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インタビュー 識者が語る情シス課題

在宅ワークではコラボレーションツールと人材マネジメントはどうあるべきか

2020年11月

新型コロナウイルス感染症の影響もあって、リモートワークも含めた多様な働き方が急速に普及してきた。チームワークでは、目の前にいない人ともコミュニケーションを密にし、協業の精度を高め、成果を挙げる必要が出てきた。コラボレーションツールやスキルマネジメントツールがそれを助けてくれるが、その活用にあたってはいくつかの注意点がある。

目の前にいない人とどうやって一緒に仕事をするのか

企業組織は部署やチームで構成され、それぞれの役割を分担して協業するというのが一般的な在り方。会社全体の目標を部門・社員単位に細かく分解し、それぞれの成果を積み上げることで目標を実現している。ただ、それは互いの仕事が「目の前で見えている」ということが前提だった。少なくともレポートラインがルール化され、定時に必ず報告が上がるというようなシステムがあればこそ可能だった。

ところが、リモートワークも含めた多様な働き方が一般化するにつれて、さまざまな課題が浮上してきた。例えば、直属の上司に報告・相談しようにも、今週上司はずっと在宅ワークだとなれば、メールを送って、いつ来るとも限らない返事を待たなければならない。決裁印を押すために、上司が出勤するのは来週のことになるかもしれない。

これではチーム内の意志決定は遅れる一方だ。在宅ワークの普及に伴って、組織の中における指揮・命令・伝達の在り方、意志決定のシステム、さらにはコラボレーションや組織のスタイルも変えていく必要があるようだ。

IT活用で自律型・フラット型に変わる企業組織

「規律を重視したピラミッド型組織から合理性や結果を重視する実力型組織へと企業は変わってきました。部署をまたいで多くのプロジェクトを駆動しながら課題解決を目指す組織、あるいは階層構造をあえて壊し、個々の成員に大幅な権限移譲を進めるフラット型の組織も生まれています。なかには急激に変化する市場に柔軟に対応するために、強力なマネジメントがなくてもメンバーの個々が意志決定権をもつようになった企業もあります」と、企業組織の進化の過程を辿るのは、経営コンサルタントの馬場正博氏だ。

馬場氏がこれからの企業組織を考える上で参考になると紹介するのは、気鋭の経営学者フレデリック・ラルー氏が書いた『ティール組織』という本。組織の存在目的自体を状況に合わせて柔軟に変化させる有機的な組織を分析し、それを「ティール組織」と呼んだ。

「例えばアメリカのスターバックス。企業文化を軸にして社員と顧客が直接つながるような新しい開かれた組織を目指しています。日本の企業にも個々のメンバーに権限を移譲して、自律した社員が自由に事業を発想する方向性が生まれていますが、これはむしろ大企業よりスタートアップやベンチャーが得意な領域です」と、馬場氏はいう。

自律型・フラット型組織への移行は、昨今のITツールの活用がそれを促したという面もある。メールはもちろんのこと、SlackやZoom、Teams、Miroなどのコラボレーションツールを駆使すれば、部署を越えて、あるいは場所を越えて、メンバーが課題を共有することが比較的容易になる。在宅ワークを余儀なくされた企業で、なんとか仕事が回っているのは、こうしたツールのおかげでもある。

ツールの前に必要な「人を知る」努力

メンバーが自宅やサテライト・オフィスに分散していても、課題を共有し、その進捗が見えるようにするために、今やITツールは必須のものとなっている。ただ、それらを有効に機能させるためには、いくつかの前提条件がある。

馬場氏が指摘するのは、コラボレーションの前提として「何のために自分たちは仕事をしているのか」というミッションやビジョンの共有が必要だということ。たえず共通目的を確認しておかない限り、オフィスの分散化やリモートワークの常態化は、下手をすると集合意識の希薄化、最悪の場合はチームの崩壊を招きかねない。

もう一つ重要なのは、コラボレーションワークで互いを理解し、信頼するためには、指揮・命令、報告・連絡、会議での発言など以上に、ちょっとした雑談や偶然の出会いなどの非公式なコミュニケーション、あるいは顔色、表情、仕草など、ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションも欠かすことができないということだ。

オフィスにいれば一緒にランチするとか、飲み会で出会うとか、タバコ部屋で雑談を交わすとか、オフィシャルではない場所で、人と知り合い、そこで得た情報が仕事に有益に働く場合がある。

ITのスタートアップには、コラボレーションツールをフル活用し、隣の人の顔を見ないでも仕事ができる環境をつくりながらも、定期的にリゾート地に出向いて、温泉に浸かりながらハッカソンをするような企業もある。メンバーが同じ飯、同じ風呂を共有して、文字通り裸のつきあいをすることが、明日の仕事へのモチベーションにつながるのだという。最近話題の「ワーケーション」なども、非日常空間をあえて仕事の中に取り入れることで、創造性を磨こうとする試みかもしれない。

だからこそ、オンラインコミュニケーションでも意識的にそうした潤滑油的な機能をもつ場を設けるべきなのだ。

「私も同業の人とのSlackなどを使ったオンラインコミュニケーションでは、趣味の話や雑談してもよい分科会を設けたり、オンライン飲み会を開いたりと、いろいろ工夫しています。在宅ワークを前提にするなら、まずはメンバーそれぞれの人柄、仕事への取り組み姿勢、キャリアのバックグラウンドや将来の希望などを知る必要があります。それは単なる報告メールからではわからない。より多彩な接触からこそ得られるものです。ITツールの前にまずは人を知ること。それができるように、あらかじめ余裕を持たせながら、コミュニケーションをデザインする必要があります」と馬場氏は語る。

チームをリモートで動かすためには、スキルマネジメントが欠かせない

オンラインを主軸に、しかもプロジェクト型でチームワークを進める場合に、もう一つ重要なのが、メンバーのスキルマネジメントだ。

「チームに必要な人材を探すために、その分野に得意な人は誰か。社内のどこにいるのかを知らなければなりません。メンバー間のコミュニケーションを活性化する上でも、それぞれの個性・特性を知っておく必要があります。そのためにも、タレントマネジメントやスキルマネジメントといった人材データベースが不可欠になります」と、馬場氏。

近年は中小企業にも導入しやすいSaaSベースのスキルマネジメントツールが提供されている。そうしたツールをあえて使わなくても、Excelのシートにタスクと所要時間、担当実績や達成度を記すだけでも、十分な情報になる。製造業でよく使われ、ISO(国際標準化機構)規格でも定番になっている「力量表」を人材マップとして活用することもできるだろう。

「テレワークを始めた企業のマネージャーたちがいま不安に思っているのは、人事評価です。在宅ワークを正しく評価できるかどうかみなさん自信がないようです。基本的には労働時間ではなく、成果で評価すべきなのですが、在宅ワーク時代の評価方法が確立するまでにはまだ試行錯誤が続くと思います。ただ、新しい評価制度を設計するためにもスキルマップは必須のもの。多様な働き方を公平に評価するうえでも、社内人材データベース活用の重要度は高まっています」と馬場氏は語っている。

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