自分を成長させてくれる仲間の存在
 ~CheckをActionにつなげるための能力を身に付ける

自治体職員のための組織風土改革《実践》講座 [第2回]
2014年2月

執筆者:株式会社スコラ・コンサルト 行政経営デザインラボ
    プロセスデザイナー/行政経営デザイナー
    元吉 由紀子(もとよし ゆきこ)氏

職員のあり方(2回目)

前回は、一年の始まりである1月に、PDCAサイクル後半の過ごし方として、仕事を自分にとっての意義・目的を持った“志事”としてスタートするためのポイントをお伝えしました。

今回は年度末に向けてCheck(評価)したことをAction(改善)につなげていくために必要な能力を身に付けるべく、自分を成長させる方法についてお伝えします。

「改善」の実現は職員の能力向上あればこそ

地方自治体にも人事評価制度が導入され、年度末に目標管理の振り返り面談を行うところが増えてきました。多くの場合、マニフェストや総合計画に示した政策が確実に推進できたかどうか、事業目標の達成度合いを業績評価として聞き取ることに力点が置かれているようです。

もしくは、人材育成を重視している場合には、階層ごとに示された能力を仕事の中でどれぐらい発揮したのかについて行動ベースで測るコンピテンシーを採用する自治体も増えてきました。

これらは、この十余年の間に地方分権が進み、かつてはPlan(計画)したことをDo(実行)するだけですませていた仕事のやり方を、Doした結果がどうだったのかをきちんとCheck(評価)するやり方に変えていこうとするものです。

それでも、評価シートに改善課題を書いておけば、自動的にAction(改善)が生み出されるわけではありません。Check(評価)を活かし、よりよい仕事の成果につながる改善を実現するためには、それを可能とするだけの職員の能力の高さが必要です。
改善は職員の能力向上と表裏一体の関係にあると言っても過言ではないのです。

自己成長するために周りの人の力を借りる

これまでにないような高い業績を果たすには、今の自分にはない能力が求められます。そんな能力をどうやって身につけられるのかと心配になるでしょう。そんなときは、「できない」ままもがくよりも、今「できていない」自分を素直に認めて、自分以外の人の力をうまく借りることに秘訣があります。

自分の身の周りに求められている能力を持っている人や、自分の成長を助けてくれる人がいるかどうか、見まわしてみましょう。そして、協力してくれる関係を築いていくことがポイントになります。

以下に、周りの人の力を借りて自己成長するための仲間づくりのアプローチを記してみました。

自己成長につながる仲間づくりのアプローチ策

「できること」を増やしていくために、「やっている」仕事を見える化して引き継ぐ

役所では、ほとんどの人が3、4年で部署を異動しますので、どんなに年齢や階層が上の人でも、新しい職場では“新人”となってその部署に長く居る業務のベテラン職員から学ぶ立場になるものです。このとき業務遂行上すでにだれもが「やっている」仕事のスキルや習慣だからと、つい個人間の口伝やノウハウの引き継ぎだけですませがちですが、できるだけ職場全体で共有できる「専門研修」や「業務マニュアル」といった見える仕組みにして引き継いでいくことが望まれます。

これによって新任者が学ぶだけでなく、伝える側も毎年何が変わってきたのかを振り返る機会になり、明確にブラッシュアップしていくことができるからです。また、新任者の新鮮な視点から素朴な質問を受けることによって、ベテラン職員も、普段当たり前になっていて見過ごしていたことに気づいたり、これまでの発想にとらわれず一緒に新しい仕事のやり方に変えていく改善に取り組む関係ができたり、相互に「できること」を積み重ねながら成長していく好循環が築けるようになります。

「わからない」ことを知るために、気軽に「問う」ことのできるネットワークを築く

これまで経験のない新しい仕事を進めていくときには、職場にある経験を持ち寄っても問題を解決できない場合があります。そんなときは、外部の力を借りる手立てをつくることが近道になるものです。同じ事例でなくても、近いケースやより難易度の高い問題に対処している自治体や団体、民間事例があれば、訪ねてみると、発想のヒントが得られます。

それでも、形式的に依頼するだけでは、表面的な情報を得るに留まりかねません。そこで、さらに対外的に顔の利く上司や、外の交流会などによく参加してネットワークのある人から声がけをしておいてもらうと、敷居が低くなり、身近な懇親の機会を設けるなどして、より幅広い背景情報や取り組んだプロセス上の失敗談などを知ることができるようになります。

また、新しい取り組みは、やる前にイメージをつくることも大事ですが、やっていく中でいろんな疑問を生じることもあります。そこで、一回の訪問を活かし、その後も必要に応じて気軽に問い合わせができるような人的なネットワークを築いておくことがポイントです。

自分たちとは全く異なる環境下にいる人の目線から課題をとらえた意見を聞くことによって、自分もこれまでの見方や常識を捨て、新たな視点から、新たな価値観を取り入れやすくなるでしょう。

「やったことがない」不安を乗り越えて歩み出すために、
悩みや弱みを安心して相談できる「対話の場」をつくる

これまでやったことのないことにチャレンジするときには、失敗するのではないかとの不安がつきものです。最初から自信を持ってできる人はめったにいないでしょう。通常の会議では、どうしても「どうすべきか」というあるべき論で効率的な計画を立ててしまいがちで、なかなか進みにくい現実をさらけ出した話がしにくいところがあるものです。

そんなとき、自分が抱えている「悩み」や「弱み」を正直に安心して話せる場があると、不安を乗り越えるための相談ができます。ここでは、通常の会議とは異なり、立場・肩書を外して本音で話し合うことを大切にした気楽にまじめな話をするオフサイトミーティングの話し合い方で、じっくり対話できる場の運営をすることをおすすめします。

もし直接その仕事に関わりのない人がいたとしても、悩みを共有できれば、心配してどうすればできるのかの知恵を一緒に考え合えるようになります。むしろ異なる視点や経験を持ち寄ることによって、隠れていた原因が見えてきたり、思いがけない抜け道がみつかることもあるでしょう。

そして、このように親身になってくれる仲間と相談し合える場が持てると、「もし失敗したとしても、ここに来てまた相談すればいい」という安心感が生まれます。失敗を恐れずやってみる勇気が湧いてくるのです。

切磋琢磨できる仲間になる

これまでは、「前例踏襲」と「横並び」による役所体質の中に入れば、それぞれが身の安全を確保して、穏やかに暮らしていくことができました。しかし、それが地域の魅力を失い、右肩下がりの閉塞感を抱えることにつながってきたのなら、地方分権時代には、「自己革新」と「独自性」を築いていくことが求められているのだと思います。

だからと言って、初めから「できる」「わかる」「やれる」職員であるはずはありません。これまでの殻を破るために、今ある力を重ね合わせ、足りないところは外の力を借りながら、一歩踏み出す経験を増やして、共に能力を高めていくことが必要です。
だからこそ、お互いに「タテ割」で「ことなかれ主義」に納まるのではなく、「ヨコ・ナナメに連携・協力」して「チャレンジ」する、切磋琢磨できる仲間の関係づくりが大切になっています。

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