2025年へ向けて、今後の病院の在り方を考える【第1回】
~診療報酬改定の概要と影響に関する考察~

2016年4月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

診療報酬改定の概要

今回からは、2016年度の診療報酬改定の概要から今後の医療機関における在り方を考えていきたい。

既にご存知の通り、今回の改定は、診療報酬本体が0.49%のプラス(医科:+0.56、歯科:+0.61、調剤:+0.17)、薬価改定が1.22%のマイナス、材料価格改定で0.11%のマイナスとなった。全体的な印象としては、個別の点数設定の内容からも2025年モデルに何とかつなげていこうとする努力と現状の問題を少しでも早く解決していくための試行錯誤が実施されている印象であった。基本的な考え方としては、「病床機能の分化と連携の推進」及び「かかりつけ医機能の充実」がメインとしてある。各視点としては、大きく4つの分野に分かれており、以下の通りである。

  1. 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
  2. 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点
  3. 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
  4. 効果的・適正化を通じて精度の持続可能性を高める視点

各視点における詳細については、次回以降、順次お話をしていくが、キーワードを並べると以下のようになる。

  
  • 病床機能の分化・連携
  • チーム医療の評価
  • 在宅医療・訪問看護の確保
  • かかりつけ医(医師・歯科医・薬剤師)の評価
  • がん医療の評価
  • 医療技術の評価
  • 後発医薬品の価格算定ルールの見直し
  • 門前薬局の評価
  • 費用対効果の評価

基本的な考え方として病床機能の新たな構築はもちろん根底にあるのだが、医療の過程を見直して、医療の質の向上と在宅復帰を絡めた医療費の抑制への取り組みが見えてくる。もっとも高齢化による医療費の伸びが、年間1兆円を超える現状では、年間4,000億円程度の抑制では、まだまだ診療報酬の引き下げは避けられない状況であり、医療機関においては、厳しい経営を強いられることには変わりはない。

今後の病院はどう生き残っていくか?

では、今後の病院はどう生き残っていくべきであろうか。現在、約8,400の医療機関があるが、1990年時点で10,000超あった施設が毎年60施設程度閉院しており、今後もその傾向は続くと思われる。赤字の医療機関も多く存在し経営的に窮地にいる医療機関も多い。そんな状況の中、2年に1度の医療改定が実施され、間違いなく2025年へ向けて、国が考える良好な医療提供体制のあるべき姿に近づけられていくのである。

2年前に登場した地域包括ケア病棟については、開設した医療機関は、それなりの成果を上げていると聞く。しかし、まったくそれに興味を示さず、自らの方向性を定め、構築に向けて進んでいる医療機関もある。大切なのは、行政の思惑を考慮しながらも自らの進むべき道をしっかりと耕して育成していくことではないだろうか。

具体的にどう取り組んでいくかについては、次回以降、各視点に関する考察の中で述べるが、一つ、大きな枠の考え方として言えることは、内部の詳細分析を速やかに推進することである。抽象的な表現かもしれないが、自院の詳細機能(特徴と特性)、ポテンシャル(ハード&ソフト)や人材の確保と教育、財務の在り方や保有データの精度といった項目について早急に整理することが重要である。多くの医療機関を見聞する中で、漠然とした危機意識はあるが、具体的に何を整備し準備していくかについての詳細な検討と体制の構築が進んでいない医療機関が多い。今後も間違いなく国の思惑に向けての改革が随時求められる。方向性と戦略を明確化し、速やかに実践した医療機関しか生き残れない時代に突入していると考える。

次回以降は、視点ごとに内容についての考察と今後の医療機関のあるべき姿について、述べていきたい。少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。

2025年に向けた医療機能再編のイメージと今改定における基本的考え方

2025年に向けた医療機能再編のイメージと今改定における基本的考え方
2015年病院機能に関する考察セミナーから抜粋
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