DPCの状況照会ツールによる業務効率化
院内ICTを使った収益向上と業務の効率化について(第1回)
2020年9月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

近年、医療機関におけるICT化は目覚ましいものがあり、電子カルテの普及をはじめ、部門システムの充実といったところに注目が集まっている。

このような中、今回からは院内ICTを活用したツールの事例について記述したい。

1. DPC状況照会ツール

DPCは、入院患者の病名や診療内容に応じて定められた1日当たりの定額の点数で入院診療費が計算され、入院期間によって点数が定められる。このことから、病院経営上、患者ごとの入院期間の把握は、特に注意を払う必要がある。

そこで、主治医や病棟看護師並びに関係者が入院患者の状況を把握し、DPCの早期決定及び円滑な退院促進による効率的病棟管理を行うことが、とても重要なのである。

(1)照会画面と出力帳票等

照会画面確認

これは、導入されているDPC管理システムの情報を参照し、入院患者のDPC決定状況や、現在、どのDPC入院期間にあるかなどを一目で把握できる一覧画面である。

独自開発したMSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)支援システムと連携させることにより、現在のMSW介入状況や退院調整状況を表示することもできる。

【図1:照会画面確認】

【メリット】
  • 医師や看護師、MSW、診療情報管理士などの入院に関わる職員が、DPCに関する進捗状況をリアルタイムで把握できる。
  • 現在の入院期間が容易に把握できるとともに、期間ごとのDPC点数表示により、入院期間超えによる点数減も視覚的に把握できる。
  • 退院調整状況の表示により、各職種の職員が協力して早期に退院調整が行える。
  • 病名入力や診断群分類の早期決定がなされることにより、DPC決定時点でのDPCII超えの抑制につながる。

各種帳票(一覧出力)

入院患者の区分(60日超、30日超、DPCIII超、DPCII超)ごとに帳票が一覧として出力されるので、患者の入院状況が容易に把握できる。

さらに、医師別や病棟別などで出力することにより、各セクション(担当)等における、より細やかな現状把握につながるとともに、退院の促進につなげていくことができる。

【図2:各種帳票(一覧出力)】

各種帳票(EXCEL出力)

下図のEXCELデータは、毎週、診療部長から主治医全員に対してメール配信し、退院促進を行っているものである。さらに、必要度を満たしていない患者については、診療部長から主治医に対して、改めて注意がなされる。

【図3:各種帳票(EXCEL出力)】

病名督促メール

主治医がDPC病名をつけないまま診療情報管理士がコード決定した時には、既にDPCII超えしているケースもあり、先ずはDPC病名の早期の入力が重要となる。

これらを抑制するためにも、DPC病名を4日以上登録していない主治医に対して、電子カルテ上のメールを一括送信し、DPC病名の早期入力を促している。

【図4:病名督促メール】

(2)運用と経営効果

運用(導入前と導入後)

ツール導入前の運用と、導入後の運用は次の通りである。

【図5:運用(導入前と導入後)】

経営効果

DPC状況の照会ツールを作成・活用したことにより、ツール導入前に全体の約37%あった「DPCII超」が、導入後の割合は約32%と5%ほど改善できている。

これは、多少なりとも病院経営に寄与する結果となっており、今後、この運用が定着すれば、さらなる効果が期待できると考える。

今回は、DPCの状況照会ツールについて記述した。

次回は、「手術器械準備支援システム」と「病床状況ボード」について記述したい。

少しでもお役にたてれば幸いである。

上へ戻る