経営力を強化する[会計・経理部門向け]
社会情勢とともに変化する税制への備え(第4回)
建物附属設備、構築物等の減価償却方法が変更になります!
建物附属設備、構築物等の減価償却方法が変更になります!
平成28年税制改正により法定実効税率を20%台にするということと引き替えに、様々な課税ベースの拡大が行われました。今回は課税ベースの拡大となった項目のうち、減価償却資産の償却方法の変更内容をご紹介いたします。
1.償却方法の変更内容
平成28年4月1日以降に取得する以下の資産については定率法を廃止し、次の償却方法に変更されることとなりました。
資産の区分 | 平成28年3月31日まで | 平成28年4月1日以降 |
---|---|---|
建物附属設備及び構築物 | 定額法又は定率法 | 定額法 |
鉱業用減価償却資産 (建物、建物附属設備及び構築物に限る) |
定額法、定率法又は生産高比例法 | 定額法又は生産高比例法 |
平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備及び構築物は、定額法又は定率法のいずれかを選択できるため、平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備及び構築物に法定償却方法である定率法を選択している場合は、耐用年数終了まで定率法を適用することになります。一方で平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物については、選択の余地はなく、定額法によることになるため、同じ資産に分類される場合であっても償却方法が異なることになります。
なお本改正は、取得日が基準になるため、事業共用が平成28年4月1日以降であっても平成28年3月31日までに取得をしていれば、定率法で償却することができます。
2.実務上の影響
減価償却資産を取得し、償却方法として定率法を適用すれば、取得初期の段階で減価償却費が多く計上されるため、初期段階の税負担は大きく軽減されます。一方、定額法は毎期同額の減価償却費が計上されるため、初期段階での税負担の軽減が少なくなります。そのため本改正において償却方法が変更されても、減価償却費の合計額は変わりませんが、初期段階における税負担に対する効果が異なることになります。
3.旧定率法適用資産への資本的支出の取扱いについて
原則的取扱い
平成28年4月1日以降に既存の建物附属設備・構築物に資本的支出を行った場合には、新規資産の取得とみなして定額法により償却を行います。
特例的取扱い
旧定率法(※1)が適用されている建物附属設備・構築物に対して行われた資本的支出については、その支出が平成28年4月1日以後に行われたものであっても、既存の建物附属設備・構築物の取得価額に資本的支出の金額を加算して、一体として旧償却方法で償却計算する特例の適用が認められます。
(※1)旧定率法とは、平成19年3月31日以前に取得した資産に定率法を適用した場合の償却方法になります。
特例的取扱いを選択し、旧定率法を適用して償却を行う場合のメリットは、原則的取扱いによる定額法よりも高い償却率で償却できるほか、本体資産と資本的支出を一体管理できることなどが挙げられます。
4.会計上の取扱い
企業会計基準委員会が平成28年6月17日に「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」を公表しました。それによれば、『従来、法人税法に規定する減価償却費として処理している企業で、建物附属設備及び構築物の減価償却方法について定率法を採用しているときに、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の減価償却方法を定額法に変更する場合、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとする』とされました。
この取扱いに従えば、会計上も、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物については定額法に変更することが容易にでき、会計と税務で償却方法が一致することになりますので、二重計算の問題を避けることができます。
ワンポイントアドバイス
減価償却資産の償却方法の変更について
法人が減価償却資産を取得した場合に選定した償却方法は、継続して適用する必要がありますが、これを変更しようとする場合には、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、変更承認申請書を所轄税務署長に提出して承認を受ける必要があります。
なお、適用している償却方法を採用してから3年を経過していないときは、特別な理由があるときを除き、その申請が承認されないことになります。また、その償却の方法を採用してから3年を経過した後になされた場合であっても、合理的な理由がないと認められるときは、その変更が承認されないこともありますのでご注意ください。
社会情勢とともに変化する税制への備え
- 第1回 軽減税率の判断基準ってご存知ですか??
- 第2回 消費税率引き上げ延期と適格請求書保存方式の導入
- 第3回 被災地は皆様の温かなお気持ちを必要としています!!
- 第4回 建物附属設備、構築物等の減価償却方法が変更になります!
- 第5回 電子帳簿保存法の規制緩和で領収書等のスキャナ保存が可能に!
- 第6回 電子帳簿保存法におけるスキャナ保存要件のポイント
筆者紹介
国内最大級の会計・人事のアウトソーシング・コンサルティング会社であり、約200名の公認会計士・税理士・社会保険労務士などのプロフェッショナル・スタッフによって、上場企業や中堅企業を中心に会計・税務、人事・労務に関するアウトソーシング・コンサルティングサービスを提供している。
関連ソリューション
EXPLANNER/Ai(エクスプランナー・アイ)
EXPLANNER/Ai(エクスプランナー・アイ)は販売、会計、人事・給与など、基幹業務の中核となる経営基盤を最適な形で実現する統合業務型パッケージです。40年の歴史と30,000本以上の導入実績で、お客様の多様なご要望にお応えします。
GRANDIT
GRANDITは日本の企業文化に適合した、顧客視点のWeb-ERPです。グローバル化・多様化・スピード化が進むビジネス社会でのノウハウ・情報の共有と、相互の連携と交換による「協創」。GRANDITはコラボレーションの場を提供します。
GRANDIT for SaaS
GRANDIT for SaaSは、中堅企業のニーズに応える国産ERP「GRANDIT」を月額料金で利用できるサービスです。