テーマ:電子カルテの導入・活用のメリットと課題への考察【セミナーから】
2013年4月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

2013年1月に開催いたしました医療経営セミナーでは、実際に電子カルテを導入している、或いは導入を検討中の中小医療機関に対してヒアリングをおこないました。本コラムでは、ヒアリング結果から、電子カルテ導入の目的や問題点などをまとめています。

なぜ電子カルテ導入に踏み切るのか?

今回は、「電子カルテの導入・活用メリットと課題への考察」について医療機関におけるヒアリング結果の詳細をお話したい。

ヒアリングは、電子カルテについて、

  1. 導入を検討中
  2. 今年度導入した
  3. 導入してから約1年が経過した

という100床から400床クラスの医療機関に対して行った。

まず、電子カルテを導入しようとした理由についてであるが、一番多かった意見は、「業務の見直しと体質改善」であった。
現状、漫然と業務を遂行している傾向があり、このままでは医療の進歩についていけず、医療の質の向上や職員の育成が遅れてしまうのではないかという危機感を持っている医療機関が多かった。
セクショナリズムや病棟文化、悪しき慣習などを軽減・打破するためのキックオフツールという考え方も医療情報システムの導入目的にはあると考える。

弊社でも、電子カルテの新規導入と部門システムの全面更新を行う予定の医療機関にコンサルティングを行っているが、まずは、現状業務の洗い出しと整理⇒業務の見直しと新運用の提言⇒システム化による効果とシステム化できない業務への対策という工程をとっている。
最初に「見直すこと」が重要であると考える。

その他のヒアリング結果として、カルテ監査の充実を図ることでの診療録の精度の向上や各種統計・分析(CI&QI)の整備と活用、共有文書のシステム化などの動機・理由があった。

電子カルテの導入時および稼働時の問題点とは?

次に、導入及び稼動時の問題点についてであるが、ここでは、「病院側の作業負担」の問題が挙がっていた。
特に、「マスタの整備」については、導入後にも問題が残り、担当者の負担やマスタ管理・更新についてご苦労をされていた。マスタについては、少しずつ標準マスタが整備されてきてはいるが、まだまだ、安定・定着した状況にはない。
この件については、システムベンダーに対し、標準マスタの低価格での提供をお願いしたいところである。

また、システム構築の観点からは、インターフェイスの問題もあった。
システムメーカーや部門システムのバージョンが変わる際には、必ずデータの移行の問題が出る。この対策のひとつとしては、システム導入時点で更新時の状況を想定した検証を行うことを推奨する。
医療情報システム導入の時点で、更新または変更時にデータ移行がどのように行われ、医療機関の作業がどのくらい発生し、その費用がどのくらいかかるかを、あらかじめベンダーに確認する作業は必須であると考える。

その他にも、支援体制の不備やベンダーと医療機関との認識の違い、他システム(健診)とのID統一の問題やペーパーレスが不十分などの意見が挙がっていた。
今回のヒアリング結果から、導入時の準備も大切ではあるが、導入後の確認・検証が最も重要であると考える。従って、導入後には、導入時に作成したシステム仕様書との相違の検証やシステム化による運用改善の検証及び問題点の改善を必ず実践されることを推奨したい。

紙面の関係上全てをお伝えすることはできないが、またの機会に少しずつでもお話をしてまいりたい。皆様のお役に立てれば、幸いである。

上へ戻る