厚生労働省が「医療等分野における番号制度」の具体的な制度設計を公表!
医療保険のオンライン資格確認の仕組み
医療等分野における番号制度(第2回)
2016年4月

執筆者:公認情報セキュリティ監査人
    プライバシーマーク主任審査員
    審査員研修主任講師
    小川 敏治(おがわ としはる)氏

医療保険のオンライン資格確認の仕組み

前回、序論として、厚労省報告書が公表されるまでの経緯について、振り返りました。今回は、その報告書に基づいて、医療機関に関係が深い「医療保険のオンライン資格確認の仕組み」についてお話しします。

現状の主な課題

現状の医療保険資格確認において、医療機関にとって以下のような主な課題があります。

  1. 医療機関で受診時に正しい被保険者資格の確認と記録が行われない場合、適切な診療報酬の請求が出来ない。
  2. 被保険者証番号は、現在、保険者を異動すると被保険者証番号も変わる仕組みとなっており、資格異動を原因とした過誤請求が生じる。

これらの課題を解決するために、マイナンバー制度の新規インフラと医療保険制度の既存のインフラ(レセプトオンライン請求のネットワーク)を活用した、できるだけコストがかからない、安全で効率的なオンライン資格確認の仕組みを、2018年度から段階的に導入し、2020年までに本格運用することを目指して、準備を進めていくとしています。

尚、支払基金と国保中央会が、医療保険者からの委託を受けて、共同でオンライン資格確認のサービス機関の役割を担えるように、国保法改正や番号法改正などの法整備(2015年通常国会で成立)を行いました。

窓口での想定手順

それでは、医療保険のオンライン資格確認の導入により、医療機関の窓口業務がどのような手順になるのかを具体的に説明します。

  1. 来院した患者が窓口で個人番号カードを提示する。
  2. 窓口職員は提示された個人番号カードの写真と照合し本人確認を行う。
  3. 患者が個人番号カードをカードリーダーにかざす。
  4. 個人番号カードのICチップ内の電子証明書をカードリーダーが読み取り、レセプトオンライン請求の回線を経由して資格確認サービス機関(支払基金と国保中央会の共同運営)に照会をかける。
  5. 資格確認サービス機関から資格情報が返され窓口職員は資格を確認しレセプトシステムに取り込む。

尚、個人番号カードの裏面に表記されているマイナンバーが視認されて不正利用されないように、以下の安全管理策をとるとしています。

  • 個人番号カードは裏面のマイナンバーが見えないようにカードケースを活用する。
  • 窓口では個人番号カードをカードリーダーで読み取るのみで個人番号カードは預からない。

また、患者や窓口職員の利便性の観点から、前述3で本人の暗証番号の入力を必要としないことを検討するとしています。

図表1:医療保険のオンライン資格確認(個人番号カード活用のケース)

図表1:医療保険のオンライン資格確認(個人番号カード活用のケース)
※画像をクリックすると拡大表示します
出所:厚労省「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会 報告書」(2015年12月10日)

オンライン資格確認対応

医療機関がオンライン資格確認に対応するためには、カードリーダーの設置を含むレセプトシステムなどの改修が必要になります。医療機関のシステム改修等が円滑にできるように、初期費用の対策を別途講じることも検討しながら、2018年4月以降、準備が整った医療機関からテスト運用の機会を確保し、段階的に導入していくとしています。

尚、個人番号カードを持たない患者に対しては、保険者を異動しても変わらず被保険者を一意的に識別するための「資格確認用番号(仮称)」を被保険者証に記載するなどの方法で、オンライン資格確認や診療報酬の請求用の番号として利用する仕組み(不正利用防止策として定期的に当該番号を変える仕組み、目的外利用防止のためのガイドライン制定も含む)を検討するとしています。

また、「資格確認用番号(仮称)」を医療保険だけでなく介護保険でも利用する仕組みも検討するとしています。これにより、レセプト情報、特定健診情報及び介護給付情報のデータの突合を確実かつ効率的にできるようになります。これにより、要介護状態になる原因の疾病の把握が容易になるなど、地域の保健指導でデータのきめ細かな活用が可能になり、生活習慣病予防や重症化予防、介護予防等の飛躍的な推進が期待できるとしています。

まとめ

以上、医療保険のオンライン資格確認の仕組みについて、その概要をお話ししました。
次回は、厚労省報告書に基づいて、地域包括ケアシステムにおける情報連携に関わるIDを含めた「医療等分野の情報連携に用いる識別子(ID)の体系」についてお話ししますので、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

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