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医療情報システム導入支援に関する本番立ち合いからの考察(その1)

2026年6月

はじめに

今回からは、当社が実際に医療情報システム(電子カルテ)の導入支援を行った際に、直面した数々の課題や問題点について、対策案を含めた考察を記載したい。

各医療機関での医療情報システム導入(更新)に関する対策案の参考となれば幸いである。

項目一覧

1.案内表示連動

表示された予約項目によっては、案内表示盤連動による呼び込みができないものがある。

診療科または該当医師に複数の予約項目があり「全て」で外来一覧を表示した場合並びに医師に特定できない予約枠で外来一覧を表示した場合の事象である。

対策
  • 医師毎の予約枠だけの表示とする。
    ○○先生と○○先生(初診)の2つの予約枠があった場合、それぞれで表示して切り替えて運用することとした。
  • △△科共通枠のような予約枠が作成されていた場合は、受付で医師枠に切り替えてもらうか、強制的な操作にて患者呼び込みを行うこととした。
対策での留意事項
  • 医師で複数の予約枠を切り替えた場合、片方の枠の操作が必須となるため、切り替えを忘れて片方の枠の患者が延々と待たされる恐れがある。
今後の導入案件での留意事項
  • 医師にて一つの予約枠とすることが可能か、また、共通枠のような医師限定できない枠がないかを確認し、運用をあらかじめ検討しておく。

※ 全ての案内表示板が同様の動きとなるとは限らないため、上記の状態を設定した環境での接続テストを実施しておくことを推奨したい。

2.予約票

予約票(次回の再来時向け)を医事領収書と同時発行している場合、当該システムでは検体検査の予約を取らないため、次回検査ありが表示できない(某社システムでは、検体検査オーダ時に予約枠を自動発生することも可能)。

対策
  • 検査オーダ登録後、検体検査の予約を必ず取る運用とする。
対策での留意事項
  • 入力が増える運用となり現場での手間が増加するため、実運用における業務の効率化が図れない可能性が高い。
今後の導入案件での留意事項
  • 上記運用もワーキングでかなり検討してきた案であると思われるが、医事領収書発行時に次回予約票を医事システムで同時発行している場合は、特に注意が必要である。
  • 予約オーダ時にコメントとして「検査あり」を選んでもらうことで代替え対応できないか、次回来院時の案内表にて代替え運用できないか、などを病院側と事前に検討しておく。

3. 患者案内表

案内表に行き先を表示する場合で、特定の予約項目について曜日で行き先が異なる場合には、曜日による表示変更ができない。

対策
  • 該当プロジェクト(以下、「PJ」という。)での再検討が必須となる。
今後の導入案件での留意事項
  • 曜日で行き先が異なる場合は、別の予約項目とするなどの対応が必要である。 別の予約項目とした場合は、受付などで一覧表示する場合の項目を曜日で切り替えてもらうなど運用対応が必須となる。

4. 入院決定

外来診察後に入院決定を行う場合、クリニカルセットを連動させることで入院時に必要な帳票のベースが作成され、設定によってはその場で印刷されるが、入院決定の修正時にはクリニカルセット連動のチェックが外れているため帳票が出てこないことになっていた(初回登録時は規定値で連動するチェックが入っている)。

対策
  • 修正時も帳票の発行が必要な場合は、クリニカルセット連動をチェックしてもらうように周知徹底させる。
今後の導入案件での留意事項
  • マニュアルや操作研修資料などに記載しておくことが重要である。

5. 移行データ

ア)処方・注射のケース

前システムとコメントコードや用法が異なるものがあるため、DO操作にてエラーとなる。事例として10診察室の100名程度の診察にて10回程度発生。

新システム登録データでは発生しないため、徐々に減っていくことになる。

対策
  • DO時にエラーの出たRPのみ修正して登録してもらう。
今後の導入案件での留意事項
  • 移行データDOに関してのエラー発生時対応を事前に周知しておく。

イ)画像・生理のケース

オーダデータおよび予約データを移行していても、前システム登録時に発行された予約票や同意書などは移行されないため、これらがないケースが発生した。

対策
  • システム的な対策なし。
    ※新システムの個別文書として作成することは可能である。
今後の導入案件での留意事項
  • 切り替え前の出力物の運用を院内で決めておく。

6. 診察室毎の患者把握

診察室毎に、本日どの医師がどれだけの患者を診るかを把握するため、その日の予定を診察室・医師毎の患者一覧として紙で貼っておく運用があった。某社システムには、前記事項に対応する帳票出力機能を備えているものもある。

