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特集

障害者雇用促進法が改正。あなたの会社の雇用は規定を満たしていますか?

2018年10月

障害者雇用促進法が改正。あなたの会社の雇用は規定を満たしていますか?

2013年に「障害者雇用促進法」が改正されたが、その一部である法定雇用率の引き上げが2018年4月に施行された。これに伴い、障害者雇用義務が発生する企業の従業員数が引き下げられ、さらには「障害者」の対象も拡大されている。今回は、障害者雇用促進法の改正によって具体的に何がどう変わったのか、障害者を採用する際はどのようなことに気をつければいいのかなどを説明する。

障害者雇用促進法の改正で何が変わったのか

障害者雇用促進法は、障害者の雇用促進と機会均等によって職業の安定を図り、自立を促すとともに、障害者がいきいきと働ける環境づくりを目的としている。1960年に制定された身体障害者雇用促進法が前身となっており、その後も「障害者」の対象が追加されるなど、見直しや一部改正がたびたび行われてきた。

障害者雇用の促進は国が力を入れて進めている施策である。厚生労働省が2017年12月に発表した「平成29年障害者雇用状況の集計結果」(同年6月1日時点)を見ると、民間企業で働く障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)は前年比4.5%増の49万5795人と、数字の上では順調に増えている。13年連続の増加であり、この流れは近年の着実な傾向となっているが、政府としてはまだ改善の余地があると判断したことが今年の改正の契機といえる。

今年(2018年)4月に改正された障害者雇用促進法は、(1)法定雇用率の算定基礎の見直し、(2)障害者雇用義務の対象に精神障害者を追加、が主な変更点だ。

(1)のポイントは、民間企業の障害者法定雇用率が2.0%から2.2%へと引き上げられた点だ。これに伴い、障害者雇用義務のある企業の範囲も、50人以上から45.5人以上に拡大している。なお、この法定雇用率は2021年4月までに2.3%へ引き上げられ、企業の範囲も43.5人以上に拡大することが決定している(具体的な時期については今後の労働政策審議会で議論される予定)。

(2)については、従来は「障害者」の対象を身体障害者と知的障害者に限定していたが、改正で障害者の種別記載が廃止され、精神障害者も加えられた。そもそも法定雇用率とは「障害者数(常用労働者数+失業者数)」を「常用労働者数+失業者数」で除算したもの。「障害者」に精神障害者が加わり、分子の対象が広がった点が大きな特徴といえる。

なお、障害者雇用義務の対象事業主は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況を公共職業安定所(ハローワーク)に報告する義務がある。

障害者を採用する際に気を付けるべきこと

障害者を雇用するに際しては、具体的にどのような点に注意すべきだろうか。

法定雇用率引き上げを数字の面から着目すると、まずはやはり採用すべき障害者の人数を把握することが重要だ。具体的には、従業員500人の中堅企業の場合、これまでの法定雇用率である2.0%では10人だったものが、改正によって2.2%すなわち11人へと拡大される。

実際に障害者を雇用するにあたっては、社内環境や仕事内容の整備を実施しなければならない。例えば身体障害者を採用する場合、通路に手すりを設置する、エレベーターの数を増やす、身体障害者が利用しやすいトイレを新設・増設するといった施策が必要になるだろう。また、言うまでもないことだが、合理的な扱いと差別の禁止を徹底し、障害者個人の障害特性に配慮した勤務体制や制度を整備するなど、多様な人材が活躍できる環境をつくることも大切だ。

とりわけ「障害者」に追加された精神障害者については、従来の雇用促進法で対象になっていなかったこともあり、雇用自体が進んでいない。必然的に職場内に精神障害者は少なく、接する機会がほとんどなかった事情もあるため、総務人事も含めた企業の側に「どのように接すればいいのかわからない」という悩みもあるだろう。必要以上に特別視してしまう、あるいは反対に健常者との違いをまったく意識せず同一の扱いをしてしまうと、マネジメントに失敗する可能性が高い。

まず押さえておきたいのは、精神障害とひと口にいっても障害によって特性が異なるという事情を理解しておくことだ。

精神障害を大きく分けると「気分障害」「統合失調症」「発達障害」がある。気分障害の人は幅広い業務に対応しやすいが、一方で頼まれた仕事を断ることが不得意という特性を持っているため、対応許容量を超えた業務も断らずに受けてしまうことが多い。業務を依頼する際はこの点に配慮する必要がある。実際に、「この仕事をできますか」と尋ねられると断ることができず、オーバーワークになり、過労につながってしまう事例もよく耳にする。

