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ユートミヤ(富谷市複合図書館)と加美町中新田図書館

図書館つれづれ [第150回]

2026年11月

はじめに

2026年7月、仙台文学館にWebコラム(同年8月公開)のお礼のため仙台へ行き、あわせて2026年5月に開館した宮城県富谷市のユートミヤ(富谷市複合図書館)を見学してきました。鳴子温泉郷の中平温泉で1泊。途中の宮城県加美郡加美町中新田図書館で、大崎市の高校の学校司書である友人と待ち合わせをして、情報交換という名のおしゃべりも楽しんできました。加美町中新田図書館には、いがらしみきお氏の「ぼのぼの館」が併設されており、そちらも見学してきました。今回は、図書館ができた時代もコンセプトも全く違う2つの東北の図書館を紹介します。

ユートミヤ(富谷市複合図書館)

ユートミヤがあるのは、富谷市成田の住宅街。仙台市中心部から車で30分ほどの場所にあり、駐車場の場所がわかりにくく、建物を一周してしまいました。
富谷市の企画部が全体の総括・調整を行いながら、市立図書館(教育部市民図書館)、スイーツステーション(経済産業部産業観光課)、遊戯施設の「とみのわパーク」(保健福祉部子育て支援課)で構成される複合施設です。それぞれの担当部署が連携し、市民が主体的に参画できる「市民主導(参加)型運営」を目指しています。「利用者」から「つくり手」へ、市民自身が「自分たちの居場所」として企画運営に関わることで、施設への愛着と持続可能性を高めていこうという姿勢は、こだわりの随所に見られました。

駐車場から建物に入ってすぐにあるのは自動返却口。この施設は9時から21時まで開いていますが、職員のいる時間は17時、18時、19時までと日によって違い、それ以降不在の時は警備員が常駐しているものの、セルフでの貸出・返却となります。
全体写真がこちら。壁のように見えるのはスロープの本棚です。スロープは足を踏ん張るから後期高齢者の身にはきついのですが、健康推進課が連携していれば、「雨の日でも濡れずに本を見ながら体力増進!」なんてキャッチコピーもありだねと同行者に言われ、目から鱗でした。視点がわかれば説得力が違います。

1階スイーツに関する本棚の後ろがスイーツステーション。このエリアでは持ち込みの飲食は禁止ですが、カフェ以外の館内は飲食できます。産業観光課管轄で、ジャムなども売っていました。

館内はこだわりのかたまりです。セルフ貸出機は、利用者から見たら、「借出」だから、「セルフ借出」と表示されています。本のバーコードはいつも目にするのと比べるとかなり小さい。読み込みギリギリの大きさにしたそうな。目的不明の小さな謎の扉があり、気になってくぐっていくとフリースペースがあり、皆さんがくつろいでいました。斜めに削ったようなシャープな本棚もありました。
スロープの本棚に囲まれた1階のメディアラウンジには、本を選んで並べて誰かに読んでもらう一箱図書館長の棚があります。本と人がつながる、市民が主体的に参加する新しい取り組みです。テーマや説明文も自分で自由に設定でき、来館者は付箋で感想を残せるし、図書館の蔵書であれば貸出も可能です。

市民参加型を目指しているから、メディアラウンジの棚のいくつかは、ユートミヤができるまでの経過やワークショップの内容を詳しく開示していました。
2階のこどもとしょかんは、段差やソファーに座って絵本を広げている子など、それぞれがゆったりと楽しんでいました。外のふわふわドームは雨で使用停止中でしたが、「とみのわひろば」は、土日は予約が必要ですが、平日は予約不要、見学は自由にできました。

本のテーマ展示も、例えば年代別悩みの本棚は、50代(子どもの独立、定年後のキャリアプラン…)、60代(定年退職、再就職…)、70代(介護、認知症、コミュニケーション…)などの具体的な悩みに分けられていて工夫されています。2階のトイレは全部個室で、館内に水飲みと手洗い場がいくつかあり、さりげなく電子レンジも置かれています。
富谷市民俗ギャラリーとの連携で、カードを集めて富谷の歴史を学ぶ民(みん)ギャラカードが展示されていました。
メイカースペースは、3Dプリンターやレーザーカッター、ミシンなどのものづくりが楽しめるスペース。午後の製作体験イベントでは、副館長の新出(あたらしいずる)さん自らが講師を務めていました。

