データヘルスと健康経営
日本の超高齢化社会を救えるのはデータヘルスか? [第3回]
2016年12月

執筆者:特定非営利活動法人データ・ヘルスケア・イノベーション Japan
    代表理事
    岸本 佳子(きしもと よしこ)氏

突然とじっくり

前回のコラムでも少し触れましたが、ピンピンコロリとは、Wikipediaによると1980年代長野県で考案された健康長寿体操で、その後日本体育学会に「ピンピンコロリ (PPK) 運動について」と題し発表したのが始まりとされています。

それに反して、不幸にして長期の寝たきりになって亡くなることを「ネンネンコロリ(NNK)」というようです。

「死に対する意識と死の恐れ」(2004年5月第一生命経済研究所レポート)によると、「理想の最後」の質問に対して、64.6%が「心筋梗塞などである日突然死ぬ」「突然死」を選び、31.7%が「病気などで多少寝込んでもいいから、少しずつ死に向かっていく」「じっくり死」)を選んでいます。

「突然死」を理想とする人の85.9%が「家族にあまり迷惑をかけたくないから」、次いで62.3%が「苦しみたくないから」、54.3%の「寝たきりなら生きていても仕方ないから」が続きました。また、62.3%の「苦しみたくないから」以外にも、「痛みを感じたくないから」が33.2%となっており、闘病生活に対する不安が強いようです。

一方「じっくり死」を理想とする人の67.9%が「死ぬ心積もりをしたいから」、次いで32.9%が「家族にあまり迷惑をかけたくないから」となっており、「突然死」を理想とする人の85.9%と比べると大きな差がでています。

死に対する意識では、42%が「死ぬことが怖い」に対し、81.1%が「苦しんで死ぬのは怖い」と回答しています。死への恐怖心は、死そのものより、苦しみや痛みに対して大きい。という結果が表れています。

また、年齢があがるにつれ、「死ぬことが怖い」と思わない人が多くなっています。

結果、ただ長生きするだけではなく、亡くなる直前まで元気に活動する「突然死」を、多くの人が望んでいることがわかります。

しかしながら、ここにきて「理想の最後」が本当に「突然死」なのか疑問がわいてきました。「突然死」となると、親しい人にお別れできるの?「家族にあまり迷惑をかけたくないから」という理由で「突然死」を選ぶけれど、身の回りの片付けができず「突然死」すると家族に迷惑かからない?自宅ならいいけど、どこで亡くなるのかわからない!

私自身も、このコラムを掲載するまでは、「突然死」派でしたが、いろいろ調べていくうちに、寝込むのが短期間なら、「じっくり死」もいいのでは?と思うようになりました。短期間なら「じっくり」とは言いませんね。

私の希望としては、亡くなる少し前まで元気に活動し、少しだけ寝込んで親しい人にお別れをするのが、いいですね。「突(とつ)くり」ですかね。新語ですね。

健康経営・健康投資

「突然死」とは、症状が出てから24時間以内に死に至ることで、主な死因は心疾患・脳疾患であり、その大半が急性心筋梗塞・心不全・狭心症の虚血性心疾患となっています。虚血性心疾患の多くの原因は動脈硬化があげられます。

その動脈硬化の原因となるのが、「肥満」「糖代謝異常(糖尿病)」「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧」の「死の四重奏」となっており、特に「糖代謝異常(糖尿病)」「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧」は単独でも恐ろしい病気にも関わらず、あまり自覚症状もないまま進行し、知らず知らずに重複していき、死に至らしめる為「サイレントキラー」とも呼ばれています。

たとえ「突然死」とならず、幸いに一命をとりとめても、何らかの後遺症が残るようです。また、重篤になれば、介護が必要な寝たきり状態になりかねません。

そのような状況のなかで、経済産業省では高齢化による生産年齢人口の減少を危惧し、労働力確保のため、今までは医療保険者や被保険者にゆだねてきた健康管理を、企業も積極的に関与する必要性を提唱しています。

経済産業省の『企業の「健康投資」ガイドブック』によると、企業にとって従業員の健康維持・増進を行なうことは、医療費の適正化や生産性の向上につながることであり、そうした取り組みに必要な経費は単なる「コスト」ではなく、将来に向けた「投資」であると捉えることも可能である。これが「健康投資」の基本的な考え方である。

一方「健康投資」に似た概念として「健康経営」がある。健康経営とは、「経営者が従業員とコミュニケーションを密に図り、従業員の健康に配慮した企業を戦略的に創造することによって、組織の健康と健全な経営を維持していくこと」(特定非営利活動法人健康経営研究会)と記載されています。

高齢者だけでなく、働き盛りの40代・50代の男性、特に健康に自信のある人に「突然死」が多いといわれています。健康に自信があるだけに、「サイレントキラー」が忍び寄ってきても、「まさか自分にかぎって」という思いが、病気のサインを見逃してしまい、あとは・・・恐ろしいです。

そこで、企業も積極的に従業員の健康状態を把握し、健康を保持・増進することが、企業業績や企業イメージの向上、ひいては市場における競争力の強化につながっていくと考えられています。

協働(コラボヘルス)

健康経営とは、企業だけで実施するものではなく、企業・医療保険者・被保険者がそれぞれの立場から協働(コラボヘルス)していくことが必要であり、そのためには、それぞれの立場から積極的に参画し、企業の健康課題を分析→健康づくりの計画策定→従業員の意識向上が重要であると思われます。

前述の分析→計画策定→意識向上は、前々回記述のPDCAサイクルになりますね。もうお気づきのようですね。そうです。データヘルスです。

企業が健康経営していく上で、企業の特性に合わせたデータヘルス計画を策定し、その計画に沿ったヘルス事業を展開する、データヘルスが一つの方策となるのではないでしょうか。

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