中小企業にERPは必要?導入のメリット・デメリットを解説

社会が目まぐるしく変化し、複雑化する現代。中小企業が生き残り続けるために優先的に取り組むべき対策の1つとして、ERPの導入があります。本記事では、中小企業にとってのERP導入の必要性や、メリット・デメリット、ERPの種類や選び方を紹介します。
中小企業にERPは必要?
ERPは今や企業の経営戦略に欠かせない存在であり、中小企業にとっても例外ではありません。ERPの有効活用により、多くの中小企業にとっての課題である人手不足や生産性の問題を解決できるだけでなく、中小企業ならではの機動力や柔軟性といった強みを最大限に生かして競争力を高められるようになるからです。
従来のERPは高コストで、大企業による利用が主でしたが、近年はクラウドを利用した低コストの商品が数多く出ており、中小企業も導入しやすくなっています。また、政府も中小企業のITツール導入を積極的に支援しており、「IT導入補助金」の条件に当てはまれば、ERPの導入に最大450万円までの補助金を受け取ることも可能です。
世界規模でのデジタル化が加速する中、中小企業が生き残り、今後も十分な収益を上げ続けるためには、このような制度も活用しながらERPを取り入れ、競争力を高めていくことが求められるでしょう。
そもそもERPとは?
ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、企業の経営資源(人、物、金、情報)を一元的に管理して経営の効率化を図るための手法、またはそれを実現するためのシステムを指します。日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれます。
ERPの特徴は、今まで個別に管理していたあらゆる業務プロセス(販売管理、在庫管理、財務会計、給与勤怠など)を横断的・統合的に管理できるようになることです。
企業全体の状態がリアルタイムで把握できるようになり、迅速な経営判断や生産性の向上に役立ちます。
ERPの主な機能
ERPの業務領域に関する代表的な機能は、以下の通りです。
機能 | 具体的な業務 |
---|---|
販売管理 | 見積書作成、受注管理、出荷管理、売上管理、請求書作成、債権管理、売上分析 |
購買管理 | 購買計画作成、発注管理、仕入先情報管理、仕入価格管理、発注書発行、取引先ごとの取引高・未払残高確認 |
生産管理 | 在庫データに基づく生産計画立案、製造工程管理、品質管理、作業進捗や検査実績などの管理 |
財務会計 | 入出金・振替伝票入力、伝票からの帳簿自動作成、自動仕訳、銀行口座・クレジットカードからのデータ取り込み・入力、貸借対照表や損益計算書などの決算書作成、固定資産管理 |
経費精算 | 各種経費入力、経路検索・交通費自動入力、経費データの分析 |
給与計算 | 勤怠情報や評価情報に基づく給与・賞与計算、給与計算式設定、保険料・税金の自動計算、給与明細の発行、税関係申告書類の作成 |
勤怠管理 | 勤務時間管理、残業・休暇管理、残業時間超過通知、各種申請・承認、勤怠情報レポート出力 |
ERPには、このように企業活動に必要な機能が揃っており、各機能を相互に連携させて統合的に管理できるのが特徴です。
ERPの導入方法
ERPには、クラウド型とオンプレミス型があります。
クラウド型ERPとは
クラウド型ERPとは、クラウド上で提供されるサービスを利用するタイプのERPを指します。自社でサーバやネットワーク機器などを用意する必要がなく導入コストが低い点や、保守運用がベンダー主体であるため運用の手間が省ける点がメリットです。
一方、すでにサービスとして提供されているものをそのまま使うため、後述するオンプレミス型ERPに比べカスタマイズの自由度が低く、自社の業務フローに合わせるのが難しい場合がある点がデメリットです。
オンプレミス型ERPとは
オンプレミス(on-premises)とは、英語では「敷地内」や「店内」を意味します。オンプレミス型ERPとは企業が自社内にサーバやネットワーク機器などを設置して運用するERPを指し、一言で表すと「自社運用のERP」です。
オンプレミス型ERPのメリットは、自社で構築・運用するため、自社の業務フローやニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできる点や、セキュリティ性が高い点です。
一方、自社でサーバやネットワーク機器を購入する必要があるため導入コストが高く、保守運用を自社で行うため運用工数がかかることがデメリットです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
クラウド型 |
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オンプレミス型 |
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中小企業にはクラウド型ERPがおすすめ
中小企業は大企業に比べ、資金的に余裕がなかったり、ERP運用のための人材確保が難しかったりするケースが多いでしょう。上記で説明した通り、クラウド型ERPは導入コストが低く、自社に専門知識を持った人材が必要ないことが大きなメリットであるため、中小企業にはクラウド型ERPが適していると言えます。
中小企業がERPを導入するメリット
中小企業のERP導入には、以下のように多くのメリットがあります。
- 人手不足対策
- 生産性の向上
- 経営データの可視化
- システムの運用コスト削減
- DXの推進
各メリットを詳しく説明していきます。
人手不足対策
ERPの導入は人手不足対策として有効です。日本では中小企業を中心に人材不足が深刻な問題となっています。生産年齢人口は今後も減少し続けると予想されており、人材不足は優先順位の高い課題であると言えます。