画面の一覧ではPC台数が少なかったり、他の業務で使用していたりで、運用は煩雑になる可能性がある。

対策
  • 外来患者一覧のCSV出力にて該当日の予定を出力し、ソートなどで診察室・医師毎の予定に絞り込んだものを印刷して運用する。
対策での留意事項
  • CSV出力やソートなど前システムよりも準備の手間が増えることとなる。
今後の導入案件での留意事項
  • 医師や診察室毎の予定患者把握をどのようにしているか事前確認し、CSV出力による代替えが必要な場合は、事前に各外来ブロックに操作手順や運用が変更となる旨を周知しておくことが大事である(稼働後の調整となると、準備と慣れに最低1週間は要すると思われる)。

7. 検査戻り時の運用

今回のシステムでは、検査戻り時に患者のステータス(診察待ち)を変える操作が必須であった。操作運用が漏れて検査戻りしているのに呼び込まれない患者が長時間待たされる事象が発生した。

該当PJでも事前に周知済みであったため、影響は大きくなかったが、まれに漏れが発生していた。

対策
  • 各科やブロックの受付に操作方法を周知徹底しておく。
  • 各診察室の前には「検査戻り時は○○受付へ」との表示をしておくことも対策の一つである。
今後の導入案件での留意事項
  • 稼働前の運用を確認し、導入するシステムと運用が異なる場合は周知する。

8. 代行入力時の運用

医師補助者にて記事を代行入力した場合に承認対象とならないケースが発生した。調査したところ、一時終了の場合にその現象が発生したことが判明した。

対策
  • 代行入力時は、診察終了にて登録してもらうことで対応可能となる。
対策での留意事項
  • 外来診察途中での代行入力時は、診察終了後にステータス戻しが必須である。
今後の導入案件での留意事項
  • 医師補助向けのマニュアル記載や操作研修時資料の記載をしておくことが重要である。

9. 初期に間違えやすい操作

オーダの修正時や予約取得時にクリック位置の誤りにより、メニュー画面が出ないなどによって、操作が進まないと質問を受けるケースがあった(例:処方オーダ修正時は日付のところをクリックする。予約は左の枠に日時がある行の枠をクリックするなど)。

対策
  • 慣れの問題のため、特別な対策は不要。
今後の導入案件での留意事項
  • 操作研修の際やマニュアルなどで記載しておくと、稼働当初の混乱が防げる。

10. 事前入力(次回再来時向け)

次回来院時に備えて事前に入力をしておく場合に、処方オーダに関して外来は即発行となるため、未来日での登録を行っても当日で院外処方箋が発行されてしまう現象が発生(データ日付は未来日の状態となっている)。

対策
  • 外来の未来日処方は出さない運用としてもらう。
対策での留意事項
  • 検査や画像などは患者に予定を伝えることもあり、当然事前入力となる。
今後の導入案件での留意事項
  • 現在のシステムで、事前の処方入力などの運用がないかを確認しておき、同様な運用があれば、新システムからは外来当日での入力としてもらうことを周知しておくことが大切である。

11. 中央処置室の運用

中央処置室では、翌日の外来患者対応のため予定一覧が必要であるが、新システムの中央処置室一覧を利用したところ、以下の問題が発生した。

  1. 現場でやる注射と処置室でやる注射の両方が一覧に表示され、区別ができない事象が発生した。実施場所の規定値が処置室のためか、あるいは医師がオーダ時に実施場所に中央処置室を選択したための事象である。
  2. 処置の一覧は、現場と中央処置室の両方が混在して表示される仕様になっていた。注射と違って、実施場所のチェック機能もないため区別する手段がなかった。
対策
  • (1)の「注射」の場合、中央処置室で実施するオーダのみ実施場所(中央処置室)のチェックを医師に徹底してもらう。
  • (2)の「処置」の場合、中央処置室で実施する処置は多くはないので、別途予約オーダを入力してもらい項目別の予約一覧で代用する。
対策での留意事項
  • 医師の入力忘れ(注射:中央処置実施、処置:予約入力)は、なかなかリカバリーできない事象であるため、注意が必要である。
  • 処置予約については入力負荷増となるため、医師の手数が増えることに事前の説明が不可欠である。
今後の導入案件での留意事項

現在のシステムで運用確認の上で同様な事前準備をしている場合

  • (1)の「注射」の場合、操作マニュアル記載、研修時の注意事項として明示する。
  • (2)の「処置」の場合、中央処置室での処置件数確認を行い、問題があれば予約運用を検討する。

まとめ

今回記載している内容は、どこの医療機関でも発生し得る事象である。その一部を列記したが、少しはお役に立つ情報になったであろうか。

様々な医療機関において、立ち合いをさせていただいているが、その場その場で事象は変化する。

今回は、外来における事象を中心に記載したが、次回も「医療情報システム導入支援に関する本番立ち合いからの考察(その2)」として、各方面からの事象を紹介しながら考察を行いたい。

少しでもお役に立てれば幸いである。