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講演会「亀島川から考える-水の都-東京の未来像」と亀島川の清掃
図書館つれづれ [第145回]2026年6月
はじめに
2026年1月、本の森ちゅうおう(東京都中央区立京橋図書館)で開催された講演会「亀島川から考える-水の都-東京の未来像」を聴いてきました。講師は、亀島川の魅力を広く知ってもらおうと2012年に設立した一般社団法人「亀島川にぎわい創出協議会」代表理事の皆川典久さん。「亀島川みずべまつり」や「水辺を知る連続講座」、「ボランティア清掃活動」などを継続的に実施している団体です。そして、亀島川にぎわい創出協議会主催の亀島川の清掃にも参加してきました。
今回は、東京都中央区を流れる小さな川「亀島川」をモデルケース(社会実験)に、世界に誇れる首都「水都東京」の復権を目指す大きなロマンのお話です。
講演会「亀島川から考える-水の都-東京の未来像」
1. 講師と活動の背景
講師の皆川さんは1級建築士として働く傍ら、地形に注目して街歩きをする「東京スリバチ学会」の会長としても知られています。そして、有識者による非営利団体「水都東京・未来会議」にも参画しており、「防災・水辺のまちづくり・舟運」という3つの視点から、世界に誇れる「水都東京」の復権を目指して活動しています。
非営利団体「水都東京・未来会議」 https://www.facebook.com/suito.tokyo.mirai
2. 東京の地形的背景:スリバチと水のネットワーク
東京都心部の地形は、西の武蔵野台地に始まり、荒川や隅田川などが作った三角州まで、複雑な凹凸地形が存在します。台地の谷(スリバチ)には湧水がわき、江戸時代には神田上水や玉川上水が江戸庶民の生活や農業用水としての役割を果たしました。このような複雑な凹凸地形は今も残っていて、山の手エリアには「XX坂」という地名が数多く見られます。一方、皇居の東側に位置する低地エリアは、江戸時代、物流と経済の中心でした。五街道の起点である日本橋周辺は、日本橋川を中心とした舟運の巨大なネットワークが張り巡らされていました。亀島川周辺は江戸時代初期に埋め立てられたエリアであり、当時は多くの堀が巡り、海や川は物資を運ぶ貴重なルートで「水都」として栄えていました。「水都」が姿を変えたのは、近代の災害によります。関東大震災や第二次世界大戦で大量の瓦礫が発生し、近辺の堀は瓦礫で埋め立てられていきました。特に第二次世界大戦の空襲による瓦礫の処理で水路が埋め立てられ、陸上交通(自動車)の発達が水路の埋め立てに拍車をかけました。現在の東京に多くの暗渠(あんきょ:地下に埋められた水路)が存在するのはこのためであり、地下には今も江戸から続く都市の遺構が眠っています。東京に暗渠が多くなった原因が瓦礫処理だったことも初めて知りました。
3. 亀島川の特徴
亀島川は、上流の日本橋川との分岐点である日本橋水門と河口の亀島川水門の、2つの防潮水門で完全に閉め切ることができる約1.1kmの川です。茅場町駅から日本図書館協会へ向かう霊岸橋のほかに亀島橋など5つの橋が架かっています。隅田川との合流点は海に近く、高潮の発生時に川が逆流して洪水を引き起こす可能性があるため、護岸は通常は切り立った岸で川と隔離されています。亀島川の防潮は水門によるため、高い護岸堤防ではない親水的な護岸が整備されているのが特徴です。両岸の「壁」が低いのは珍しいのだそうな。
4. 「水都」復権への提案と今後の課題
日本は地震や洪水など自然災害の多い国です。水は生きていく上で必要なもの。昭和の初めまで水路や運河は都市のインフラの一部で、水を求めて生きてきました。一方で、洪水などの災害にも泣かされながら、京都の川床のように浸水と親水を両立させて生きてきたのは先人たちの知恵でした。
現在の都心の水際は、戦後の早急な水害対策により「カミソリ堤防」と呼ばれる垂直護岸が築かれて、街が水辺に背を向けています。皆川さんは、劣化したコンクリートの回収タイミングに合わせて、親水性の高い治水対策のモデルを亀島川護岸に提案しています。提言する未来像は、単なる防災施設を「街の資産」へと転換する以下のイメージです。
- 隅田川バリア構想
防災・まちづくり・舟運を一体化させた構想です。従来の防御一辺倒なカミソリ堤防を廃し、「スーパー堤防」と新たな「隅田川バリア」を組み合わせることで、安全性を確保しながら水辺を開放することを目指しています。 - AIで描かれた具体的な景観
垂直な壁ではなく、人々が腰を下ろせる階段状の護岸を整備し、植栽によって緑豊かな空間を作ります。また、京都の鴨川のような川床やテラスを設置し、カフェや賑わいの拠点を創出します。 - 防災機能としての舟運
常に活用可能な船着き場を整備することで、平常時は観光や移動に、災害時には陸路に代わる物資・人員の代替輸送路として機能させます。
講演は、東京の地形や亀島川の歴史に始まり、海外の取り組みや広島や大阪の水辺の利活用先進事例も紹介しながら、亀島川を活かした水都東京・未来会議からの水都復権の提案でした。
5. 図書館は異なる意見が歩み寄る貴重な場
質疑応答では、近隣住民から、賑わいに対して慎重な意見も出されました。そこで生活している住民の中には、賑わいは迷惑と感じる方もいます。感じ方は住民によって異なるのをあらためて感じました。観光や災害対策と日々の生活の静穏さをどう両立させるか。折り合いの複雑さを感じたものの、講演会自体がこうした異なる意見が歩み寄る貴重な機会となり、「街のことを協議する場所」として図書館が活用されているのを感じました。
亀島川・仮装! 清掃大会
亀島川にぎわい創出協議会の清掃活動には、2025年の秋にも参加したことがあります。2026年3月の清掃は、ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんも参加し、春の桜をイメージしてピンクに仮装しての清掃が行われました。皆川さんは、ガンダムのシャアのコスチュームで盛り上げました。参加者20数名の中には、青山学院大学大学院の国際マネジメント研究科で亀島川を舞台に「シビックエンゲージメント」の研究活動をしているグループや横浜からの高校生もいました。
事務局のあるカヌー店の裏手からカヌー組と川沿組に分かれての掃除です。

東京のど真ん中でも、小さな虫が結構生息しています。蟹の死骸や葉っぱなどは自然に返し、拾うのはプラスチックの欠片やペットボトルなど。岸辺は2人1組で拾っていくのですが、そんなにゴミはないと思っていても、不思議に出てくるのです。
川添いは段差もあって遊歩道にしてもと思っていたけれど、夏にはこんなブッシュになります。(2025年秋撮影)

回収したゴミは、空き缶や、多くはプラスチックの破片です。

亀島川にぎわい創出協議会インスタグラム【公式】 https://www.instagram.com/kamejima_river?igsh=
おわりに
後日、水都東京・未来会議の松本猛さんからお話を聴くことができました。
本来は川の河原に入るのは自由です。でも、亀島川のように川にフェンスをつけて施錠している川は他にもあります。多くは、高潮対策やゲリラ降雨時の異常増水のためのコンクリート護岸の危険性から、柵を作っての施錠だそうです。「近くて遠い川」に気づかされました。
一方、江東区のゼロメートル地帯・浸水地帯には、浸水対策と親水性を兼ね備えた公園が整備され、近隣の土地の付加価値が向上した結果、人口が増え、住民に歓迎される例もあるとのこと。感じ方は住民によっても異なります。近い将来、隅田川の水都復権も、あながち夢ではないかもしれません。