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電子的診療情報連携体制整備加算から考える ICT 投資

2026年11月

今年度の診療報酬改定で医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算が見直され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設された。本稿では、その施設基準と算定要件を整理したうえで、医療機関が次回のシステム更新を見据えて準備すべきICT投資と運用体制について考える。

1.電子的診療情報連携体制整備加算とは

電子的診療情報連携体制整備加算とは医療DXの推進体制を評価する加算であり、オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなど、医療情報の電子的な連携体制を整備している施設を評価するものである。従来の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」を統合・再編したもので、電子化そのものよりも、電子化された情報を安全に運用し、非常時にも診療を継続できる体制をどう作るかが一段と問われるようになったことが特長である。まずはその点数と施設基準について以下の表で整理してみたい。

電子的診療情報連携体制整備加算 加算1 加算2 加算3

初診時(月1回)

15点

9点

4点

再診時(月1回)

2点

共通要件(注1)

必須

電子処方箋

必須

いずれか1つ

不要

電子カルテ(条件をみたすもの 注2)

必須

不要

電子カルテ情報共有サービス

必須

不要

入院時

160点

80点

-

共通要件(注1)

必須

-

「安全管理ガイドライン」に準拠した体制

必須

-

医療情報システム安全管理責任者の配置

専任

設置のみ

-

オフラインバックアップ

必須

不要

-

業務継続計画(BCP)の策定と年1回の訓練

必須

不要

-

注1

  1. オンライン請求を行っていること。
  2. 診療報酬明細書を患者に無償で交付していること。
  3. オンライン資格確認を行う体制を有していること。
  4. 医師又は歯科医師が、オンライン資格確認などシステムにおいて、閲覧又は活用できる体制を有していること。
  5. マイナ保険証利用率が、30%以上であること。
  6. マイナポータルの医療情報などに基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有していること。
  7. 明細書発行に関する事項、医療DX推進の体制に関する事項などについて、当該保険医療機関の見やすい場所及びWebサイトに掲載していること。

注2

  • ア 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制であること。
  • イ 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースを有していること。
  • ウ 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有していること。
  • エ 厚生労働省が認証する電子カルテ製品であること。

これらの算定できる点数と施設基準を天秤にかけると初診時の加算1と加算2との点数差は6点であり、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの導入費用を考慮すると採算面で慎重に判断する施設も多いと思われる。しかし、現在の採算だけを考えていると後々大きな痛手となって返ってくることは、これまでの厚生労働省の施策をみても予想の範囲である。現在稼働中のシステムに追加で機能強化する場合はコスト的にも大きなものになるため、次回更新時には導入できるよう計画的に進めていただきたい。

2.施設基準を満たすための整備計画

次回更新時に導入を進めるにしても費用的な計画が必要である。厚生労働省からも以下の補助金があるので活用したい。

【画像1】厚生労働省:電子カルテ情報共有サービス | 医療機関等向け(補助金交付額について)

【画像2】厚生労働省:電子処方箋について(医療情報化基金等)

また、サービスの連携については費用面以外にもシステムとして考慮しなければならない事項が多くある。電子的診療情報連携体制整備加算1を算定するための施設基準について、必要な対策も含めて提示したい。

① 電子カルテ情報共有サービスと標準マスタ

このサービスと貴院のシステムを連携するためには、単にベンダー任せでシステムを導入するだけでなく、各マスタの標準コード化対応が必要なことを忘れてはならない。ご存じの通りこのサービスは全国の医療施設及び患者が共通に利用するサービスである。

現在各医療機関のマスタは独自のコードで作成されており、標準コードが付与されていないケースも多いと考える。このままではデータを出力することはできない。以下の標準コードがベースとなり厚生労働省より各標準マスタがリリースされている(以下のWebサイトを参照)ので、今からマスタ整備を始めることにより更新時にスムーズな導入を行っていただきたい。

  • 傷病名:ICD10
  • 薬剤:YJ
  • 検査:JLAC

電子カルテ情報共有サービス - 電子カルテ情報共有サービスの導入に対応するための標準規格について
https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0011216

② 電子処方箋と電子署名

電子処方箋の導入については医師の電子署名が必要となる。この電子署名にはマイナンバーカードかHPKIカードのどちらかが必要である。マイナンバーカードの方が低コストだが、個人所有のものなのでHPKIカードを利用する施設もある。その場合新規申請が必要な医師も多いと思われるので事前準備が必要である。

③ 医療情報システム安全管理責任者の配置

医療情報システム安全管理責任者は特に法律上の必須資格は定められていないが、情報セキュリティ、個人情報保護法、医療法、電子カルテ・レセコンの運用、ネットワーク管理、サイバーセキュリティ対策など多岐にわたって知識が必要となる。いざ探そうとしても見つからない現状もあるので育成も含めて計画的に進めなければならない。

④ 業務継続計画(BCP)と訓練

サイバー対策を含めた業務継続計画の策定はかなりの時間と要員が必要となる。また年1回の訓練は特に参加人数の規定は定められてはいないが、「訓練が実効性を持って実施されているか」が重視されるため、幹部を含めたある程度の規模が想定される。また、実施計画から課題の確認とその対策の検討など記録に残すことが重要である。

※BCPの策定にあたっては当コラムの2025年8月号を参考にしていただけたら幸いである。

2025年8月号
https://www.nec-nexs.com/sl/medical/column/hokao/column010.html

⑤ バックアップ要件

システムのバックアップに求められる要件は「複数の方式での確保」「オフライン保管」「世代管理」の3つである。オフラインバックアップはこれに対応したシステムを導入し、ベンダー契約書にオフライン保管の旨が明記されていれば要件を満たしやすいため、まずは契約内容を確認しておくとよい。複数方式及び世代管理(3世代以上)も要件に入っているのでこれらも注意していただきたい。

終わりに

今回は電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準から今後の取り組みについて検討してみた。繰り返しになるがこの点数ではメリットがないと考えるのではなく、将来に向けて必要となるシステムと体制であることを念頭に計画的に取り組んでいただきたい。