずははじめに、クラウド化のメリットをご紹介します。

  • 導入・運用コストを抑えられる
  • 運用管理の負担削減
  • 時間や場所を選ばずに利用できる
  • データ共有がしやすい
  • 拡張性が高い
  • すぐに始められる
  • セキュリティ対策

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

導入・運用コストを抑えられる

第一のメリットは、クラウドが導入・運用コストの削減に適していることです。クラウドはハードウェアやソフトウェアを保有せずに、インターネット経由でサービスを利用するため、初期費用を低額に抑えることができます。

一般的に、クラウドの料金体系はサービスを使った分だけ費用を支払う「従量課金制」です。これらのサービス利用料を除いて、サーバや周辺機器の購入費、人件費、電気代などの稼働費は必要ありません。また、クラウドの機能やプランを適切に選定することでも、運用コストの無駄を省けるのが利点となっています。

運用管理の負担削減

自社でインフラを構築する「オンプレミス」の場合は、データ管理から障害対応までを社内で完結させなくてはなりません。

しかし、クラウドの運用は、一般的にクラウドサービス提供事業者が行うため、システムの保守・管理やメンテナンスが不要です。クラウドでは、通信障害などのインシデントやバックアップ作業をサービス事業者に委ねられるため、社内のシステム管理者や専任者の作業負担が減り、自社のサービスや事業運営に集中することができます。

時間や場所を選ばずに利用できる

クラウドは、時間や場所の制約を受けずに、多様なサービスが活用できるのもポイントです。インターネット環境さえあれば、自宅や外出先でもシステムへのログインやデータ利用・保存が可能となります。

また、クラウド上にアップした情報へのアクセスや共同編集が容易となるため、テレワークの推進や業務効率化にも最適です。このようクラウドサービスは、今やワークスタイルの多様化を実現するツールとしてのメリットも持ち合わせています。

データ共有がしやすい

クラウドを導入することで、業務データの共有・一元管理がしやすくなる点も挙げられます。円滑な情報共有は、あらゆる作業パフォーマンスを向上させるとともに、コミュニケーションの活性化にも役立てられるものです。

社内の部署ごとにデータが散在しているケースでも、クラウドへの一括保存により、情報の整合性を取ることが簡単になります。そのうえクラウドは共同作業も可能なため、企業活動の生産性アップやスピーディーな意思決定を行う点でも効果的です。

拡張性が高い

クラウド化のメリットとして「拡張性の高さ」も挙げられます。拡張性とは、必要に応じてサービスの機能やリソースを追加できる性質のことを表しています。クラウドは利用者の環境に新たな設備導入を必要としないため、システムの拡充を図る点でも有利に働きます。自社サーバ・専用機器で運用するオンプレミスの場合は、機能拡張にはリソースの調達が必要であり、コストがかさみやすいのが難点です。

一方のクラウドでは、事業拡大や利用幅に合わせて、プランや容量を調節できるのが強みです。逆に事業規模を縮小したい場合は、契約内容を変更すればコストを安く抑えることも可能となります。

すぐに始められる

クラウドは、気軽にサービスを利用開始できる点でも優れています。システム導入までのステップが少なく、申込み後すぐに使えるクラウドは、運用開始までの期間を短縮できるのも大きな特徴です。

セキュリティ対策

クラウドサービスの利用により、最新の情報セキュリティ環境を得ることも可能です。クラウドでは、企業の情報資産管理と、セキュリティ管理の大部分をサービス事業者に委託することになります。それが結果として、最新のウイルス対策を施すことにつながり、情報漏洩などのリスク防止を図ることにもなります。

自社システムを用いる場合はセキュリティ面の負担が大きいですが、クラウドであれば“情報管理のプロ”に委託できることの安心感があるでしょう。

そもそもクラウドとは?

クラウドとは、自社のインフラ設備を持たずに、インターネットを通じてクラウド事業者のサービスを利用する概念のことです。ネットワーク環境とデバイスがあれば、スピーディーなシステムの構築が可能となるほか、必要なときに必要な分だけサービスを使うことができます。

そもそもクラウドとは?

