次期病院機能評価(機能種別版Ver.2.0)についての情報提供と考察(第3回)
2017年11月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

第4領域(理念達成に向けた組織運営)に関する変更点

今回も、次期病院機能評価(機能種別版)のVer.2.0についての情報提供と考察と題して、お話をしたい。

前回は、第1領域(患者中心の医療の推進)と第2領域(良質な医療の実践1)における全ての機能種別に共通した変更点について記述したが、今回は、第4領域(理念達成に向けた組織運営)に関する変更点について記述したい。

第4領域というと「事務分野」の領域と考えられがちではあるが、この領域での主たる評価の視点は、院内全体の組織体制の確立及び職員の教育と能力開発であると考える。以下、第4領域における主な変更項目を記述する。

4.1.1 理念・基本方針を明確にしている。

【改訂点】
要素 職員への理念・基本方針の周知徹底と病院外への周知(修正)

4.1.3 効率的・計画的な組織運営を行っている。

【改訂点】
要素 理念・基本方針と中長期計画との整合性(追加)
リスクに対応する病院の機能存続計画(修正)
※今後の情勢を把握し、組織の基本方針を確立した上で、より現実的な計画を確実に実行している実態が評価されることとなる。

4.1.5 文書を一元的に管理する仕組みがある。

【改訂点】
中項目 文書管理に関する方針を明確にし、組織として管理する仕組みがある。(修正)
視点 病院として管理すべき文書が明確にされ、文書管理規程に基づき組織として管理する仕組みがあることを評価する。(修正)
要素 管理責任部署または担当者(修正)
発信、受付、保管、保存、廃棄の仕組み(追加)
院内規程、マニュアル等の承認の仕組み(追加)
※多くの医療機関で、未整備な部分が多い項目のひとつである。特に、管理部署及び担当者の選定や文書の一元管理(作成者を含む)の仕組みづくりについては、早急な対応が必要である。

4.3.1 職員への教育・研修を適切に行っている。

【改訂点】
視点 職員への教育・研修が計画に基づいて継続的に行われていること、また、院外への教育・研修機会への参加が支援されていることを評価する。(修正)
要素 全職員を対象とした計画に基づいた継続的な教育・研修の実施と評価(修正)
必要性の高い課題の教育・研修の実施(修正)
教育・研修に必要な情報提供の仕組みと活用(追加)
必要な図書の整備(削除)

4.3.2 職員の能力評価・能力開発を適切に行っている。

【改訂点】
視点 職員個別の能力評価や自己啓発への支援など、優れた人材を育成し、活用する仕組みを評価する。(修正)
要素 職員の能力評価、能力開発の方針と仕組み(追加)
職員個別の能力の客観的評価(修正)
能力に応じた役割や業務範囲の設定(修正)
職員個別の能力開発の実施(修正)
※形だけの人事評価ではなく、職員に対し、人材の育成と評価及び開発について、個別の面接を行うなど一人一人を評価・育成する人事評価の体制の確立と実施が重要である。

4.3.3 学生実習等を適切に行っている。

【改訂点】
視点 実習生の受け入れ体制(追加)

4.3.3 医師・歯科医師の臨床研修を適切に行っている。

【改訂点】一般病院2、リハビリテーション病院のみ
中項目 専門職種に応じた初期研修を行っている。
視点 専門職種に応じた基本的な能力を身に付けるために初期研修が適切に行われていることを評価する。
要素 初期研修の方針と計画
計画に則った研修の実施
研修者の評価
指導者の養成と評価
研修内容の評価と見直し
研修プログラムに沿った実施(削除)
研修医の評価(削除)
研修プログラムや指導医・指導者の評価(削除)

今回は、第4領域(理念達成に向けた組織運営)について、主な項目と一部の項目に関する考察を記述した。これ以外にも、「機能種別固有の変更点」や「評価方法の強化」に関する事項もあるが、これらについては、次回以降、改めて記述したい。

近年、認定医療機関は減少傾向にある。ピーク時には、3,000近い認定医療機関があったが、現在は、2,100余となっている。準備に係わる煩わしさと費用の負担に問題があるのであろうが、私見としては、「審査を受けることにより、院内業務を見直し・改善を行うと同時に組織の確立と医療の質の向上を成し遂げるツール」としては、便利なツールであると考える。

現在、認定を受けている医療機関以外にも、第三者による院内評価と業務改善による質の向上に役立ててもらいたい。今後、何らかの診療報酬というプラスアルファが入るとまた、増加に転じてくるのであろう(医療安全についての項目で報酬が付加されると良いのではと考える)。今後益々厳しくなる医療機関の経営を改善する役目を果たすとともに、医療の質の向上のために、是非とも加算を含めた検討を機構側にはお願いしたい。

次回は、まとめとして、機能種別版Ver.2.0における「機能種別固有の変更点」や「評価方法の強化」について記述したい。少しでもお役に立てば、幸いである。

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