手術器械準備支援と病床状況ボードによる業務効率化
院内ICTを使った収益向上と業務の効率化について(第2回)
2020年10月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

今回も前回に引き続き、院内におけるICTツールについて記述したい。

2. 手術器械準備支援システム

(1)システム概要

現在、多くの医療機関においては、術式ごとに器械や物品などを正しく準備するためのチェックシートを用意しており、それに沿って器機や付帯資材等の準備を行っていることと思われるが、この準備作業は看護師の手間がかかり、準備時間の負担にもつながっている。

このシステムは、手術件数を増やすことを目的とした、手術準備作業を効率化するためのツールであり、手術オーダ情報と予定術式(準備器機マスタ)により、手術時の各種機材・器機・物品準備に関わる手術場看護師の業務省力化を目指している。

主な運用手順は、以下の通りである。

メニュー画面

画面構成は「器械準備シート作成」「器械準備マスタ作成」「器械一括更新」の3エリアから成り立っている。

【図1:照会画面確認】

器械準備シート作成(準備器械設定)

手術オーダから予定患者一覧が作成され、その後、予定術式から準備器械を設定し、準備シートを作成する。

準備器械はフリー入力で行うが、項目マスタからドラッグ&ドロップで入力可能となっている。

【図1:照会画面確認】

器械準備マスタと器械一括更新

器械準備マスタとは、術式であらかじめ準備器械が設定できるものをマスタ化したもので、器械の変更時には器械一括更新機能を活用することにより、全術式内の対象器械を一括して更新することが可能となっている。

【図1:照会画面確認】

【メリットとデメリット】

メリットは、手術場看護師の器械準備シート作成の省力化や準備漏れの削減が可能となることである。逆に、デメリットは、各術式に対応するマスタ整備に時間を取られることがあることである。

(2)運用と効果

運用(導入前と導入後)

システム導入前の運用と、導入後の運用は次の通りである。

【図5:運用(導入前と導入後)】

効果

前日及び当日の準備時間の削減に成功。時間にして概ね30%の削減が実現できた。

3. 病床状況ボード

(1)ツールの概要

従来、電子カルテ標準機能の空床状況は、入退出数や空き数の数字表示のみであった。さらに、電子カルテの退院管理は「退院決定」がスタートであり、実際に病棟師長等が管理している「退院予定」は入力できないため、退院直前までシビアな空床管理ができなかった。

このツールは、これらの問題を解決し、病棟における入退院・転入出情報及び病棟師長が想定する退院予定情報を視覚的に表示するなど、適正なベットコントロールの実現を目的としたツールである。

メイン画面

病棟ごとの一週間の患者の移動状況一覧及び移動後の病棟マップを表示。

病棟別、日別(直近一週間)の空床状況を視覚的・直感的に確認することができるとともに、今後一週間の患者の動きについても、容易に把握できるようになっている。

【図1:照会画面確認】

退院予定管理

退院予定者を含めた退出数や残数計算を行い、より無駄の少ない病床管理を目指している。

【図1:照会画面確認】

【メリット】
  • 病棟の空き状況を視覚的に把握できる
  • 空き部屋を病室マップ上で即座に確認できる
  • 電子カルテで管理できない「退院予定」を反映できる

(2)運用と効果

運用(導入前と導入後)

システム導入前の運用と、導入後の運用は次の通りである。

【図5:運用(導入前と導入後)】

効果

数字のみの空床管理を視覚的に見ることができるようになり、より臨場感のある病床管理ができるようになった。

併せて、シビアな退院予定を含めた空床状況の管理により、病床利用率を上げることに貢献している。

4. まとめ

現在、院内にある各種システムには、あらゆるデータが蓄積されているが、そのシステム内での利用など、データの有効活用が図られていない実情が多く見られる。

しかしながら、これらのデータを活用し、アクセスやファイルメーカーを駆使することで、新たなツールを作成することもできるのである。

業務の効率化を図ることはもちろん、収益の向上や職員の意識改革につなげていくためにも、一度、院内のシステムデータ活用について、見直しを行われることを推奨したい。

前回、今回と院内ICTを活用した収益向上と業務の効率化について記述した。

少しでもお役にたてれば幸いである。

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