従来は、物理的な機器を「所有」するシステム運用が主流でしたが、昨今はインターネットの向こう側(クラウド)に「アクセス」する流れが加速しています。

クラウドの使い方は、基幹システムをクラウド化したり、データをワンストップで管理したりする手法が一般的です。クラウドの出現により、本来の所要時間や手間、コストが大幅に削減されたことがシェア増加の要因といえるでしょう。

事実、IDC Japanによると2022年の国内クラウドサービスの市場規模は約2兆1,594億円に上り、2026年には約4兆2,795億円が見込まれているとのことです。今後はますますクラウドの評価や信頼性が高まるとともに、企業のクラウド活用が進んでいくと考えられています。

出典:IDC Japan, 2022年9月「国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表」(J49684222)

クラウドの種類

クラウドサービスの種類は、大きく下記の2タイプに分けられます。

  • プライベートクラウド
  • パブリッククラウド

それぞれ詳しく解説していきます。

プライベートクラウド

プライベートクラウドとは、自社内に専用のクラウド環境を構築・運用する方式のことです。従来の社内システムのように、組織内の利用に特化した設計・管理を行うため、企業ニーズに応じた柔軟性を持ち合わせています。加えて、プライベートクラウドは閉じたシステムであるため、セキュリティ性能の高さもメリットといえるでしょう。

一方で、イニシャルコストや設備の管理費用が高額になりやすいほかに、障害対応などを自社で行わなければならないケースもあります。なおプライベートクラウドは、サービス形態の違いから、以下2つに分けられます。

  • オンプレミス型…システムの導入・構築・運用を自社で行うプライベートクラウド(所有型)
  • ホスティング型…クラウド事業者のインフラをサービスとして借り受けるプライベートクラウド(利用型)

パブリッククラウド

パブリッククラウドとは、クラウド事業者が所有するリソースを、複数のユーザーと共用する方式のことです。導入・運用コストを抑えやすいうえに、気軽にサービスの利用開始や終了を選択できます。また、用途に合わせた契約内容の見直しができるほか、メンテナンスやセキュリティ面をクラウド事業者が担ってくれる点も安心です。

しかし、完成されたサービスに依存するため、システム運用を自社でコントロールすることや独自の環境設定が難しいというデメリットも挙げられます。

クラウドとオンプレミスの違い

クラウドが仮想サーバを用いるのに対し、オンプレミスは物理的なハードウェアを所有する点に大きな違いがあります。

オンプレミスとはそもそも「自社運用」と訳されるように、企業内で情報システムを保有・運用する仕組みのことです。オンプレミスでは、システムの設置・保守管理・トラブル対応をすべて自社で行う必要があります。運用開始までに時間や費用がかかるものの、既存システムとの連携やセキュリティポリシーを保ちやすいのが利点です。

一方のクラウドは、インターネット上の仮想空間で必要に応じてサービスを利用するのが特徴です。そのため、オンプレミスとは反対に、初期投資やシステム管理のコストや手間がかからないことなどを持ち味としています。

クラウドを導入するデメリット

クラウドサービスを利用するデメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 社内システムとの連携が難しいケースがある
  • カスタマイズ内容に制限がある
  • サービス停止・中断のリスクがある
  • インターネット環境の影響を受けやすい

第一にクラウドは、用意されているクラウド環境の範囲内での利用に限られるため、社内システムと連携しにくい可能性があります。というのも、自社独自のシステムとクラウドの互換性がない場合は、必要な機能を使えないことがあるからです。

また、クラウドは自社運用システムに比べて、カスタマイズ性に欠ける点もデメリットです。情報システムやセキュリティ環境の構築に一定の拡張性を求める場合は、クラウドの活用は不向きといえます。

さらにクラウドサービスは、それ自体が提供を停止・中断するリスクもあるほか、ネットワーク障害などのアクシデントに左右されやすい一面も持っています。

クラウドを導入する際のポイント

クラウドシステムを導入する際には、下記3つのポイントを把握しておくのがおすすめです。

  • サービスの種類と利用範囲…自社システムや業務に必要な機能・リソースを利用できるかどうか
  • コストやサービスの信頼性…クラウドサービス提供事業者が提供するサービス品質やコストが適切であるかどうか
  • サポート体制やセキュリティ対策の充実性…サービスの相談やシステムの不具合、セキュリティ面の対応実績が豊富にあるかどうか

まとめ

クラウドにはオンプレミスでは得られない多くのメリットがあります。コスト削減や拡張性、高度なセキュリティなど、ビジネスの効率性を向上させるための有用なツールです。一方で目的や効果をしっかりと見極めた上で、自社の目的やコストに合った適切なクラウドを選択する必要があります。クラウドの特徴をしっかりと把握し、適したクラウドを導入しましょう。

執筆者:桝温子(ます・あつこ)

気象予報士・文筆家。民間の気象情報会社を退職後、フリーランスに転身し、誌面などで幅広く執筆活動を行う。現在は「天気と調和し、巡りの良いカラダをつくる」健康気象をテーマとしたメディアの運営から、BtoB向けに防災気象システムの構築なども担う。