ERPは、あらゆる業務プロセスを一元的に管理できるため、今まで別々のシステムにデータを二重に入力していたり、データを集計したりするのにかかっていた労力を削減することができます。これにより人的リソースの有効活用ができ、人手不足の解消が期待できます。
生産性の向上
中小企業の生産性は大企業の半分以下とも言われており、中小企業にとって生産性の向上は喫緊の課題です。
生産性とは、「投入した資源(人、物、金、情報)に対し、どれだけの成果や価値を生み出せたか」を意味します。ERPは「企業資源計画」という名の通り、企業の資源を効率利用するためのシステムであり、まさに生産性向上のためのツールと言えます。
ERPを導入すると、企業活動の基幹となる業務を一元管理でき、部門を超えたシームレスな連携や情報共有が可能です。組織全体が最適化され、経営資源が有効活用できるようになるので、結果として生産性が向上します。大企業と比べて人材不足に陥りやすい中小企業では、ERPをうまく活用して生産性を高め、少ないリソースで大きな成果を生み出せるようにしていく必要があるでしょう。
経営データの可視化
ERPを利用すると、あらゆる業務プロセスの情報を一元管理できるため、企業経営の正確な状態がリアルタイムで把握できるようになります。これにより、迅速な経営意思決定が可能になり、中小企業ならではの強みである機動力や柔軟さを強化することができます。
今後ますます急速に変化していくビジネス環境の中で中小企業が生き残るためには、ERPによる経営データの可視化は不可欠になるでしょう。
システムの運用コスト削減
今まで複数のシステムを使って別々に行っていた業務をERPにより一元化することで、既存システムの保守運用にかかっていたコストを削減することができます。特に老朽化・複雑化したシステムでは、メンテナンスやセキュリティ維持、トラブル対応に大きな費用がかかり、保守をするだけでかなりのコストがかかります。また、システムの使い方も複雑なため、担当者の退職に伴う引継ぎや新しい人材育成にもコストがかかります。
このように、古いシステムを維持することは企業成長の足かせになってしまうため、ERPへの移行による脱却が求められます。
DXの推進
ERPの利用は、近年注目されているDXの推進にも欠かせません。DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、IT技術を駆使してビジネスに変革を起こすことです。
前述のとおりERPは、組織全体のリアルタイムな情報を一元管理し、経営を可視化してくれます。そのデータを活用すれば的確な経営判断が可能になり、業務改革や新しいビジネスモデルへの挑戦などを迅速に行うことができるようになります。
以上の理由から、ERPはDXの推進に対しても大きな役割を担っていると言えます。
中小企業がERPを導入するデメリット
中小企業がERPを導入するデメリットには、以下の3点が挙げられます。
- 導入・運用のコスト
ERPは導入にコストがかかるという点がデメリットです。特にオンプレミス型のERPでは数百万から数千万単位のコストがかかる場合があり、運用のために新たな人件費がかかるケースも考慮しなくてはなりません。
- 業務改革が必要
ERPは、組織の全体最適化を目指すためのものです。これに対し、従来の業務フローは部署や担当者ごとの部分最適となっているケースが多いでしょう。ERPを有効活用するためには、そのような業務フローを見直す必要があります。人手が不足している現場では、業務フローを見直す時間を確保すること自体が難しいケースもあるでしょう。
- 社員への教育が必要
ERPシステムの操作方法に加え、場合によっては情報セキュリティに関する教育も必要になります。
このようにERPの導入にはデメリットもあり、金銭的・時間的なコストがかかります。しかし、前述のようにERPは現代の中小企業が直面する課題にダイレクトに効果を発揮することができるため、正しく活用すればコストに見合った効果が期待できるでしょう。
中小企業がERPを導入するまでの流れ
中小企業がERPを導入するまでの流れについて簡単に解説します。
- 現状分析・目的の明確化
まずは現状を分析し、課題の整理を行います。ERPは多くの社内業務に関わるものです。関係者で話し合い、目的・必要な機能を明確にしましょう。
- ベンダー・製品の選定
上記の分析結果をもとにして、自社に適しているERPを選択します。すでに完成しているパッケージ製品を導入する場合は、業務フローをシステムに合わせることができそうか検討しましょう。
- 実装・試運用
実装にあたり、オンプレミス型ERPの場合は、サーバなどインフラの整備が必要になります。クラウド型ではその必要はありませんが、初期設定などは必要になります。実装後は試運用を行い、目的に合った運用ができそうか確認しましょう。
- 本運用・改善
改善を繰り返しながら運用しましょう。
中小企業がERPを選ぶ際のポイント
ここでは、中小企業がERPを選ぶ際のポイントについて解説します。
- 自社に必要な機能が揃っているか
ERPは、汎用的なものから特定の業種に特化したものまで、さまざまなタイプがあります。自社のニーズに合ったものを選びましょう。
- コストは適切か
コストに見合った成果が得られるかどうか、事前に十分検討しましょう。また、検討しているベンダーや製品が政府の補助金の対象かどうかも確認しておくとよいでしょう。
- サポート体制
導入時やトラブルなどが起きたときに、十分なサポートを受けられるかも重要なポイントです。ERPは企業の基幹業務に関わるため、トラブルが起きた際には迅速な解決が求められます。
まとめ
ERPは、企業の経営資源を一元管理して経営の効率化を図るためのシステムです。本記事では、中小企業に焦点を当て、ERP導入のメリット・デメリットや種類、選び方を紹介しました。ERPを有効活用することで、迅速な経営判断や生産性の向上が実現し、中小企業が直面する様々な問題を解決することができます。ぜひ本記事を参考にして、ERPの導入を検討してはいかがでしょうか。
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