この図書館のターゲットは、明らかに子育て世代。友人によると、図書館のある周辺は若い世代に人気のエリアなのだそうな。雨の日でも子連れで出かけて遊べ、本を読みながら、カフェでゆったりできる時間があります。一方で、郷土資料はスロープの本棚などに分散されていて、私が見落としたのか、郷土資料室のようなものは見当たりませんでした。新聞は、好みの席に持って行って読んでいる利用者が多いそうです。
隣の大崎市は、東西に80キロもあるにもかかわらず分館なしの1館だけですが、富谷市が、もともとの公民館図書室をすべて分館にしたのは、年齢層のバランスも意識してのことかなと思いました。大崎市は分館がない分BM(移動図書館)が走っていて、富谷市にはBMはないけど分館に配本車が本を届けています。運用は自治体によってさまざまです。
富谷市は10年かけ、1500人もの市民の声を集めながら、市民とともにユートミヤの実現に関わってきました。新さんは、2019年の富谷市図書館準備室時代から入庁し、図書館準備に携わってきたとのこと。 図書館の運営に正解はないけれど、職員不足や財政上の問題と開館時間との折り合いを、職員不在時のセルフサービスにしたのも大きな決断だったと思いました。しかも、ウィークデイの月・火曜日もセルフ開館です。職員休憩室は音訳室を利用しています。「人がいない」、「お金がない」とあきらめるのではなく、市民と分かち合いながら協同で作っていく姿を感じました。
ユートミヤ:https://u-tomiya.jp/

加美町中新田図書館

入ってすぐの左に自動販売機とフリースペースがあり、おしゃべりはこちらでしました。
最初に目を引いたのは、斯波家兼(しばいえかね)の石膏像。南北朝時代の武将で中新田城を築いた中新田町の始祖となる人物です。山形に城を築いた斯波兼頼(のちの最上氏の祖)は家兼の次男にあたり、山形市とは友好姉妹都市であると加美町のホームページに記載がありました。2011年3月11日の東日本大震災では、山形市役所から支援があったそうです。

館内の屋根の上の虎は、650年前から地域に伝わる「中新田の火伏の寅舞」にちなんだ飾りです。国の選択無形民俗文化財と宮城県無形民俗文化財に指定されています。

中新田の火伏の寅舞:
https://www.pref.miyagi.jp/documents/34991/kami-1nakaniidatoramai.pdf

図書館前に、加美町(旧中新田町)の町歌(三善晃作曲)「瞳に愛を」を作詞した、法政大学名誉教授で詩人の宗左近氏の碑が、町民有志によって建立されています。館内の宗左近記念縄文芸術室では、氏が集めた50点ほどの縄文土器・土偶や宗氏の著書を展示しています。

ちなみに、加美町には1981年に開館した小粒でもピリッと辛いと称される音楽ホール「バッハホール」もあり、地方からの文化発信に一役買っています。
従来の見慣れた棚の配置の中に、話題の豊臣兄弟、佐藤愛子氏の追悼コーナーや地震に関する棚もあり、ゆったりとしたラウンジがありました。低い棚には、近くに住む木工作家の干支をはじめ木工作品が並べられていました。

目玉の一つは、いがらしみきお ぼのぼの館。ぼのぼのの生みの親、いがらしみきお氏の出身地ということで、「ぼのぼの」スペースがありました。いがらし氏の仕事場が机の引き出しの中まで再現されていました。街中にも「ぼのぼの」が点在しているのですが、雨で散策を断念しました。

この日、ちょうど映画の上映会があり、伊藤弘副館長に100人ほど収容できる上映会場を見せていただきました。
図書館と同じ敷地内に隣接して児童館があり、親子で図書館と児童館を行ったり来たり。入口のフリースペースは、待ち合わせにも使われていました。児童館と図書館は相性が良いですね。地元の文化を伝承する姿勢を感じました。

加美町中新田図書館:
https://www.town.kami.miyagi.jp/kanko_sports_bunka/toshokan/8/index.html

2つの図書館の見学を終えて

ユートミヤに、以前中新田図書館に勤めていた方がいて、2館の違いを司書の目線で書いてくださったので紹介します。

同じ県内の公共図書館ですがそれぞれに良さがあり、もちろん課題もあります。その中で特によく感じているのは、当たり前なのですが「地域が変わればサービスも変化する」ということです。求められる資料も違いますし、来館している利用層も大きく異なります。
加美町は高齢化率が高いのでご高齢の利用者も多く、富谷市は若いご家族の来館も多いです。人口比や来館する利用者の年齢層だけでなく、歴史・文化的背景「風土」に基づいた性格といったところにも違いを感じています。
富谷市では長く市内に図書館がなかったこともあり、現在はありがたいことに図書館になじみがなかった方も多く来館してくださっています。「図書館って無料なの?」「初めてだけど誰でも入っていいの?」という質問をされることもあります。
司書は利用者に育てられる、とよく言いますが、富谷市ではここから一緒に育っていくのだな、と感じています。
加美町では常連利用者が多く、図書館が小さいころから身近にあるという方も。小さいころから図書館の利用に慣れている人が多い一方で、新規の利用層の獲得が難しかったです。どうやったら、図書館に来たことのない方に興味関心を持ってもらえるか日々考えてイベントを実施していました。その点では富谷市の図書館が複合施設であることは利点だな、と思っています。それぞれ特色や課題の違いはありますが、一人でも多くの市民のために良い資料を届けるという思いは変わらず、頑張っていきたい所存です。その点に関しては、副館長がいてくださるので、ありがたくたくさん学ばせていただきたいと思います。

図書館の運営に正解はありません。同時に全くコンセプトやサービスの違う2館を見学でき、多くの学びがありました。