また統合失調症の人は、指示を正確に理解できれば業務をしっかりと遂行できる場合が多いが、指示にあいまいな部分があったり、従来の業務にアレンジを加えるような対応に不得手な部分がある。統合失調症の人に業務を依頼するときは、その業務ごとに的確なプロセスを一つひとつ伝え、理解してもらうことが大切だ。

発達障害は個人差が大きく、業務の得手・不得手も個人で異なるケースが多い。このため、その人に合った業務適性を見極め、能力を発揮できる仕事を依頼することが重要になる。適正に合った仕事であればむしろ集中力を発揮し、高い成果を上げることが多い。

総じて、精神障害者は精神状態の影響が仕事に出やすいため、身体障害者や知的障害者とも異なった配慮が求められる。

実際に聴覚障害者、精神障害者を雇用した際に起こり得る失敗パターンとは

では、聴覚障害者、精神障害者を雇用した際には一体どういう失敗が起こり得るのだろうか。具体的に以下のようなパターンが想定されるので注意が必要だ。

まずは聴覚障害者雇用の失敗例だ。ある企業では、同部署に2人の聴覚障害者を配属した。聴覚障害者が複数いれば協力しあって定着が高まるのではと配慮したからだが、聴覚障害者同士の結束が強固になりすぎ、結果的に2人とも早期に退職してしまった。一般的に同じ職場だと聴覚障害者同士で仲良くなる傾向があるので、一緒に働く健常者ともコミュニケーションを取るように担当者が対応することが有効策の一つだ。

精神障害者雇用の失敗例も紹介しよう。ある企業に入社した統合失調症の従業員は、問題もなく業務をこなし、他の社員との関係も良好だった。しかし数カ月を過ぎた頃から遅刻が増え、業務上の問題も起きてきた。その後も遅刻、問題を起こし続け、最終的には退職することになった。精神障害者は一般的に症状の波が激しく、時間が経つと症状に悪化が見られることもある。入社直後に良好だからといって配慮を怠ると、ちょっとしたきっかけで症状が悪化する場合があるので、注意が必要という例である。対策としては、症状が悪化した際の状態や予防策のヒアリング、障害を悪化させる状況や言葉などがないかを面接時の確認事項として入れておくといいだろう。

また、ある企業に入社した発達障害の従業員は、同グループの先輩に恋愛感情を抱き、相手の感情を無視した行動に出るようになった。その先輩の申し出で先輩はグループからは外れたが、その従業員はこのことに不満を持ち、周囲とトラブルを起こすようになり、結果的に退職することになった。恋愛感情を持つことに問題がないが故に、その後のトラブル予測や対策は難しい。面接時にそういう兆候がないかしっかり見極める必要があるだろう。

コストが気になる場合は積極的に支援制度を活用しよう

障害者雇用に際しては、現実的にコストが必要となる。例えば施設の整備によるバリアフリー化には費用負担が発生するのが一般的だ。また、障害者が職場に適応できない場合は離職となるが、そこまでにかけた教育のコストに加え、新たな採用にもコストがかかる。障害者をサポートする健常者の人的リソースもコストの一つだ。そこで、障害者雇用の促進を支援するために企業が利用できる様々な制度が用意されている。

まずはトライアル雇用制度。これはハローワーク等の紹介によって障害者を一定期間雇用することで、職場への適応などを確認できる制度だ。一定の条件を満たす場合は公的助成金を受けられる制度もある。このほかにも、障害者が利用しやすい環境づくりや能力向上に資する施設整備を行う企業に支給される助成金、発達障害者や難治性疾患者を雇用する場合の助成金なども用意されているので、ハローワークや社会保険労務士等の専門家に相談し、活用できるものがあれば活用しよう。

障害者雇用の促進は、企業の義務ともいえる。法定雇用率の数字を満たすことも重要だが、数字を追い求めるだけでは意味がない。法律の本来の趣旨は、障害者が健常者と同様に活躍できる環境をつくることだ。数字の達成にフォーカスする前に、障害者の特性と各個人の能力・個性を把握し、障害者にとっても健常者にとっても一緒にいきいきと働ける職場環境の構築が、総務人事にとっても大きなテーマとなるだろう。

障害者を「受け入れる」という発想ではなく、「一緒に働く」という意識を職場内に浸透させることが障害者雇用促進のスタート地点となることを、総務人事の立場からきっちり理解しておきたい。

※障害者雇用の施策については、以下の厚生労働省のWebサイトに詳しい紹介があるので、参考にしよう

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