医学管理料の算定及び内容記載の課題と対策
電子カルテの導入における医学管理料の効率的算定について(第1回)
2018年11月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

電子カルテの導入における医学管理料の効率的算定について

今回からは、電子カルテの導入における医学管理料の効率的算定について、お話ししたい。近年、医学管理料の算定及び内容の記載漏れは、どの医療機関にとっても悩ましい問題である。また、電子カルテの普及に伴い問題となる点も変化しており、システムと運用をいかにフィットできるかが重要なカギとなっている。

システム化による問題点の変化

(1)診察時

◎ システム化して解決したこと

  • 算定候補となる医学管理料がわかるようになった。
  • オーダ時に、内容の記載や文書の発行等を行えるようになった。
  • 適応病名の登録漏れがわかるようになった。

● システム化に伴う新たな問題点

  • 患者カルテ選択時に算定候補とある医学管理料が表示されるため、算定要件を満たさないうちにオーダしてしまう。
  • 算定要件は満たしているが、オーダをしない。
  • オーダはしているが、病名登録をしていない。
  • オーダはしているが、指導、治療管理に関する内容の記載がない。
  • 電子カルテは、定型文やテンプレート機能が利用できるため、記載内容が画一的になった。
  • 算定要件になる文書の提供を行っていない。

(2)算定時

◎ システム化して解決したこと

  • 大量にあるレセプト点検を、ある程度正確かつ機械的にチェックできるようになった(レセプトチェッカーの活用等)。

● システム化に伴う新たな問題点

  • 会計システム及びレセプトチェックシステム、帳票(チェックリスト)等で、ある程度の点検が可能なため、システムに頼りがちとなり、人的チェックが疎かとなっている。
  • システム及びリスト出力時の登録条件が誤っている。または、陳腐化しチェック漏れにつながっている(ルール改定への未対応、委託会社に依存しすぎ等)。

医事のシステム化による診療会計及び仮レセプト時のチェックに加え、診療録のシステム化(電子カルテの指導料オーダ機能、あるいは医学管理算定支援システムの導入)により、例えば、診療時に患者カルテを確定するタイミングなどで、指導料の算定候補を表示し、指導料のオーダ漏れを軽減することが可能となった。また、指導料オーダ画面は、算定要件となる指導計画や検査結果等の記載要件を容易にオーダと併せて記載できるほか、文書機能と連携し、必要な計画書等の文書を同時に出力できるなど、医学管理料算定に係る医師の診療録記載業務の補助ができるようになった。

さらに、今までの医事システムや処方、検査等のオーダリングシステムに加え、電子カルテ化によって、記載に係る診療報酬の算定や病名のチェックも可能となったことから、医学管理料については、発生源のタイミングで、ある程度のチェックが可能となったのである。

ただ、全く問題がなくなったというわけではない。電子カルテシステムに頼るあまり、算定要件をきちんと理解しないままシステムの言う通りにオーダを実施し、只々ガイダンスに従い画一的な指導内容の記載を行うなど、新たな問題が発生しているのも実情である。

現状分析

自院における医学管理用に関する課題整理のひとつとして、まずは、現状の分析を行うことが必要である。

  • 自院で算定可能な医学管理料は、すべて算定する運用となっているか。
  • 算定している医学管理料について、査定、返戻の対象となっていないか。
  • また、診療録の記載等を含め、算定要件を満たす運用を行っているか。 等

次に、各々の課題に対し、対策を行うべき部分がどこにあるか、優先順位を定め対応方針を検討する。

  • 算定漏れがある場合は、診察時・算定時どちらに問題があるのか。診察時であれば、システム入力のオペレーションに誤りがないか。チェックシート等を用いた紙運用等でカバーできないか。などを検討する。
  • 算定はできているが、査定、返戻、診療録の記載等に課題がある場合は、病名登録や記載の不備などどこに問題があるのかを明確にし、運用の見直し、委員会等での周知、マスタ・チェック条件の見直し等を行う。
  • また、算定漏れ、査定・返戻に係る金額が多く、システムの導入や改修等の費用に対し採算が見込めることを前提に、システム化の検討も必要となる場合も考えられる。

医学管理料の算定及び内容記載の課題と対策

では、対策については、どう考えていくことが必要なのであろうか。課題と対策について記載したい。

課題と対策

(1)診察(=算定漏れ)

● 課題

  • 指導料オーダをしていない。
  • 病名登録をしていない。

◎ 対策

→医師によるオーダ漏れをなくす。

〈システム対策〉

  • 対象と思われる患者に対し、オーダの候補、病名登録漏れ防止のガイダンスをする。

〈運用対策〉

  • 文書や委員会にて継続的な周知を行う。

(2)会計(=返戻、査定)

● 課題

  • 算定条件(病名、検査、薬剤、算定期間など)を誤っている。

◎ 対策

→算定の誤りをなくす。

〈システム対策〉

  • 点数マスタ等による会計時の条件チェック。
  • レセプトチェッカー等によるレセプト点検時の条件チェック。

(3)指導(=返還)

● 課題

  • 指導、治療管理の内容をカルテに記載していない。
  • 文書による提供を行っていない。

◎ 対策

→カルテの記載漏れをなくす。

〈システム対策〉

  • 記載画面を伴うオーダ機能の導入。

〈運用対策〉

  • 医事課、診療録管理室等による量的点検・質的点検の実施。

各々の課題に対する具体的な対策案については、上記のとおり、診察時(発生源)、会計あるいはレセプト点検時、記載内容において、各々の課題に対し適切な対策をもって実施することが重要である。

次回も電子カルテの導入における医学管理料の効率的算定(立ち入り検査及びカルテの質的監査)について記述したい。

少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。

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