生涯現役社会を目指して
日本の超高齢化社会を救えるのはデータヘルスか? [第6回]
2017年3月

執筆者:特定非営利活動法人データ・ヘルスケア・イノベーション Japan
    代表理事
    岸本 佳子(きしもと よしこ)氏

超高齢化社会は暗黒社会か

少子高齢化社会に突入し、高齢者が増えると社会保障費が増大、少子化による労働人口の減少等、様々な課題が取り沙汰され、まるで日本社会が暗黒社会に突入するかのような表現をする記事を目にすることがあります。特に日本の技術分野では、熟練の技術を持つ職人が高齢化し、後継者の問題が取り上げられます。まるで、日本の技術が死滅するかのような扱いもあります。

はたしてそうでしょうか、確かに高齢者が増えると社会保障費が増大します。また、少子化により労働人は減少するでしょう。

しかし、国民一人ひとりが若年・壮年層のころから、自分の健康は自分で守ることに気を付けることで、労働人口の減少を食い止めるとまでは言わずとも、緩やかな減少にすることはできるのではないでしょうか?

自分の健康は自分で守る。現に、高齢者の家庭では、健康に気を配り、趣味を楽しむ姿がみえてきます。また、高齢者世帯(世帯主が65歳以上である二人以上の世帯)について、平成27年の消費支出の10大費目別構成比を二人以上の世帯全体の平均と比較すると、「保健医療」が1.34倍と最も高く、健康の維持・増進のため保健医療に費やす支出割合が高いという特徴がうかがえます。
出典:「統計トピックス No.97 統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで- 」

もしも病気になっても重症化させないようにする。そのためには、個人の努力だけではなく、医療保険者や企業など官民一体となって予防することが必要です。

そして自分の健康を自分で守る社会を実現し、若年・壮年層の人々に高齢者が技術や知恵をアドバイスする、高齢者と若年・壮年層の人々がベストミックスするような社会を構築することが、暗黒社会の到来を防ぐ方策になるのではないでしょうか。

日本人は、器用に何でも日本流にする寛容さがあります。たとえば、年の初めに神社に初詣し、お彼岸やお盆にはお墓やお寺にお参りし、クリスマスやバレンタインデーには、ケーキやチョコレートを買って楽しんでいます。最近はハロウィーンも取りざたされるようになりました。まるで、宗教が無いように思われますが、太古の昔から自然界の八百万の神々を、信仰してきた日本人は違和感無く受け入れています。

寛容に受け入れる日本人だからこそ、すでに到来している高齢化社会を実感し、高齢化社会を受け入れることで、世界に誇れる高齢者と若年・壮年層の人々がベストミックスするような社会を日本は作り出せると信じています。

国民皆保険制度とデータヘルス

国は医療保険者に健診やレセプトデータを活用した、予防・健康づくりの充実を図るため、医療保険者に効果的・効率的な保健事業を、PDCAサイクルをもって展開させ、健康寿命の延伸を目的とした、データヘルスを推進しています。

このような現在日本の人口構造、将来の人口推計、超高齢化による医療費問題を解決する一案として、「国民皆保険制度」に着目し、医療保険者の持つビックデータの活用により、被保険者の特性に合わせた保健事業を実施する、データヘルスが注目を浴びるようになっています。

「国民皆保険制度」とは、すべての国民が何らかの医療保険制度に加入することで、今日のような長寿社会が形成されるようになった要因の一つに、日本の「国民皆保険制度」があると思われます。

高齢化社会の到来により、高齢者が医療費を高騰させ、「国民皆保険制度」が破たんする。といわれる方もおられますが、長寿社会を担ったからこそ「国民皆保険制度」が、次は健康長寿の延伸を担っていくと考えています。

しかしながら、今までのように病気になって医療機関にかかるのではなく、病気を予防する方に保険制度にも力を入れていく時期に来ているのではないでしょうか。

そのためにも、データヘルスを活用し、健康長寿社会を構築することが重要です。これにより、世界に類を見ない保険制度である、「国民皆保険制度」も存続していくと考えます。

スタイリッシュ・エイジング(格好良く老いる)

裏千家の淡交タイムス1月号にて、鵬雲斎大宗匠の年頭のあいさつの中に「スタイリッシュ・エイジング」について触れておられます。

“いわゆる「スタイリッシュ・エイジング(格好良く老いる)」が話題となっています。しかし、格好だけ老人臭さから逃れようと身を飾っても駄目なのです。やはり心の持ち方が大事で、相手に嫌な思いをさせないように心がけないと知的高齢者とはいえません。”「出典:淡交タイムス1月号」

そこで、スタイリッシュ・エイジングについて調べてみました。「スタイリッシュ・エイジングとは、アメリカのジョンソン大統領の報道官を務めた女性、リズ・カーペンターという人が提唱した言葉だそうです。そして「スタイリッシュ・エイジング」の三則を提唱しています。

“ 1.招待を断るな 2.どんどん人をもてなせ 3.恋をせよ ” 

素敵な提唱ですね。高齢者に提唱している言葉とは思えません。

年をとったからといって、ひきこもるのではなく、若いころのように、むしろ若いころに以上に、自由な時間を持つことができるからこそ、社会と関係を自分なりに持つことが大切だと思います。そして、自分の健康は自分で管理し、自分の体調や生活スタイルに合わせて働くことが、生涯現役社会を作るのではないでしょうか。

スタイリッシュ・エイジング(格好良く老いる)で生涯現役社会を楽しみましょう。

つたない文章にお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。

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