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特集

社員の本来の能力を発揮させるティール組織ってどんな組織?

2019年8月

社員の本来の能力を発揮させるティール組織ってどんな組織?

組織運営やマネジメントは企業にとって重要なテーマ。このテーマで今注目のキーワードが「ティール組織」だ。ティール組織の革新性は、従来のピラミッド型組織のマネジメントにおいて当たり前の手法が、実はよくない副作用をはらんでいることを指摘した点にある。では、従来のマネジメントは何が問題で、新たにどういったアプローチが必要になってくるのか、ティール組織の概念や事例を説明する。

ティール組織に求められるポイントは3つ

近年、ビジネス界で大きな話題を呼んだ言葉が「ティール組織」だ。4年前にフレデリック・ラルー氏が出版した著書「Reinventing Organizations」の日本語訳が「ティール組織」という邦題でこの年に発売されたことで、従来のマネジメントに悩みを抱える日本のビジネスパーソンにこの言葉が一躍注目されることとなった。従来の常識とは異なる新たなマネジメント手法で成果を生む企業が次々と誕生していたことも、「ティール組織」が注目を浴びるようになった背景として考えられる。

ティール組織とは、簡単にいえば従来のマネジメントではなく、明確な上下関係を廃しつつ社員の自主性を重んじるフラットな組織だ。

同書によれば、ティール組織に求められるポイントは「セルフマネジメント(自主経営)」「全体性」「進化する目的」の3点。まず「セルフマネジメント(自主経営)」とは、上司から指示を受けず、社員一人ひとりが自らのアイデアと判断で行動し、成果を出していく状態を表す。とはいえ社員個人が勝手に判断を下すのではなく、アイデアに対して周囲から助言をもらうことで、適切な意思決定を行っていける仕組みが求められる。

「全体性」は、個人がすべての能力や個性を発揮することで、幸せを実感しながら働けるとともに、組織全体のパフォーマンスを上げていける状態を表す。逆にいえば、組織の側には個人の意見を全体として受け入れる受容性や多様性が必要となる。

そして3つ目の「進化する目的」。これは、個々の社員が仕事と組織の存在目的とを常に照らし合わせることによって、モチベーションや使命感を得た結果、組織が最大限のパフォーマンスを発揮し、組織の存在目的自体も絶えず進化していく状態を表している。

従来のマネジメントは社員の自主性を奪い、生き残りに必死になる

「ティール(Teal)」というのは耳慣れない言葉だが、実は青緑色を意味する英語だ。先の著書でラルー氏は、組織モデルの進化形態を5つの色で表している。進化の最初の段階がレッドで、これは力を持つ個人が支配する組織。続くアンバー(琥珀)は、厳格な上意下達をベースとした軍隊型のヒエラルキー組織。その次のオレンジは、ヒエラルキーは維持しているが結果を重視した「達成型組織」で、現在の多くの組織はこのタイプのマネジメントで成果を出しているとしている。グリーンは成果よりも人間関係を重視し、ボトムアップで成果を生む“家族”タイプの組織だ。

そしてその上にあるティールは、社員相互が信頼をベースに結びつき、個々のアイデアと意思決定を重視して、目的に応じて進化する“生命体”のような「進化型組織」だと規定している。このモデルは組織構造がフラットであるため上司からの指示や管理はなく、それぞれが工夫しながら組織の目的を実現していく。いわば、自律分散型で進化を実現していくのがこの組織モデルといえるだろう。

ティール組織にすることで、企業にとってはどういう点がメリットになるのだろう。これを考えるには、上に挙げた達成型組織と比較するとわかりやすい。

達成型組織はトップダウンのピラミッド構造であり、上からの指示を中間管理職を通じて部下に下ろす形での組織マネジメントが行われる。その際、管理職は「がんばらなければ会社は滅びる」といった恐怖をもって社員を刺激し、追い立てていく。

もちろん日本企業はこれまでこのタイプのマネジメントで成果を出してきた。しかしそこには意外な副作用があるとラルー氏は指摘するのだ。まず、社員は上から与えられた目標をこなすため機械のように働くことで、疲弊する。加えて、上司は優れ部下は劣っているという意識が暗黙のうちに生まれ、社員の自主性を奪う。すると社員は生き残りに必死となり、上司にはいい部分のみを見せ、個人のパワーをフルに出せないという副作用も生じる。いつしか会社で見せている「一部」が自分の全人格だと考えるようになり、精神的なストレスもたまっていくとラルー氏は言う。

その点、ティール組織であれば、上司が業務を指示することはないため、社員は与えられた役割ではなく自分自身のアイデアと判断でセルフマネジメントを行える。会社の存在目的を常に意識することで、仕事に対するモチベーションや使命感も高まる。また、自分という人間の全人格を発揮し、大きなパワーを組織の中で存分に活用できるという。もちろんトップダウンではないため、権力の集中による弊害も起こらない。

ティール組織に向けた組織開発のポイントはいくつか挙げられる。まずは会社の存在目的を社員に強く意識させる工夫を取り入れ、自らの仕事が生み出す社会的な価値を実感してもらう。また、上司らしい上司も部下らしい部下もいないフラットな組織形態を運営するため、意思決定の権限移譲、情報の可視化、人事の透明化を行い、全社員が意思決定に主体的に関われる状態を作り出すことも大切だ。

とはいえ日本型組織で管理職という立場を突然廃止することは難しいだろう。そこで上司側の意識変革を促し、上司は指示や管理を行う立場ではなく、あくまで助言する立場であると徹底することにも意味がある。

初めから完璧なティール組織は難しい。ノウハウと経験を蓄積しながら組織化していこう

ここまで読んできて、「はたしてそのように理想的な組織を作ることはできるのだろうか」と疑問を持つ人も多いに違いない。

手始めとして、ティール組織の3つのポイントを完全に満たさずとも、そのうちの1つ、2つであれば比較的容易に実現できるだろう。実のところ、一部であればすでに着手している企業も多いと思われる。そこを突破口として、初めから完璧なティール組織を作り上げようとするのではなく、プロセスを経てノウハウと経験を蓄積しながら、結果的にティール組織に至ると考えるほうが現実的だ。

ある決済サービス業者では「セルフマネジメント」の手法をまず導入。各社員が業務時間の20%を充てて本来の業務以外で興味のあるプロジェクトに挑戦できる制度を開始した。自分らしく幸せな働き方ができるようになり、「全体性」の引き出しにもつながっているという。

またあるIT業者では、管理職の役割を廃止。社員は自らの意思決定で経費を使い、案件を進めている。加えて個人評価をなくし、得意分野だけでなく苦手なことまで表明させることで個人の「全体性」を実現しているという。その他、ある不動産ソリューション業者は役職・肩書を廃止したうえ、働く場所・時間を社員自ら決められる制度を導入。給与・経費など様々な情報を公開し、給与は話し合いで決めるスタイルを試行している。

ピラミッド構造を脱却してフラットな人間関係で事業を進めるティール組織は、組織像の一つの理想形ともいえる。だが、ティール組織は一朝一夕に作り上げられるものでもない。現時点で自社の組織の状況を改めて見つめ直し、その上でティール組織の手法のうち自社に合った部分から、一つひとつ試行的に取り入れてみてはいかがだろうか。

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