文書管理の在り方とその重要性
病院内業務のペーパーレス化による改善と効率化に関する考察(第1回)
2019年2月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

文書管理の在り方とその重要性

今回からは、ペーパーレス化による院内業務の改善と効率化についてお話ししたい。

近年の電子化推進の影響により、「ペーパーレス&フィルムレス」は標準となりつつある。そのような中、いまだにペーパーレス化が進まず、多くの紙が残り整理がついていない医療機関が多いのも事実である。今後のあるべき姿としては、業務の効率化や経費削減の推進のため、より強力にペーパーレス化を進めていく必要がある。

今回は、以下の項目について、記述したい。

  • 院内文書の管理に関する現状
  • 院内文書の整理の仕方
  • システム導入時における文書振り分けについて
  • 院内文書のシステム化に関するデータ例

院内文書の管理に関する現状

院内文書における管理に関しては、以下のような実態がある。

  • 各部署独自の文書が作成されており、管理できていない。
  • 院内帳票が整理されておらず、全体像を把握している部署がない。
  • 印刷物及びコピーの使用量に関する金額が部署ごとに把握されていない。
  • 新旧の印刷物が混在しており、どの印刷物が正としているかが不明である。
  • 診療録及び診療記録としての定義が一般職員に浸透していないことが多い。
  • 重複した伝票が複数種類存在し、各部署で独自に使用されている。
  • システムからの出力、印刷物(単票・複写等)、コピーでの使用等、各帳票における使用用途が明確でない。

これらをきちんと整理し、管理していくことが重要である。

院内文書の整理の仕方

まずは、院内文書を整理したい。その際に、以下の分類別に整理することを推奨する。

  1. 項番:全体数を把握するために、1帳票につき1項番を付す
  2. 管理番号:「部署コード+係コード+項番」で構成された管理番号を作成
  3. 部係:例)「医事課-医事係」「医事課-外来係」等
  4. 作成担当者名
  5. 文書名:文書の内容が分かるように記載する。例)「再審査請求書」等
  6. 文書分類1:印刷物なのかシステムからの出力物なのか等を区別して記載
  7. 文書分類2:単票か複写かの区別を記載
  8. 用紙サイズ:A4、B5等のサイズを記載。後にサイズの統一を図るときに便利
  9. 使用用途:何のために使用しているかを記載。文書を破棄するときに便利

上記の内容別に整理することで、一目で文書及び帳票関連の種別や用途が分かるため、不要な文書や帳票の破棄や統一化を図るときに便利である。その他にも、システム導入の際には、ベンダーに対して作成した帳票シートを提出し、パッケージでの対応可否やカスタマイズの必要性等の区別を明確にすることで、導入効率の向上が期待できる。

※ 収集した文書及び帳票を集約して、部門部署別にファイリングを行い、インデックスを付ける。システムから出力される文書も同様に行うことがポイントの一つとなる。

システム導入時における文書振り分けについて

文書の振り分けについては、以下の項目で振り分けることを推奨する。

  • 紙運用(説明書等) ⇒ 電子カルテへの保存が必要ない
  • スキャナ取り込み  ⇒ 電子カルテへの保存が必要、紙記録を保存
  • レポート作成    ⇒ 部門システムで記載する文書
  • テンプレート活用  ⇒ 部門システムで記載しない文書
  • エクセルチャート  ⇒ 経過記録など複数入力が発生する記録
  • 文書作成(同意書等)⇒ オーダ記録に残す必要がある
  • その他(診断書等) ⇒ オーダ記録に残す必要がない

基本的な考え方としては、「システムで使用するか」「紙で使用するか」「破棄するか」での振り分けを行うことを前提に考えていくことが重要である。また、ペーパーレス化にあたってはスキャン作業が必須であり、そのためにも、一つ一つの文書をコード化する中で、用途に応じた分類分けと振り分けを最初にきちんと行うことが重要である。

院内文書のシステム化に関するデータ例

院内文書のシステム化において、システム導入前後の帳票数の変化事例をあげておく。

※ システム化率 39.3%

※ 病床規模及び診療機能の違いもあるが、システム化率が低い主な要因としては、整形外科における評価表やクリニカルパス等を事前にシステム化しなかったことが挙げられる。システム導入後の作業が続くことになり、通常業務に負荷がかかっている。

※ システム化率 77.7%

※ カスタマイズ可能な帳票作成システムを導入して、可能な限りデジタル化を行った結果である。

これら2つの病院の比較において考えられることは、院内の方針と事前準備の大切さが表れている。併せて、文書作成システムの導入によるデジタル化の推進が図れていることが分かる。更なる文書管理を行うためには、文書管理システムの導入が必要なのである。

次回は、ペーパーレス化に向けた病院の事例を中心に記述したい。

少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。

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