次期病院機能評価(機能種別版Ver.2.0)についての情報提供と考察(第1回)
2017年9月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

次期病院機能評価(機能種別版Ver.2.0)について

今回は、次期病院機能評価(機能種別版)のVer.2.0についての情報提供と考察と題して、お話をしたい。

既に、ご存知の方も多数おられるとは思うが、来年4月より病院機能評価機能種別版(3rdG:Ver.2.0)が実施される。今年7月の国際モダンホスピタルショウにおいてもVer.2.0についての説明があった。その内容を含めて、変更点や注意点等について記述したい。

まず、最初の変更点として、「一般病院3」の新設がある。特定機能病院及び大学病院本院を対象とした区分であるが、その中に「ガバナンス」というキーワードが出てきている。解説によれば、「理念達成に向け価値・行動規範を共有した組織運営の仕組み」とされている。その他にも、特定機能病院などの役割・機能を反映した評価項目の新設として、「高度の医療」、「高度の医療技術の開発・評価」、「高度の医療に関する研修」がある。

また、Ver.2.0の全体的特徴で、強化の主なポイントとしては、「理念・基本方針」、「質の改善の取り組み実績」、「ガバナンス」が挙げられており、その中でも「質の改善活動の取り組み実績」においては、継続的改善活動事例が求められるようになった。評価方法についても強化されており、組織横断的な質の改善活動を確認するための評価方法が導入されることで、訪問病棟や確認症例が機構(サーベイヤー)によって指定される方法となるようである。要するに機構主導で、病院の機能に合った状況から審査が行われるように改良されている。

また、もう一つの大きな特徴としては、審査結果でC評価があった病院については、3年目の改善審査が導入されることになった。条件付き認定等で認定された医療機関及びC項目があった認定病院においては、それらの項目の改善状況を確認するために、3年目に審査が入ることとなる。

一般病院3における主な強化内容

今回は、これらの項目の中から、まず、1回目として、一般病院3における主な強化内容を紹介したい。この区分に新設された項目は、何れ「一般病院1」及び「一般病院2」に何らかの形で組み込まれる可能性がある項目であり、機構側の方針が表れている項目であると考える。

以下、箇条書きにて項目を列挙する。

1. ガバナンスの仕組みと実践

  • 病院幹部の選任過程及び監督、評価の仕組み
  • 理念・基本方針と中長期計画等の整合
  • 理念・基本方針の周知徹底、院外への周知
  • 医療安全上の課題解決に向けた管理者との連携
  • 医療事故防止に向けた継続的な改善活動 等

2. 高度の医療の提供

  • 倫理的課題についての継続的な取り組み
  • 地域の医療関連施設等との連携
  • 新規治療や新たな技術導入への対応及び実施後のフォロー
  • 救急医療の教育及び研修の実施
  • 病院機能存続計画に基づく災害訓練 等

3. 高度の医療技術の開発及び評価

  • 人を対象とする医学系研究の実施における院内規定及び規定の遵守状況

4. 高度の医療に関する研修及び人材育成

  • 全ての病院職員を対象とした計画に基づいた教育・研修の実施と評価
  • 職員個別の能力評価と能力開発の仕組み
  • 専門職種の基本的な能力を身につけるための初期研修の実施
  • 実習生を受け入れるための体制

5. 医療安全確保の取り組み

  • 医療安全管理部門と連携した継続的な取り組み
  • 情報伝達エラー防止対策の継続的な取り組み
  • 医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理者を中心とした継続的な取り組み
  • 急変の兆候を捉えて対応する仕組み
  • 医療安全上の課題解決に向けた管理者との連携
  • 事故防止に向けた継続的な改善活動 等

6. 医療関連感染制御の取り組み

  • 管理者と連携した実効的な活動
  • 院内の感染防止に向けた継続的な改善活動
  • 感染管理に関する地域との連携
  • 標準予防策に関する遵守状況
  • 抗菌薬の使用・中止の検討 等

主な項目を列挙したが、総括して言えることは、やはり、「継続的改善活動の実施状況の確認」、「職員能力開発と研修の実施状況」、そして、「医療安全と感染対策の強化」ということになるであろう。特に、継続的な取り組みという表現が多いということは、「単発的改善では、認められない」、日頃から医療の進歩とともに最適な医療の提供を行う体制が重要であるということを言われていると考える。

より強化された印象を受ける「一般病院3」の項目であるが、ある意味、特定機能病院及び大学病院本院にとっては、当然の評価内容であるとも言える。

次回は、その他の機能種別で変更された点についての情報提供と考察について記述したい。少しでもお役に立てば、幸いである。

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