病院経営分析と原価計算
第1回 「病院経営改革の概要」
2013年9月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

病院経営分析と原価計算は、病院経営改革の基礎資料であり改革の道しるべ(手段と方策)となります。本コラムでは、病院経営改革について考えていきます。第1回のテーマは、病院経営改革の概要と「財務分析」と「医療分析」の活用によるメリットについてです。

病院経営改革~その手段と方策~

今回からは、病院経営分析と原価計算についてお話をしたい。

最初に、病院経営改革の概要について、述べて行きたい。
一般的には、経営分析や原価計算は、病院経営改革の一旦(基礎資料)として行われ、その結果を活用して、改革の道しるべとする。
主な経営改革の手順としては、「分析(過去3年から5年分の医療効率分析や経営分析)」、「診療圏調査(半径3km以内における人口分布、医療機関分布、疾病傾向分布など)」「中長期計画(未来5年から10年にわたる計画)」、「組織改革(新設部署やシステム導入及び施設改善)」などがある。

また、方策としては、「経営管理体制の強化(経営企画室の新設)」、「経営に係わるデータの収集と共有IT化の推進)」、「人事管理機能の強化(優秀な人材の確保と育成)」、「コスト管理の徹底と利益管理体制の強化(物流・経理・部門システムの連携)」などが必要であろう。
これらの手順と方策を行うことで、健全な経営体制を構築すると共に、次代のあり方を検討していく必要がある。「医療の質の向上」と「経営安定」のためには、常に改善と改革を意識して、行動を起こしていく必要があると考える。

「財務分析」と「医療分析」~現状と問題点を明らかに~

その基礎資料となる経営分析であるが、大きく区分すると「財務分析」と「医療分析」に分けられる。全ての医療機関でこの2つは行われていると思うが、その活用はいかがな状況であろうか。
実際のところ、詳細を分析して活用し、本当の経営改善につなげている医療機関は、少ないように感じている(改善事例を問うと明確に答えられない場面に遭遇するためにそう感じているのかもしれないが。。。。)。

改めて、各分析について述べると、財務分析においては、財務諸表の数値を基礎にして、経営状態を図るための分析であり、医療収益に対する比率として、給与比率、材料比率、経費率などの数値を算出し、統計データなどと比較することにより、自院の状態を知るものである。

また、医療分析においては、外来、入院のそれぞれに効率と収率を分析することで、医療に関する利益収率と業務効率を検証する。その結果、経営的観点からの問題点をクローズアップすることが出来る。

主な項目としては、効率として、外来・入院の各分野における

  1. 患者1人あたりの1日収益
  2. 医師1人あたりの1日診療収入
  3. 各職種職員1人あたりの1日患者数

などがあり、収率としては、

  1. 平均外来患者数
  2. 新患・再来比
  3. 平均在院日数

などがある。

基本的な考え方としては、「効率」は、医業収益確保のための人の効果に着目しており、「収率」については、利益確保のための理論上得ることが可能な量に対する実際に得られた量の比率に着目している。
ちなみに、厚生労働省は、経営指標として「収益性(23項目)」、「安全性(7項目)」、「機能性(13項目)」の3分野47項目を提示している(2011年度分からは、救急車受入率、ケアカンファレンス実施率、紹介率、逆紹介率が追加されている)。報告書の結果を見る限りでは、黒字病院の比率が少しずつではあるが上昇傾向にある様子である。

経営分析に関する項目の詳細及び原価計算については、次月以降、順次お話をしてまいりたい。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。

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